お題:何かの感覚 制限時間:15分 読者:63 人 文字数:899字

冷え性
目を閉じるとうなじがひんやりとして、喉の奥からつめたいものがこみ上げてきた。冷たいものが喉の奥からこみ上げてくることはしょっちゅうあって、病気だったら嫌だなとスマホをたぷたぷスワイプしたのだが一行にヒットする気配がない。

思わず手のひらでまぶたを覆うと、生きているのが不思議なくらいの冷たい指先がまぶたにふれ、アイシングをはじめた。

やっぱり欲しい情報はないのだろう。

諦めてスマホをベッドの上に放った。一歩踏み出そうとして、そのまま足が麻痺する感覚にうずくまってしまう。喉の冷たさもさることながら、時折足が瞬時に冷えて立っていられなくなり、その場に倒れてしまうということも珍しくなかった。ひどい冷え性だからこんなことになるのだろう。そう思ったが、周りの冷え性に聞いてみても、誰もそういう経験はないのだという。末端は常に冷たい状態がデフォルトなのであり、そのように瞬時に冷えることはないし、ましてや歩けなくなるなんてことはないと。
では、この末端を凍えさせる原因は何なのだろう?

仕事は嫌いではないが、出勤途中に気分が悪くなり、ひどい時にはそのまま吐いてしまうこともあった。吐く時には決まって冷たい感覚が喉をせり上がってくるのだが、やはりこれも奇妙な感覚なのだという。胃の中にあるものや胃酸が冷たいはずはないだろうというのだ。
確かに吐いたものは冷たくない。ただ喉が冷たいだけなのだろうか。そう思いながら何度目か分からない吐き気を感じたのでトイレに駆け込み、便器に寄りかかった。その場で膝を着いたが気にならなかった。もともと、地べたに座ることをいとわない人間だ。

その後は頭だけがぼんやりと熱く火照っていて、やはり喉から全身に流れるように悪寒が駆け巡っていくのを感じた。この喉が冷たいのはどうしてだろう?思わず両手の平をかざして見た。

末端は氷のように冷たい。熱に触れても、どんどん冷気が製造されていくようにちっとも温まらない。誰かの手を握ると永遠に熱を奪ってしまうから、夏以外は決して人肌に触れられないのだった。内臓が集まっている胴体部分は温かいので、全身性の冷え性ではないのだろう。
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