お題:12月の円周率 制限時間:15分 読者:61 人 文字数:769字

彼と彼女と円周率と
小学生の頃、クラスで「誰が円周率を最も長く覚えられるか」という競争が流行っていた。
算数の授業中に先生が促したものだが、こういう単純な競争は子供を夢中にさせるものだ。
一時期今の学校は円周率を一律「3」に教えている、なんて噂も流行ったが、私の学校では無縁のものだった。

クラスの中でいつもトップ争いをしていたのは、私とハルキだった。
ハルキが小数点100までの数を暗唱してみせれば、私が101までを唱えてみせる。
そんなイタチごっこの勝負がずっと続いていた。

それは授業中や皆の前だけではなかった。
いつしか放課後、2人で空き教室にいき、円周率の暗唱勝負をするのが私達の日課になっていた。
片方が暗唱するのをもう片方が円周率が延々とのったプリントを眺めて聞くという寸法。
もちろん相手が間違えれば容赦なく指摘する。
負けん気旺盛に挑みながら、どこか楽しく心躍る時間でもあった。

それは12月の終業式の日。
いつものように私とハルキが空き教室に入ると、ハルキが唐突にいった。
「俺、冬休み中に引っ越すことになった」
HRでも発表されないことだったので、私は初耳だった。酷く驚いた。
「だからお前との勝負も、これで最後になる」
そう呟く彼の声が寂しそうに聞こえたのは、気のせいだったろうか。

勝負は私の先行で始まった。小数点120まで言った処でトチってしまった。

次はハルキの番。順調に進んでいったが、110の数が違っていた。
私はそれを聞き流した。
そのまま、ハルキは125まで数え上げた。

「…負けたわ、あんたの勝ちよ」
「へへ、どんなもんだ!」

ハルキはミスに気づかないまま元気に勝どきをあげたが、次の瞬間涙を流してしまった。
私も続いて涙を流した。

だから12月に限り、私の中の円周率は、今でも1つだけ数が違っている。
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