お題:ぐふふ、小説合宿 制限時間:15分 読者:64 人 文字数:940字

虫の笑い声
 テントの明かりを消したところで、怖い話をしようか、ということになった。合宿の夜にはお決まりの展開だ。だいたい言い出すのは同じやつで、話をしたがるのも同じやつ。ほかのみんなは耳を塞いで寝袋に頭まで入る。
「ノリが悪い」
 結局、彼女の話を聞くのは私だけになる。
「仕方ないよ。登山部だもん。みんな昼間に疲れてるし、場所が場所だから逃げ場もない。なによりあんたの話がじっさいになりそうだからね」
「今から話すのは、すべて本当にあったことです……」
 そんな前置きもいつものことだった。趣味の悪いのは、主としてその内容が山で起きた事故だったり事件だったりすること。だから登山部のみんなは怖がって聞こうともしない。
 私だけはハナから嘘だと決めてかかっている。彼女がこっそり小説を書いているのを私だけは知っている。自分で作った話を誰かに聞いてもらいたいのだ。彼女の頭のなかだけで起きた、拙い話を、ときどき相槌を打ったり、怖がったりしながら聞いてやる。彼女と私にとっては小説合宿というわけ。
「テントの向こうからは、虫の羽音がいつまでも消えませんでした。おかしなことです、そんな時期でもないのに、どうしてこんなにたくさんの虫がいるのでしょう」
 彼女はライトを手探りしていた。話を暗記しているわけではないから、手書きのノートを読み上げているのだった。寝袋に隠した携帯の明かりだけでは心もとなく、野営用のランプをどこにやったかと、暗闇のなかで手をさまよわせている。私の顔まで伸びた手が、どこかスイッチだったかなと耳やら唇やらに触れてくるので、仕方なく近くにあったランプを押しやってやった。
「あったあった。これで手元がよく見えるよ」
「あんまり暗いところで字を読むと、目を悪くするしね」
「字を読む? いいえ、これはすべて知人に聞いた、嘘偽りなく本当にあった話です……」
 メガネを掛け直し、近視の目をノートにぐっと近づけて、彼女は話を再開する。「ぐふふ、とそのとき笑い声が……」
「テントの外には虫しかいないんじゃなかった? 虫が笑ってるの?」
「まあいいから聞きなさい、その伏線……謎は、あとで解決される予定だから」
 ちゃんとお話として成立しているかは、最後まで聞かないとわからない。
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