お題:帝王のいたずら 制限時間:15分 読者:69 人 文字数:1108字

暗黒の帝王の脅迫状
「暗黒の帝王より、虚ろな光の下で過ごす愚かなる人間に告げる。遠足を中止しなければ、多くの人間が死ぬことになるだろう。暗黒の帝王を崇めよ……」
 とある中学校に届いたこの脅迫文に、教職員達は頭を悩ませる。
「どうせアレでしょ、そんなこと起きるワケないヤツでしょ?」
 若い体育の教員は、同年輩の別の教員にそう言った。
「この学校の隅っこの方におる陰キャラの誰かが出しよったんでしょ。そんなんが人殺したりとか無理ですよ」
「言い過ぎじゃないですか」
 近くにいた別の女の教員が会話に入ってくる。
「しかも陰キャラって。この学校の生徒だったら大問題ですし、そういう風な目で子供達を先生が見ているのがそもそも……」
「別に本気で言うてるワケちゃいますよ」
 うるさそうに体育の教員は手を振った。
「そもそも、何なんスかこの暗黒の帝王て。帝王名乗っといて、やることが脅迫状て。アホとしか言いようがない。こんなんで遠足中止にしたら、図に乗りよりますよ」
「しかし、生徒の安全を考えれば……」
「ただの事なかれ主義ですやん。中学の間の遠足言うたら3回しかないんですよ? 生徒のことを考えるんやったら、やるべきでしょ」
 しょーもない、と体育の教員は吐き捨てる。
「その遠足で何かあったら、先生は責任が取れるんですか?」
「常に負っとるでしょ、責任なんて。生徒預かってるんやから。そういうのを脅しに使うとか、あんたが暗黒の帝王ちゃいますか?」
「止めましょう」
 最初に体育の教員と話していた者が間に入った。
「犯人捜して児童相談所に通告、それが一番や思いますけど」
「は? 学校の問題ですよ? 学校の中で解決するのが一番です。それに犯人捜しなんて、子供達を疑うような真似……」
「そんな甘いこと言うてるから、こういう方法が罷り通っとるんとちゃいます?」
「……!」
 女の教員はじっと体育の教員をにらむ。まあまあ、とまたもう一人が間に入った。
「ここで議論していても仕方ないですよ。先生も意見があるなら、さっきの教員会議で言わないと」
「そうですよ、全部終わった今言って、卑怯ですよ!」
 女の教員は新たな武器を手にしたかのように喜んで飛びつく。
「全部終わったから言うとるんです。そもそも、あんな会議、若輩の僕が口出せる場ちゃいますやん。みんなもう何とかして、これなかったことにできんか、みたいなことばっかりですやん」
 完全におかしい、と体育の教員は運動場をの方を見やった。
 夜の19時を過ぎた暗いそこでは、数人の教員が作業している。何やら複雑な図形を白線引きで描いていた。
「暗黒の帝王を、魔界に追い返す魔法じんかくとか」
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