お題:愛と欲望の誤解 制限時間:15分 読者:47 人 文字数:921字

狭隘
「僕は、愛というものがよく分からないんだ」
 裕二は言った。
「その話は僕にする話なの?」
 健太は動揺を隠せない。
 放課後の健太の部屋は、健太の好きなもので満たされている。部屋の壁一面にカーペットの模様のように並べられているのは美少女やロボットのフィギュアで、ショーケースにポージングされている。それを見た裕二は、開口一番言うのだった。
「健太はさ、この人形を集めるのに、どれだけの情熱を傾けたの?」
 裕二は言葉遣いが独特で、それを理解できる健太は裕二の無二の親友と言ってよい。
「どれだけ、って……まあ結構な額は使っているかな」
 よそ事には目もくれず、健太は自分の欲しいと思うフィギュアに対してお金を支払ってきた。ショーケースを買い、そこに自分が目標とした世界観を作り上げた時、えもいわれぬ達成感を覚えた。最初の達成感を味わうために、健太は次々とショーケースを自分の部屋に増設していき、そこに自分の好きを集め、作り上げていった。
 言わば、彼の部屋の壁は、健太自身の心のパノラマだった。
「僕には、この部屋を作り上げるだけの……愛がないんだ」
「愛、って言われても僕にはよく分からないけど」
 慈しむような顔で、裕二はショーケースに近づく。健太は少しハラハラしたが、裕二の伸ばす手は、ゆっくりとショーケースのガラスを撫でるだけだった。
「鍵がかけてあるんだね」
「一応ね」
 フィギュアは健太の生き方だった。あらゆるものを諦めて得てきた健太の命。それは誰かに触らせるためのものではなく、自分が見るための物。他人に見せてもいいけれど、触れられたくはない物。
「……触ってみる?」
「遠慮しておくよ。変に触ったら壊れそうだ」
 フィギュアならば簡単には壊れない。プラモデルだとちょっとの刺激が大変なことになるかも知れないが。健太はそう思いながら、裕二が遠慮したことに、胸をなでおろしてもいた。
「健太は、人形を愛しているの?」
「さっきも言ったけれど、愛っていうのはちょっとよく分からないな。これは……趣味だよ。僕の人生をかけた趣味。自分の欲しいものを得て、自分の欲しいままに世界を作る。この壁は、僕の世界そのものなんだ」
「世界、ね」
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