お題:秋の天使 制限時間:15分 読者:42 人 文字数:946字

秋の天使
 秋というのは儚いものだ。
 少しでも暑ければ夏だし、寒くなれば冬。見失いがちな季節だ。
 同じ微妙な季節でも、春は存在感がある。花が咲くし、はじまりの季節のように思われているから。
 多分、秋という季節がなくなっても困る人は少ないんじゃないだろうか。
 落ち葉が埋め尽くした道を教室の窓から見下しながら、僕はそんなことを思う。
 教壇では先生が、昔々の詩人の詠んだ句について解説しているが、頭に入ってこない。
 昔の人の話なんて、退屈なだけだ。僕には今しかないというのに。
 この教室の窓からは、正門へと続く道がよく見える。
 今は授業中で人影の一つもないが――いや、と僕は目を疑う。
 校舎の方から誰かが出てきた。茶色いコートを着た後姿だ。
 誰だろう、あの子。頭の格好から、どうやら女の子のようだ。
 今は授業中だというのに、サボろうというのだろうか。
 うちの学校は、自称進学校だけあって、変に意識の高い生徒が集まっている。
 だから、授業をサボッてどこかに行こうと目論む人間はほぼいない。
 どこに行っても、結局はこの場所に帰ってくることになる。みんなそう悟っているのかもしれない。
 そんなだから、この時間に人がいるのは珍しい。
 茶色のコートの彼女は、落ち葉を踏みしめながら正門の方へと向かう。
 さくさくと落ち葉を踏む音が聞こえてくるようだ。
 正門から堂々とサボろうというのか。
 と、正門と校舎の真ん中ぐらいで、彼女は立ち止まった。
 どうしたのだろう、と授業中であることも忘れ、覗きこむ。
 彼女は振り返った。そして、こっちを見上げたのだ。
 校則の厳しいうちの学校にしては、ギリギリの長さだ。
 女子の髪型は肩にかかるまでしか許されていない。彼女の髪はそれよりか長く見えた。
 その瞳は、完全に僕を映していた。
 そして、笑った。笑ったのだ。両腕を広げて。
 さーっと、その後ろを強い風が吹いた。落ち葉が舞い上がって、その中心に彼女はいた。
 秋の天使だ。
 昔の詩人の話は、僕の中のなけなしの詩心を呼び覚ましたのかもしれない。
 そのまま彼女は踵を返すと、正門から出て行った。
 その足取りは飛ぶようで、ここには二度と帰ってこないんじゃないか、と思うほどだった。
 
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