お題:綺麗な奈落 必須要素:ホモ 制限時間:1時間 読者:23 人 文字数:1832字 評価:1人

宇宙の果てはささいな一欠片
 ミドリムシ。単細胞生物。オスメスの区別はなく、細胞分裂によって増殖する。しかし細胞それ自体にも寿命はある。元は1つの細胞から分裂していくだけなら、その分裂の元が既に老いている訳だから新しく生まれる彼等の寿命などたかがしれたもの、いや、やがて彼等はある日一斉にその種を途絶えてしまったのではないか。しかし彼等はそうはならなかった。細胞の寿命の元と言われるテロメアは分裂した彼等がまた別の個体のミドリムシと合成することで遺伝子を交換して再生され、新しく生まれ変わった。

 ずっと鬱陶しいと思っていた。ソイツとは幼馴染だったがいつも殴られても蹴られてもヘラヘラと笑っていて自分の後をついて来た。
「お兄ちゃんなんだからアナタが面倒見てあげなさい。」
 親も、近所の小母さん連中もソイツが泣いたり困ったりしているといつも関係のない自分に向かってそう言って来た。でもソイツは兄弟じゃない。ただたまたま家が近くにあっただけで、せいぜい幼稚園、小学校が同じでいつも一緒に登校していただけだ。
 ソイツは運動音痴で勉強もからきしで物覚えも悪くて、どんなに悪戯されても意地悪をされても相手に対して怒るということが無かった。まるで笑うと泣く以外の感情をどこかに忘れてきてしまったのではないかと思うこともよくあった。
 とにかくそんな調子だったから幼稚園の頃から何かとソイツの面倒見を押し付けられた。ソイツが体調が悪くなった時には一緒に早退に付き添い、ソイツが給食費の入った封筒を何処かに落とした時には一緒に探させられ、ソイツが赤点で補講を受ける事になった時には一緒に学校に残されて補講の相手をさせられ、ソイツがいじめられた時にはわざわざ見ず知らずのヤツの前に立って庇ってやらなければならなかった。いや、別にそれだけだったらまだそんなに苦痛という訳じゃない。問題は、いつも自分がソイツの面倒見てばかりいるのを面白がっていた連中がその時
「お前、ホモなんじゃねえの?」
 自分はその時そう言った相手の事を自分の腕がもう上がらなくなるまで何度も殴りつけた。何でそのとき自分はそんな異常なまでに怒ったのか分からなかった。その後、担任の先生に職員室に呼び出されてこっぴどく説教をされた。相手の親にも感情があるから、とか何とか担任が言っていたのを半ば上の空で聞いていた。担任が自分の気の抜けたような様子にため息をついて、ようやく解放してくれたとき、外はもう夕暮れ時になっていた。何故かソイツが校門の前で待っていた。いつものようにヘラヘラと笑っている。吐き気がした。
「うん、僕と一緒じゃ、嫌だよね。」
 ソイツが言った。
 嫌?何だろう。自分はソイツの事を嫌っていたのだろうか。自分の中にモヤモヤとわだかまる感情がいまいち説明のつかない、説明をつけたくもない、ただ漠然と夜闇のように広がっていく・・・
「帰ろうぜ。」
 どうでもいいと言った風に自分は答えた。いや、ソイツの問いに対しては答えなかった。何処かの家で夕げの支度をしているのか焼いた魚の匂いが漂って来た。

「地球滅亡マデアト一時間デス、スグニ搭乗シテクダサイ。スグニ搭乗シテクダサイ。」
 コクピット正面に付いているモニタが赤くアラートの文字を表示して点滅し、AIがさっきから同じ言葉を繰り返していた。地上はまともに立っていられないくらい揺れていて、この発射台もあと何分無事でいられるか分からない。待っている余裕は無かった。
 地上に残されているロケットはもうこの一機だけ。いくら待っていてももう誰も来る気配は無い。
「畜生。」
 レバーを思い切り引いた。視界が変わる。正面が暗くなり、その後急激なGが体に掛かる。
 そうしてどれだけ経っただろうか。
 ・・・。
 そもそも何でこんな状況になっていたのか。
 その後、大学の宇宙航空学科を出て、宇宙飛行艇のパイロットになり、そこまでは良かったがある日突然地球に隕石が落下し、その影響で地下深くに眠るマグマが目を覚まし、地上はあちこちで崩壊が起こり・・・。
 頭が痛くなってきた。これは現実なのだろうか。最新の科学技術を載せているとも言われるこの飛行艇の軌道がようやく安定してきたので室内を振り返る。そこにはしかし誰もいない。いや。いた。ソイツが。違う、それはおかしい。だってソイツはもう8年前に死んだのだから。
 ・・・。
 そうじゃない、死んだのはソイツではなくて自分のほうだ。
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