お題:ワイルドなおっさん 制限時間:15分 読者:60 人 文字数:1160字

ワイルド大会
 俺も生きている内に、何かのトロフィーがほしいものだ。
 コヨーテ南と呼ばれる男はそう考え、「ワイルドマンナンバーワン決定戦」なる催しに参加することを決意した。
 コヨーテ南は、その二つ名の通りワイルドな風貌をしており、「これは優勝確実だな」と内心ほくそ笑んでいた。
 しかし、それをコヨーテ南の内縁の妻は不安そうに見ている。
「あんたなんて、格好ばっかりのワイルドでしょ? 豆腐メンタルだし、やることがいちいちセコいし、絶対無理よ。恥かくだけ」
 手厳しい、とコヨーテ南は顎髭を撫でる。だが、彼女の言うことも一理ある。
 コヨーテ南は大舞台に弱い。小学校の学芸会の時はセリフ一つの役に緊張して漏らしてしまった。中学の体育祭ではクラス対抗リレーの走者に選ばれたが、その時も漏らして変わってもらった。高校の時は――と、そういう思い出は枚挙にいとまがない。
「ならば、他の出場者の足を引っ張るしかねえ!」
 内縁の妻の言うところの「セコさ」が発揮されるようだ。意外や、それを指摘した彼女は「これは期待できそうね」と微笑んでいる。彼女としては、コヨーテ南のワイルドさよりもセコさの方が好ましいのであろうか。

「さあ、始まりました! 『ワイルドマンナンバーワン決定戦』! 最初の挑戦者は――」
「オーッス、ウルフ杉田だぜぇ!」
 デニムのタンクトップ姿のウルフ杉田は、前年三位の実力者である。
「さあ、ワイルドさを見せつけてもらいましょう!」
 司会の言葉で、ウルフ杉田は一歩進みでて手にした1.5リットルのコーラを一気に飲み干そうとした。 しかし――
「げぇぇぇえ!?」
 吐いてしまった。会場がどよめきに包まれる。司会の女性は露骨に嫌そうな顔をした。
「こ、これ、醤油になってるぜぇ!?」
「ともかく、吐いてしまったので失格です」
 そんなぜぇー、と嘆きながら退場させられるウルフ杉田と、床を片付けるスタッフを見ながら、コヨーテ南はにやりと笑う。もちろん、コーラを醤油にすり替えたのは彼である。
「では、続いてはこの人!」
「おっし! ブルズアイ山田だ! よろしくな!」
 上裸にテンガロンハットのブルズアイ山田は、前大会の優勝者だ。前回は原付を持ち上げて優勝したが、今年はそれを片腕で一つずつ、2台持ち上げるという。
「よーっし、搬入してくれ! 持ち上げてみせる!」
 しかし、運ばれてきたのは750cc以上はあろうかという大型バイクが2台、さすがに持ち上げられずに遭えなく失格となった。
「今年は何だかおかしいですねー」
 司会の女性が不思議そうにする中、コヨーテ南はニヤニヤ笑いが隠せない。当然、さっきのも彼の妨害行為である。
 しかし。
「エントリーナンバー3の南さんもしかっくなので、ことしはがいとうしゃないs」
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