お題:黄金の負傷 制限時間:15分 読者:68 人 文字数:1013字

呪われた黄金
 「呪われた金の延べ棒」の噂をご存じだろうか。
 それは、今は亡きある富豪が保有していたいくつかの延べ棒の内の一つで、これを持っているものは富豪の霊に呪われるという。
 この富豪の家に強盗が押し入った際、金の延べ棒を持って逃げようとする強盗に富豪が追いすがり、もみ合いになった。その時の格闘で、強盗は延べ棒で富豪の頭を殴打、富豪はその傷が元で死んでしまった。
 それ以来、富豪の血が付いたその金の延べ棒は呪われたものになったという。
 強盗は警察に逮捕された後、拘留中に死んだ。死ぬようなもののない密室の留置所で、頭を割られた状態で発見されたという。
 その後、呪われた延べ棒は紆余曲折を経て海を越え、さる国の富豪の手に渡った。
 しかし、その富豪も自家用ジェットの墜落で死んだという。ジェット機の残骸の中から、まったく無傷のその延べ棒が見つかったという。
 次いで延べ棒を所有したのも、また外国の富豪だった。その富豪もまた、自分が建てた超高層ビルの屋上から墜死した。何故彼がそんな場所にいたのかはわからず、それもまた呪いの延べ棒の魔力ではないか、と噂された。
 幾人もの富豪を死に至らしめた延べ棒は、今はどこにあるのか。
 調査によると、最後の所有者は日本国内に居を構える彫金師だった。
「父は、その延べ棒の噂を聞いた時、大変哀れに思ったそうです」
 そう話すのは、最後の所有者となった彫金師の息子だ。
「加工してしまえば、そういう呪いは晴れるのではないかって、溶かしたんですよ」
 しかし、その甲斐なく呪いは発動してしまう。
「延べ棒に使われていた金をすべて指輪に加工した後、父はふらりと出て行って、翌朝近所の山で冷たくなっていました」
 加工された呪いの延べ棒、現状は指輪であるが、それはどこに行ったのか。彫金師の息子は「気が付いたらなくなっていた」と話す。
「金を指環に加工している時の父は、何だか取りつかれていたように見えました。まるで、延べ棒が父に指輪を造らせているようにも見えて、不気味で……」
 その指輪をどこに卸すのか、も息子は知らなかったという。
「父の死体が見つかったドサクサに紛れて、どこかの業者が持って行ったようです。一応、代金は振り込まれていましたけど……」
 追いかけても、実態のつかめないペーパーカンパニーだったという。

 現在、この無数に造られた呪いの金の指輪の所在は明らかになっていない。
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