お題:熱い小説の書き方 必須要素: 制限時間:15分 読者:20 人 文字数:936字
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麻痺
人は傷つくと強くなる。
私の場合、嫌なことがあると原稿用紙に向かった。お気に入りの万年筆(別に鉛筆でもボールペンでも何でも良かったのだが)を手に溢れ出す思いを書き殴っている間は無になれたし、書き終えると少しすっきりしたものだ。
辛い記憶を嘘でコーティングしてネタにする。そうしてまるで虚構であったかのように「物語」として作り上げてしまえば、私は大丈夫だった。そうやってごまかし続けて、気がついたら、私は感情を持つのがひどく下手くそな人間になっていた。

授業終わり、図書館に寄って本を借りる。最近はこれが日課になっている。ここのところ感情が高ぶることは滅多になくなっていた。このままでは何も書けないなあと思い、無理矢理にでも心を動かせないかと考えての行動だった。
本を借りて外に出ると雨が降っていた。げ、と顔をしかめる。天気予報ではずっと晴れとのことだったから、傘なんて持ってるはずもなく。手をかざしてみる。そんなことをしなくてもわかるくらいの、はっきりとした雨だったけれど。
「どうしたの」
ふいに後ろから声をかけられてどきりとした。振り向くと、同期が訝しげにこちらを見ている。その手に持たれた、青い折りたたみ傘。
「……あー、傘、忘れて」
目をそらして俯いた。彼はあーと言いながら横に並び、空を見上げる。
ああ、なんとなく。もやもやと調子が狂う。
「使う?」
差し出された厚意に驚いて顔を上げた。彼は相変わらずの無表情で傘を渡してきた。
「え、でも」
「いいよ。俺、入れてもらうから」
はたと、動きが止まった。心なしか、雨が先ほどより強く音を立てる。
「おまたせ!かえろー」
背後から小柄な女の子が走り出てきた。彼は振り返って、すごく優しく笑う。そして私に「じゃあ」とだけ言って、彼女の傘を手に取った。
二人は、雨の中、小さくなっていく。
残された私は青い折りたたみ傘をポツンと眺めた。そして自嘲気味に笑う。
入れてもらうから、か。

人は傷つくと強くなる。
久々に手に取った万年筆が踊り出す。
ああ、ちゃんと心が揺さぶられたじゃないか。書けるじゃないか。よかったじゃ、ないか。

強くなるんじゃない。麻痺していくだけだ。そう気付いたとき、いつのまにか雨は止んでいた。
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