お題:純粋な遭難 制限時間:15分 読者:65 人 文字数:1270字

登山 ※未完
「山とか登るといいっすよ」
どうでも良さそうにそう言ったクソ生意気な後輩の言葉を、あの時どうして流せなかったんだろうか。
後悔してももう遅い。とにかく俺は今、山道の中に迷い込んでいる。
あ、遭難ってやつだこれ、と気づいた時にはもう、手遅れだったのだ。

色々と悩んでいた。人生について。将来について。ありきたりな悩みかもしれないけれど、就活がなかなかうまくいかず、俺はその日、高校時代の後輩を呼び出して飲んでいた。
「なんかさー、みんなどんどん内定取るわけ。お前も来年になったらこの辛さがわかるよ」
「んなこと言ったってやるっきゃないじゃないですか。目の前のことを淡々とこなすしかあんたには能がないんだから」
なんて、見下した発言をしつつハイボールを煽る後輩に、それでも何故か本気で怒る気にはならず、俺もビールに口をつけた。
「でもなあ、考えちゃうんだよ、暇ではあるからさあ、ふと余計なことをな」
「あーじゃあ暇じゃなければいいんだ。山とか登るといいっすよ」
気のない答えに、それでも何故か俺はやたらと心を掴まれた。
「山?」
「山。あ、あと俺院進するんで来年就活しないっす」
ごちそうさまでした、と言って後輩はさっさと帰って行った。
その背中を見送っていると、スマホが鳴った。慌てて手に取る。ドキドキとメールを開く。
それは、やはりというかなんというか、お祈りメールだった。
落胆し、スマホをしまいながら一人、ぽつりと呟く。
「山かあ」

そんなこんなで久々の丸一日空いた休日に、俺は単身山に乗り込んだ。結果は見ての通りだ。ここはどこだ。
右見ても木、左見ても木。前も後ろもわからない。
薄暗くなって、冷えてきた。ぞっとする。もしこのまま、夜まで帰れなかったら。
ーーあなたの強みを教えてください。
面接官の声がよみがえる。
「そんなもの、」
あったらこんなところで、こんなことにはなっていないだろうに。
風がザアと木々を揺らした。もうどのくらい歩いただろうか。足に疲れを感じ立ち止まる。深くため息をついて、空を見上げた。
深い、青。
思わず息を飲む。空はこんなに青かっただろうか。闇に包まれる寸前の、濃く深い青がすごく、綺麗だ。
ーー目の前のことを淡々とこなすしかあんたには、
後輩の声がよみがえる。
そうだな。気がつくと何故か笑っていた。
目の前の道を、淡々と進むしかないのかもしれない。

「先輩、遭難したって聞いたんすけど」
翌朝、血相を変えて現れた後輩はにやにやと笑う俺に絶句した。あのあと淡々と目の前の道を進んだらたまたま方向があっていたらしく、俺は何とか帰ることができた。奇跡に近い。心底ほっとした。ので、twitterに書き込んだ。どうやらそれを見てとんできたらしい。こいつもかわいいところがあるじゃないか。
呆れた顔をした後輩の頭をわしゃわしゃとかき混ぜると、彼は本当に気味悪そうな顔をした。
「なんすか。俺ちょっとだけ責任感じてたんすけど」
「いいや。ありがとな」
この経験を話せば内定取れるかな、とふざければ、彼はお
作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
習作39 ※未完
作者:夢路 お題:純粋な遭難 制限時間:15分 読者:40 人 文字数:449字
雪。雪。雪。 四方八方どこまで行っても雪しかない。 完全に迷ってしまったようだ。 携帯を確認する。当然のように圏外だ。 恐怖で鼓動が早くなる。 もし、このまま 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:純粋な遭難 制限時間:1時間 読者:28 人 文字数:890字
遭難した。 久しぶりに帰った田舎、実家の裏側にある山をのんびりと散策していたはずが、このざまだ。ちょっとした散歩のつもりで普段着だった上に、日が暮れかけている 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:激しい火 制限時間:15分 読者:4 人 文字数:53字
激しい火が燃えたぎっている。夏菜子はなにもかも捨てると決意したのだ。決別したい過去も愛しい想いも...。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:かたぎり お題:今度の瞳 制限時間:15分 読者:5 人 文字数:138字
ああしたらこうなるこうしたらああなるというものではないというものにみえるが...みえるからというものであるにしておこうか...しかしそれは本当でない人がそれを信 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:暑い能力者 制限時間:15分 読者:18 人 文字数:1121字
格安の賃貸アパートで、「壁が薄いために隣の生活音が全部聞こえてしまう」というエピソードは、枚挙にいとまがない。 ある会社の運営するマンスリーマンションなどでは 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:戦争と汗 制限時間:15分 読者:13 人 文字数:1076字
「砂漠の国」は「草原の国」と長らく戦争をしていた。 しかし、戦争が長引くにつれ、資源に乏しい「砂漠の国」は追い詰められていった。「おかしい、我が国のラクダ部隊 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:残念な遭難 制限時間:15分 読者:5 人 文字数:557字
「あれ?あれ?………ここ、どこぉ?」少女は真っ暗闇の中、手探りで洞窟をはいでて、あたりをやみくもに見まわした。――あたしは勇者。邪神を討伐してきた伝説の勇者。一 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:走る火 制限時間:15分 読者:3 人 文字数:610字
目の前を、火が走っていった。 時刻は深夜。季節は夏。場所は墓地。怪奇現象が起こるのにはこれ以上無い絶好のロケーションに、今まで考えていた事も忘れて背筋が凍った 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:淡いコンサルタント 制限時間:15分 読者:4 人 文字数:936字
「淡いコンサルタント? コンサルタントってあのコンサルタントでしょう? 人に意見とか言ったりする……。それのが淡いってどういう事やねん」 思わず関西弁になってし 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:わたしの嫌いなところてん 制限時間:15分 読者:3 人 文字数:481字
会社の上司が俺の近くに住んでいることがわかった。その上司から休みの日に「遊びに来い」と誘われてお邪魔したのが昨日だった。上司は夫婦仲がいいことで評判で、しかも 〈続きを読む〉

梨乃の即興 小説


ユーザーアイコン
作者:梨乃 お題:遠い靴 制限時間:15分 読者:26 人 文字数:1066字
赤い靴、という童話をご存知だろうか。この村には踊り子がいた。可愛くて、無邪気で、みんなから好かれるような、そんな踊り子。黒い髪は艶やかで、肩までに切り揃えられ、 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
登山 ※未完
作者:梨乃 お題:純粋な遭難 制限時間:15分 読者:65 人 文字数:1270字
「山とか登るといいっすよ」どうでも良さそうにそう言ったクソ生意気な後輩の言葉を、あの時どうして流せなかったんだろうか。後悔してももう遅い。とにかく俺は今、山道の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梨乃 お題:安全な踊り 必須要素:アクション 制限時間:15分 読者:52 人 文字数:996字
足払い。を、間一髪で避けてストレート。向こうもかわして背後を取られる。右か左か。いや、と迷う暇もなく放たれる蹴りを振り向きざまに跳び避ける。一瞬ふらついた隙をつ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梨乃 お題:許せない貯金 制限時間:15分 読者:65 人 文字数:1043字
ちりん。涼しげな音を立てて。吸い込まれていく。彼女が初めてぼくを手にした時、綺麗な子だなあと思った。長い髪、大きな目、白い手足。彼女はチョコレートを買って、お釣 〈続きを読む〉