お題:愛と欲望の誤解 制限時間:15分 読者:60 人 文字数:921字

狭隘
「僕は、愛というものがよく分からないんだ」
 裕二は言った。
「その話は僕にする話なの?」
 健太は動揺を隠せない。
 放課後の健太の部屋は、健太の好きなもので満たされている。部屋の壁一面にカーペットの模様のように並べられているのは美少女やロボットのフィギュアで、ショーケースにポージングされている。それを見た裕二は、開口一番言うのだった。
「健太はさ、この人形を集めるのに、どれだけの情熱を傾けたの?」
 裕二は言葉遣いが独特で、それを理解できる健太は裕二の無二の親友と言ってよい。
「どれだけ、って……まあ結構な額は使っているかな」
 よそ事には目もくれず、健太は自分の欲しいと思うフィギュアに対してお金を支払ってきた。ショーケースを買い、そこに自分が目標とした世界観を作り上げた時、えもいわれぬ達成感を覚えた。最初の達成感を味わうために、健太は次々とショーケースを自分の部屋に増設していき、そこに自分の好きを集め、作り上げていった。
 言わば、彼の部屋の壁は、健太自身の心のパノラマだった。
「僕には、この部屋を作り上げるだけの……愛がないんだ」
「愛、って言われても僕にはよく分からないけど」
 慈しむような顔で、裕二はショーケースに近づく。健太は少しハラハラしたが、裕二の伸ばす手は、ゆっくりとショーケースのガラスを撫でるだけだった。
「鍵がかけてあるんだね」
「一応ね」
 フィギュアは健太の生き方だった。あらゆるものを諦めて得てきた健太の命。それは誰かに触らせるためのものではなく、自分が見るための物。他人に見せてもいいけれど、触れられたくはない物。
「……触ってみる?」
「遠慮しておくよ。変に触ったら壊れそうだ」
 フィギュアならば簡単には壊れない。プラモデルだとちょっとの刺激が大変なことになるかも知れないが。健太はそう思いながら、裕二が遠慮したことに、胸をなでおろしてもいた。
「健太は、人形を愛しているの?」
「さっきも言ったけれど、愛っていうのはちょっとよく分からないな。これは……趣味だよ。僕の人生をかけた趣味。自分の欲しいものを得て、自分の欲しいままに世界を作る。この壁は、僕の世界そのものなんだ」
「世界、ね」
作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:ちょ子 お題:愛と欲望の誤解 制限時間:15分 読者:390 人 文字数:678字
「あのさ、未海」「なあに、和也」「……もう俺、我慢できないんだけど」 和也が赤い顔をして、こちらを見ている。震える声、熱い瞳。あっ、これはあれだ。いわゆる、発情 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:日ノ宮理李@バブみ昆布 お題:猫の海 制限時間:15分 読者:12 人 文字数:847字
陸地が減り続けてる現代。なんとか生きてくために人間という個体は、多種族の遺伝子を組み込まれ、亜人へと変わることとなった。 その中でも多いのはネコ科の亜人。それ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:真城うさ お題:黒い故郷 制限時間:15分 読者:13 人 文字数:3016字
「みいちゃん、いもうとができるのよ」みいちゃんをだき、あやしながら、おかあさんがいいました。「みい、おねえちゃんになるんだよ」みいちゃんのほおを、ゆびのさきでつ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
男は佇む ※未完
作者:匿名さん お題:煙草と時計 制限時間:15分 読者:0 人 文字数:281字
旧い人間だと嗤われる程度に俺はこの店が好きだ。今時禁煙席喫煙席の区分もなく、便所はボットン。ド田舎の道をドライブしていてふっと現れる幽霊店舗のような佇まいなのだ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:朝の模倣犯 制限時間:15分 読者:2 人 文字数:932字
本当に苛立っていることがある。 私は俳優で主役こそないものの、名前を聞けば半分ぐらいの人は知ってそうな、有名なドラマや映画に脇役として多く出演しているような俳 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
作者:破死竜 お題:消えた血液 制限時間:15分 読者:6 人 文字数:585字
敷地の外にいたとき、ポケベルが鳴った。 「先生、またタバコですか」 看護師が顔をしかめる。手は空いていても、臭いは隠せないものらしい。 「二徹目だ、何かしてな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:10の男の子 制限時間:15分 読者:15 人 文字数:1159字
ある時期に、全国各地で10歳の少年がいなくなるという事件が起こった。それぞれ別の地域で起こった事件のため、関連性を疑う者はいなかった。 たった一人を除いては。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:にい お題:私と銀行 制限時間:15分 読者:19 人 文字数:776字
自販機で缶ジュースを買おうとしたら、小銭を落とした。はずなのに、なんの音もしなかったせいで、しばらく落下地点を見失った。たしかに落とした感覚はあった。100円 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:混沌の過ち 制限時間:15分 読者:2 人 文字数:456字
現状はカオスだった。どう説明すればいいのか、とにかく大変な事態であることは確かだ。お盆と正月どころではない。ブラジルと日本がくっついたぐらいの有り得ないことが 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:カ ク お題:初めてのアレ 制限時間:15分 読者:20 人 文字数:644字
改札を出た先にある売店の壁にはサイネージが光っており画面は今日の星座占いが五位まで表示されている。自分の星座が四位に入っているのが見えたがサイネージの前には恰幅 〈続きを読む〉

雷藤和太郎の即興 小説


ユーザーアイコン
人魚伝説 ※未完
作者:雷藤和太郎 お題:煙草と伝説 制限時間:15分 読者:24 人 文字数:993字
海岸線を眺めながら紫煙を薫らす老人は、ゆっくりと語り始めた。「あれは、ワシがまだ半人前の頃じゃった」 衰えてはいたが、その体躯にはまだ頑健な筋肉が宿っている。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雷藤和太郎 お題:許されざるお尻 制限時間:15分 読者:23 人 文字数:991字
透き通るように寒い朝だった。 部屋の中だというのに息が白くなるほどに寒く、布団から片腕だけを伸ばしてエアコンのリモコンを取ると、電源を入れた。 シュンシュン、 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雷藤和太郎 お題:許せない魔王 制限時間:15分 読者:23 人 文字数:1019字
魔王と言っても、その時はまだ少女だった。 年端もいかない女の子になぜ魔王が務まったのかと言えば、それはひとえに魔王が君臨する者ではなかったからである。 では、 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雷藤和太郎 お題:今日のゲストは模倣犯 制限時間:15分 読者:16 人 文字数:1093字
「5年前の事件のこと、覚えてるか?」 こたつの上で豆腐が煮えている。 くつくつという音と、テレビから流れるクリスマスの音楽。外は赤と緑のイルミネーションで忙しい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雷藤和太郎 お題:緩やかな性格 制限時間:15分 読者:20 人 文字数:828字
「アッ」 その声に僕が台所を覗き込むと、人差し指を咥えたミーシャが眉をハの字にさせていた。「切っちゃった?」 小さく頷く。「そっか。ちょっと待ってて。絆創膏を持 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雷藤和太郎 お題:暗黒の検察官 制限時間:15分 読者:21 人 文字数:1010字
事件でもなんでもないものを事件に仕立て上げる検事がいたとしたら、それはもはや検事ではなく、単純に職権濫用の犯罪者だ。 多くの人は、その人が検事というだけで一般 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雷藤和太郎 お題:もしかして解散 制限時間:15分 読者:30 人 文字数:904字
「話って何だよ」 今年のクリスマスは例年になく冷え込み、関東一帯は異例の大雪に見舞われた。 クリスマスイブが休日だということもあり、多くの客入りで賑わうかと思わ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雷藤和太郎 お題:早すぎたエリート 制限時間:15分 読者:32 人 文字数:968字
夜も明けきらぬビル街を行く人間など、二種類しかいない。 始発で帰る者と、浮浪者。 薄明の空にはまだ点々と星が輝いている。冷やりとした清冽な空気を混ぜっ返すかの 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雷藤和太郎 お題:団地妻の暴力 制限時間:15分 読者:25 人 文字数:1192字
「あ、おはようございます」「おはようございますぅ、今日も寒いですねえ」 寒いのはそんな格好してるからだろ。とはさすがに言えなかった。 首回りはダボダボなのに臍が 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雷藤和太郎 お題:免れた模倣犯 制限時間:15分 読者:32 人 文字数:1086字
一人の天才が捕まった。 その天才は、持ち前の悪知恵と無節操な善悪の意識によって作りだした独自の方法によって、法の目をかいくぐり、人々の憎悪をいなし、あらゆるマ 〈続きを読む〉