お題:12月の悪 制限時間:15分 読者:74 人 文字数:1077字
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走る
残り数日で今年も終わる。私にとってこの一年は、激動の一年だった。めまぐるしく変わる環境は私を翻弄し、けれどその分、強くなった。強くなれた。いや、強く、ならざるを得なかった。
私は多分、強い。他の人よりはそこそこに。
駅伝をやっていた。やめた。今年のことだ。夏に、やめた。最後の大会にも、出ることができなかった。怪我をしたとか成績が振るわなかったとか、ではない。ただ単に、「仲間」とうまくいかなかった。彼女らは私を憎んでいた。だから、やめた。やめねばならなかった。いや、やめなくても良かったと人は言うだろう。確かに私は耐えられたと思う。私は強い。針の筵でも、生き抜けた。生き抜けてしまった。だからこそ、苦しかったのだ。一見大丈夫に見える私のことは誰も味方してくれなかった。恐ろしいことだ。ひとりだった。駅伝なのに。ずっとひとりぼっちだった。中途半端に。
だから、やめた。途中で投げ出した。辞めるだけの強さが私にはあったのだ。泣かなかった。彼女らに駅伝を奪われても、それまでずっと打ち込んできた、私の命を注いできた宝物を取り上げられても、私は泣かなかった。
私は強い。
でも。
走りたい。走りたい走りたい走りたい。はしりたい。「仲間」とはしりたい。「仲間」というものに、強く憧れる。帰るべき場所が欲しい。一人に、しないで欲しい。私は。
返してよ。駅伝、返して。

残り数日で今年も終わる。一年を振り返りましょうと人が言う。
1月。2月。練習の毎日。3月、4月、あんな扱いを受けてよく耐え抜けたな。5月、だんだん練習すらさせてもらえなくなって。6月、勝手に練習をし咎められ。チームプレイだよ、なんて、どの口で言ったのか。私が一番、よく知っていたのに。7月、ついにやめた。走れなくなった。走る環境を、失った。8月。9月。10月。11月。あれ。駅伝を辞めてからの記憶が無い。やめてから、私は死んだのだ。私は。生きる意味を奪われて。
12月。辛い。走りたい。私にタスキをくれよ。無視しないでよ。私、いるよ、待ってるよ、タスキ、私に走らせてよ、ねえ。
走りたいよ。だって、それが私の全てだった。
私は強いと思う。強くなれたと思う。駅伝がなくても、生きていける。生きていけてしまう。だから誰も気づいてくれない。それがどんなに苦しいことか。
12月。「仲間」だった、リーダーだった、彼女が紙面に載った。
息が、止まった。
弱々しい彼女、泣きながら。「駅伝に生かされています。ないと生きていけません。」
私だって、そうだったのに。

ああ、弱く無いと走ってはいけないのか!
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