お題:狡猾な暴走 制限時間:15分 読者:110 人 文字数:576字

化け猫の飛翔/Meanwhile
 階段を一段抜かしで上がる。渡り廊下を駆け抜ける。ぶつかりそうになった学生をきわどく躱して、さらに走る。スピードは緩めない、むしろ加速を意識。大学の敷地は広い。目指すのはその端、ほとんど忘れられた倉庫。既に仲間が何人か待機しているはずだ。手筈通りなら、すぐ移動できる。
 錆び付いたドアが視界に入る。息切れを堪えて叫んだ。
「開けろ!」
 ぎいいい、と耳障りな音。運び出されたのは折り畳まれてなお巨大な、頑丈なビニール製の物体。黄色っぽく、古びた匂いがする。四人がかりで抱え上げ、今度は校庭へ向かう。汗が首を伝う。でも立ち止まる暇はない、急がなくては。見えてきたのは小型の発電機とポンプ。荷物を広げ、ゴムホースでポンプとつなぐ。発電機をオン。低い駆動音が腹に響く。ビニールはみるみるふくらんでいく。身長に届きそうなほど分厚く、ちょっとした教室の床面積ほど大きく。これならきっと大丈夫だ。見上げれば今にも壊れそうな柵。あそこを目指し走っているはずの背中を思う。仮面のしたで不敵に笑う顔を思う。
 ポンプが止まる。すみやかにチューブを切り離す。急にしんとした校庭に風が吹き過ぎ、それに煽られて何かが落ちてくる。狐の面。カウントダウンは始まっている。空気が張り詰めた。
 屋上のへりに人影。なびく黒い髪、体を覆うパーカ。誰かに向かって優雅に一礼し、そして――
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