お題:フハハハハ!それは高給取り 必須要素:切符 制限時間:15分 読者:30 人 文字数:955字
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高給取り
 ある日、私は見てしまった。私と同期入社の、前園美香の給料明細を。
 私は驚愕した。
 なんと、美香の給料は、私よりも五百円高かったからだ。なぜだ! なぜ五百円高いのだ!
 私は憤怒にもにた感情を原動力に、美香に詰め寄った。
「どういうことかいね! なんでね、なんであんたのほうが、五百円給料高いとね!」
 美香は、口をあんぐりと開けて、しまった! みたいな顔をした。
「見てしまったのね。この世には、知らない方がいいこともあるのに。あなたは、知ってしまったのね」
 美香はまるで、怪談を話す夏の稲川淳二みたいなおどろおどろしい口調でくちゃくちゃ喋る。
「な、なんよ。なんなんよ」
 私は美香の気味の悪い喋り方に少しだけ、萎縮した。憤怒にも似た感情がさーっと引いていくのを感じた。あれはやはり、憤怒そのものではなく、憤怒に似た別の感情だったらしい。勘違いだわ。
 美香は、ニタニタと笑い、あー知ってしまったのね、のね、と言いながら、給料明細書で折り鶴を織始めた。美香の爪は、薄ピンクのネイルで装飾されている。相変わらず、女子力が高い。
「いい、引き返すなら今のうちよ。これから私が話すことは、そうね、言うなれば、地獄への片道切符よ。いいのね? 本当に話してもいいのね?」
 美香は執拗に確認をする。私はたじろいだが、ここで引くわけにはいかない。私だって、一生懸命働いているんだ。私は意を決し、頷いた。
「望むところんだ」
 美香はやれやれという表情で、静かに説明する。
「実はね・・・・・・私、大卒。あなた、高卒」
「へ?」
「ちゃんと会社の募集要項見た? お・ば・か・さん」
「な、なーんだ。そんなことだったんで。えへへ」
 私はえへへで誤魔化すことに決めた。うん、決めた。
「むしろ、私の方が驚いたわ。あんた、高卒のくせに、私と五百円しか違わないのね」
 美香は私の肩を掴み、今に私のことを丸呑みにしそうな勢いで睨む。美香の口からニンニクの臭いが漂う。こいつ、昼に餃子を食ったな。
 美香のネイルに装飾された爪が、私に埋没する。痛い。
「もすかすて、あたすって、もらいすぎのかしらん?」
 私はかわゆくウインクをした。
「フハハハ!それは高給取り」
 美香は不気味に笑いながら、私に頭突きをした。

おわり
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