お題:激しいあいつ 制限時間:15分 読者:62 人 文字数:1077字

向けられた目
「あいつ、いつもあんな感じなんだぜ」
通り過ぎた廊下からそんな声が聞こえる。
いつもそうなのだ。
この風貌。派手な髪、浅黒い肌。
そんな特異な見た目を持った人間に、学校という空間は少し冷たかった。
皆が奇異な目で見て、そして噂する。
もっと皆も自分も幼かった頃には、そんなことなかったのだと思う。
外見の違いは褒められたり興味を示されたりすることが多かった。
でも、今は違うのだ。
自分のことはよくわかってる。
だからそうやって投げかけられる言葉を無視しながら学校に通った。

学校は、四方を森に囲まれた、そんな田舎にたたずんでいた。
地元の人間しか行かないような、生徒数も少なくほぼすべての人間が顔見知りだった。
だからこそ、一度目立ってしまったら仕方がない。
田舎という環境からか、学校という閉鎖的な状況からか。
地元の名士の一人娘。
そんなお嬢様が外国人と駆け落ちして、その後町に帰ってきたという話はすでに噂として学校中に広まっている。
そんな俺を生んだ母はすでに病気で他界しており、子供の記憶はもうあやふやで顔すらも覚えていない。
それでも記憶にあるのは病床に伏せていたそんな姿であり、あまりいい思い出とは言えないのだ。
周りの大人たちから、嫌がらせを受けるという事はなかった。
いかに娘がバカだろうと、その孫の出来が悪かろうと、親の権力には変わりがない。
それを恐れてか、街を歩けば距離をとられることはあっても、それでも悪意をぶつけられるわけではない。
子供の頃でもなんとなく気が付いていたが、大人というものはやはり頭がいいのだ。
さかしく、こちらを気遣うふりをする。
そんな生活に慣れていた俺は、やはりどこかでねじれてしまったのだろう。

世間の目に慣れて、周りから向けられる眼の意味に気が付くころ。
中学生に上がった時だった。
学校の中でも目立つ、そんな悪ガキに絡まれた。
無視すればよかったのだ。
向こうも本気ではなかったのだろう。ただ、周りの環境が変わったという高揚感からか、彼はこちらに明確な悪意を向けた。
そして、喧嘩になった。中学生の殴り合いの話は、すぐに街に広がった。
ああ、あのバカ娘の出来損ないが、ついに。
母親があれなら子もあれなのか。
そんな話が町中でささやかれた。
言い訳なんてできない。
相手が悪ガキだろうと、出自の大きさはこちらのほうが大きい。
だから話の主役はいつも俺だった。

それからの話は単純だ。
学校での目は、結局が高校に上がっても続き、今もその目にたえている。
明日も結局その目は変わらないのだろう。
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