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お題:暑い娼婦 制限時間:1時間 読者:56 人 文字数:1629字

覆らない夏、僕はそれを知った。 ※未完
 あの夏の日を、僕は忘れることが出来ないだろう。

 ニュースでは連日、最高気温更新という言葉が連呼されている。季節は、夏……大学の図書館は適度にクーラーが効いていて僕にとっては天国のような場所だった。
 つまり、連日ここに来ているということだ。朝起きて夜のバイトが始まるまでの数時間、電気代の節約と夏休み中の課題消化のためだ。
 「おぉ、桜庭、今日も会ったな」
 僕は同じサークルに入っている高校からの友人である桜庭に声をかけた。
 「あぁ、一之瀬。ちょうど良かった」
 何がちょうど良かったのだろう? とは思ったが、話があるというので談話室へと移動した。
 「どうした、なにかあったのか?」
 そう問いかけると、桜庭はスマホを僕にみせてきた。そこには、とても可愛らしい……正直好みの女の子が写っていた。
 「どう思う?」
 「どう思う、とは」
 「うーん、アリか、ナシか」
 「僕的には、アリだね」
 素直にそう答えると桜庭は「そうか……」と言って黙ってしまった。そして、意を決したかのような表情をして鞄から名刺を一枚、僕に渡した。そこには、桜庭の名前と連絡先が載っていた。彼の名前も連絡先も知っている。それなのにどうしてこれを?という表情で彼を見返すと、困ったような難しい顔をしながら、
 「……バイト、次の休みっていつ?」
 「え? あー、明日と明後日は休み」
 すると、彼は鞄から今度は封筒を渡してきた。
 「この中に、金が入ってる。これで、明日。俺に雇われてくれないか?」
 この男は何を言っているのだろう? そう思いながら封筒を開けてびっくりした。
 「え、いや、何をするためになのか聞かないと、こんなの受け取れないよ」
 「さっきの写真の子、俺の親戚の子で。言いにくいんだけど……夜の商売に手を出しているみたいなんだ。それで、どうにか辞めさせたいんだ。一度怖い目にでもあえば、やめるだろう?」
 「そうか……ってそれなら僕じゃダメじゃないか。正直、その子、めっちゃタイプだぞ?」
 「それならそれで構わない。さっきも言ったように怖い目に会えば気付く、という方法をとってほしいんだ」
 「……なぁ、桜庭、僕も男だよ?」
 「あぁ、それくらいは知っている。そしてお前の人柄も知っている、だから頼んでいる。金はその子の親からだ」
 それを聞いて手を出せる人間ではない、と。その通りなのだが。
 「わかったよ……それで、どうしたらいいんだ?」
 すると、あらゆる手順をメモした紙を僕に渡した。名刺は女の子に連絡するようにと渡してくれと言われた。親に直ではなく、手順を踏もうと言う彼なりの優しさのようだった。
 「一之瀬、頼む」
 「今回だけ、だからな」
 「ありがとう」
 と、彼は安心した顔で僕をみた。

 翌日の夜、指定された場所に向かう途中。
 偶然、写真の中の子、光ちゃんに出会って思わず声をかけてしまった。
 「あの! もしかして、光ちゃん? あの、一之瀬、といいます、今日あの」
 不審な眼差しを向けられていたが、名乗ったとたん、笑顔になって
 「あ、えっと、イチノセ タクミさん、かな?」
 「そう、です。あの、今日は宜しくお願いします」
 「よろしくお願いします、なんで敬語? 面白いね、おにぃさん」
 「あ、うん」
 彼女は所謂、レンタル彼女という名のバイト……の延長上にあるバイトをしていた。
 「もしかして、はじめて?」
 それは何のはじめてについて聞いているんだろう、と色んな事を考えて四苦八苦していたが、
 「面白い、なんだか、本当のお兄ちゃんみたいだ」
 「え?」
 「なんでもなーい。ね、行こう! 時間勿体ない!」
 なんて積極的な子なんだ……と思いながら手をひかれ多少狂った予定に目を瞑り、彼女の示す場所へと向かった。
 
 今日も決して涼しい日ではなかったが、僕の背中には冷や汗が流れていた。
 どうしてこうなった?
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