お題:愛、それは模倣犯 制限時間:15分 読者:108 人 文字数:671字

化け猫の飛翔/copycat
 「ささやかなテロ」から一か月。学園は相変わらず賑やかで、学生たちが胸を張って闊歩する。変わったことと言えば、「魔王」と「帝王」により強行されそうになった学則の改正が取りやめになったくらいだ。
 その原因である化け猫は今日も平然と隣を歩いている。いくら防災用のマットがあったとはいえ校舎の屋上から飛び降りる暴挙を成し遂げたが、幸い怪我ひとつなく翌日から何食わぬ顔で登校してきた。
「目的は達成できたからね。これで充分」
 マウンテンパーカ―のポケットに両手を突っ込み、さらりとそう言う。右手には昼食のメロンパンと牛乳、それから珈琲ゼリーの入った袋をぶら下げている。
 行く先に人だかり。皆掲示板の一角を食い入るように眺めて、ひそひそと言葉を交わしている。なんとなく嫌な予感がしたが、化け猫はむしろ足を速めて近づいていく。
「どうした?」
 雑な声掛けで一斉に振り返る、その顔に浮かぶ表情は大きく二つに分かれている。不安と好奇心。化け猫がもっとも好む感情だった。これ、と一人が指差した先に貼られた A4 用紙に書かれたのは、たった一文。
『化け猫へ、愛を込めて』
 耳をつんざく轟音。校舎が揺れる。上がる悲鳴のなか化け猫はただ一人視線を巡らせていた。
「……あそこか」
 見上げる先には化学実験室。ドアが吹き飛んでいる。炎と煙。その向こうに人影。
 化け猫が息を飲む気配がした。
 狐面。
 こちらを見つめ、身を翻していった。
 狂乱と怒号のなか、化け猫はまだ目を離さない。湧き立つ煙を睨んでいる。
 事件は事件を生む。わかっていたことだった。
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