お題:秋の天使 制限時間:15分 読者:37 人 文字数:946字

秋の天使
 秋というのは儚いものだ。
 少しでも暑ければ夏だし、寒くなれば冬。見失いがちな季節だ。
 同じ微妙な季節でも、春は存在感がある。花が咲くし、はじまりの季節のように思われているから。
 多分、秋という季節がなくなっても困る人は少ないんじゃないだろうか。
 落ち葉が埋め尽くした道を教室の窓から見下しながら、僕はそんなことを思う。
 教壇では先生が、昔々の詩人の詠んだ句について解説しているが、頭に入ってこない。
 昔の人の話なんて、退屈なだけだ。僕には今しかないというのに。
 この教室の窓からは、正門へと続く道がよく見える。
 今は授業中で人影の一つもないが――いや、と僕は目を疑う。
 校舎の方から誰かが出てきた。茶色いコートを着た後姿だ。
 誰だろう、あの子。頭の格好から、どうやら女の子のようだ。
 今は授業中だというのに、サボろうというのだろうか。
 うちの学校は、自称進学校だけあって、変に意識の高い生徒が集まっている。
 だから、授業をサボッてどこかに行こうと目論む人間はほぼいない。
 どこに行っても、結局はこの場所に帰ってくることになる。みんなそう悟っているのかもしれない。
 そんなだから、この時間に人がいるのは珍しい。
 茶色のコートの彼女は、落ち葉を踏みしめながら正門の方へと向かう。
 さくさくと落ち葉を踏む音が聞こえてくるようだ。
 正門から堂々とサボろうというのか。
 と、正門と校舎の真ん中ぐらいで、彼女は立ち止まった。
 どうしたのだろう、と授業中であることも忘れ、覗きこむ。
 彼女は振り返った。そして、こっちを見上げたのだ。
 校則の厳しいうちの学校にしては、ギリギリの長さだ。
 女子の髪型は肩にかかるまでしか許されていない。彼女の髪はそれよりか長く見えた。
 その瞳は、完全に僕を映していた。
 そして、笑った。笑ったのだ。両腕を広げて。
 さーっと、その後ろを強い風が吹いた。落ち葉が舞い上がって、その中心に彼女はいた。
 秋の天使だ。
 昔の詩人の話は、僕の中のなけなしの詩心を呼び覚ましたのかもしれない。
 そのまま彼女は踵を返すと、正門から出て行った。
 その足取りは飛ぶようで、ここには二度と帰ってこないんじゃないか、と思うほどだった。
 
作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:佐藤りーまん お題:秋の天使 制限時間:15分 読者:46 人 文字数:735字
現在:至誠 警察官過去:生命 病院勤の母近未来:節度 身の丈にあった生活援助:理性の逆 ファンキーな画家敵対:寛容の逆 警官の継父結末:厳格の逆 寛容 いい人幼 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:月海の魔導師 お題:秋の天使 制限時間:15分 読者:80 人 文字数:638字
前回のお題も入ってます「ねぇあんたどうすんの?」そんな声が暗い部屋の中で聞こえていた。俺がそっちを見るとパソコンの光でかろうじて顔が確認できた。「んー向こうが出 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:秋の天使 制限時間:15分 読者:110 人 文字数:386字
「間に合ええぇっ!」心の中で叫びながら(実際には小さく声に出ていたが)俺はペダルを全体重をかける。勢いを増した自転車が落ち葉を踏み、パリパリと音を立てていく。遠 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:乃井星穏 お題:秋の天使 必須要素:《算数のたかし》 制限時間:30分 読者:25 人 文字数:1056字
「勝負しましょう、テストの点」最後のテストが返却された授業も終わり、さて帰ろうかと準備をしていた時のことだった。前の席に座っていた綾子が振り返って得意げな顔でそ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
傷の貯金 ※未完
作者:匿名さん お題:傷だらけの貯金 制限時間:15分 読者:20 人 文字数:692字
彼と初めて会ったのはいつ頃だったでしょうか。たまたま授業で隣の席になり、お話する機会があったのです。彼は本当に優しいお方でした。頭も良く、性格も優しく、非の打ち 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
作者:yaichiyo お題:戦艦のデマ 制限時間:15分 読者:14 人 文字数:664字
(#13) 目の前に広がる光景に息を飲んだ。 見渡す限りの炎。それらから立ち上る黒煙。そこかしこに転がっている死体。 操縦桿を握りしめる手のひらからは止めどなく 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
限界点 ※未完
作者:真弓ヽ(=ε=)ノ お題:空前絶後の嘔吐 制限時間:15分 読者:28 人 文字数:367字
「おえっ!」吐いてしまうのはこれで何度目だろうか。数えるだけでまた吐き気を催してくるので彼はそのことについて考えないようにした。「やはり食中毒か…」排水溝の前 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:shojin お題:かゆくなる光 制限時間:15分 読者:8 人 文字数:249字
私の遠い先祖は吸血鬼だったらしい。かつては夜の支配者だった吸血鬼は夜が明るくなるにつれ姿を消した。その血は人と混ざり今も生きている。しかし吸血鬼の特性はもうほと 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:自分の中のところてん 制限時間:15分 読者:12 人 文字数:597字
俺は○○。普通の社会人だ。もう一度いう、普通の社会人だ。ただ一点を除いては。その一点というのは、信じてもらえないかもしれないが、俺の手の甲のアザに「ところてん」 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:日ノ宮理李@ハナねね町長 お題:自分の中のところてん 制限時間:15分 読者:18 人 文字数:863字
緩衝材というのはなんにでも必要であり、「えっと遅れた理由は?」 あたりまえのように人間の中にも存在する。「寝坊のようなものかな?」「寝坊じゃないの?」「うーん 〈続きを読む〉

雨宮ヤスミの即興 小説


ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:たった一つの命日 制限時間:15分 読者:10 人 文字数:1151字
「『ケンタくんの命日』という童話を書いたのだけれど、聞いてくれるかしら?」「タイトルの時点で嫌な予感しかしないけど、いいわ、聞くわ」 大鷺高校文芸部の部室で、七 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:大好きな理由 制限時間:15分 読者:32 人 文字数:1387字
「あたしのことを大好きな理由を5個挙げて?」 かわいい女の子にこんなことを聞かれるシチュエーション、正直僕は憧れていた。 だけど、こんな形で叶えたいとは思わなか 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:出来損ないの笑い声 制限時間:15分 読者:17 人 文字数:1079字
わたしの通っていた中学には、「蛇男」という怪談があった。 体育館の床下から「蛇男」の笑い声が聞こえてくる、というもので、在校生ならみんな知っている怪談であった 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:今度の負傷 制限時間:15分 読者:20 人 文字数:964字
トシダ高校の野球部は呪われていると評判だ。毎年必ず大怪我する生徒が出る。 指導方法などの問題ではない。何せ、みんな練習中以外の時間に怪我をしているから。 5年 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:フォロワーのお金 必須要素:コミティア 制限時間:1時間 読者:39 人 文字数:3220字 評価:1人
業界最大の登録者数を誇るコミック系SNS「コミック・コミュニティア」、通称「コミティア」。 ここではプロ・素人を問わず、多くの漫画家が日夜作品を発表し、しのぎ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:楽しい英霊 制限時間:15分 読者:25 人 文字数:1185字
どこの国の部族か忘れてしまったが、「プンナムパパラヤー」という祭りがある。 非常に楽しげな響きなので、そのインパクトある名前はよく覚えている。 「プンナムパパ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:贖罪の会話 制限時間:15分 読者:24 人 文字数:1265字
こんな中学にしては珍しい、いい先生なのだと思っていた。 中二の時の担任の太田先生は、クラス内で孤立しがちな生徒によく話かけていた。 わたしが通っていた学校は結 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:蓋然性のある私 制限時間:15分 読者:21 人 文字数:1184字
この世のすべては宇宙人か何かが作ったプログラムかもしれない。 そんな疑念を持ったまま、わたしは生き続けている。 一度、同僚に相談したが、返答は冷たいものだった 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:灰色の愛 制限時間:15分 読者:20 人 文字数:1074字
「ねぇ、愛って何色か知ってる?」 リカは隣に寝る男に尋ねた。20を過ぎたリカよりも、倍は年を取った男だ。ざらついた無精ひげを撫でて男は、「そうだなあ……」と気の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:メジャーな男 制限時間:15分 読者:26 人 文字数:1236字
わたしの家の近所では、「メジャーマン」と呼ばれる怪人物がいるという噂があった。小学校は元より、中学の学区域レベルでも名が知れていた。 高校に入って、不審者情報 〈続きを読む〉