ユーザーアイコン
お題:傷だらけの笑い声 制限時間:15分 読者:35 人 文字数:855字

記憶のように儚く鮮やかに ※未完

 祖父はレコードが好きだった。
 若い頃は歌うことも好きで、ほんのひととき、歌手として活躍したこともあったらしい。祖父の家には、その頃の古いレコードが何十枚も眠っていて、暇を持て余した孫の遊び相手として大いに役立ってくれた。レコードプレイヤーの使い方を教えてくれたのも祖父だった。しわがれた祖父の声と、若かりし頃の祖父の歌声とを同時に聴くのは何とも不思議な感じだったが、普段ぶっきらぼうな祖父がこのときばかりは照れ臭そうにはにかむのが面白くて、僕はだんだん祖父のレコードばかり掛けるようになった。

 なんだおまえ、おれのファンなのか、と素っ気なく聞かれたあのとき、たとえ嘘だとしても肯定の即答を返せなかったことを、今更ひどく申し訳なく思う。

 祖父が死んだ後、行き場のないレコードたちは、リサイクル業者に回されることになった。祖父の趣味に唯一接点があった身として、立会いには僕が呼ばれた。ほとんどは二束三文の値にもならなかった。祖父が歌っているレコードなどは特に、処分費用を請求されるほどの有様だった。祖父が所属していたグループの名前を知っている人間なんてもう居ないだろうから仕方ないと言えば仕方ないのだが。

 これは買取除外品です、と残されたレコードの群の中に、ラベルもジャケットも無い、裸のレコードが一枚あった。一目見て、それが、再生することを祖父に止められたレコードだと思い出した。結局、祖父の存命中、一度も聴くことはなかった。表面は既に傷だらけで、再生しようとすればひどい音になることが見ただけでも分かる。それは祖父の歌を録音したレコードの、いわばNG版、試しにプレスした後で雑音が入っているからと廃棄されたレコードであるとだけ聞いていた。
 何が入っているのかと聞けば、メンバーの笑い声が、と言う。
 歌っているときに、なにかの拍子で、全員が笑い出してしまったのだそうだ。本当かどうかはわからない。どうか再生しないでくれと祖父は言っていた。この数十年、あまりにも繰り返し聞きすぎて、これ以上は
作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
ふたりぼっち ※未完
作者:霜降奏@小説家志望 お題:傷だらけの笑い声 制限時間:1時間 読者:242 人 文字数:2125字
「助けて」と自由に言えれば、どれだけ苦しみから解放されるだろう。 私は今日も、助けて、と言えない代わりに、偽りの笑い声をあげる。 学校とは、特に小学校、中学校 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ふす お題:小説家の悪魔 制限時間:15分 読者:12 人 文字数:471字
私は売れない作家だ。どんな作品を書いたって評価は同じ「普通」「どこかで見たことある」「なんか惜しい」私の作品は売れない。それでも私が売れないものを書き続けるのは 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:佐藤りーまん お題:運命の秋雨 制限時間:15分 読者:8 人 文字数:511字
現在:結合の逆 生き別れの兄弟 弟主人公過去:寛容の逆 厳しい家庭で育つ近未来:調和の逆 兄弟は再会するが、敵対関係だった援助:信頼 弟の恋人敵対:慈愛 肉親の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:いしゅと お題:気持ちいい彼女 制限時間:15分 読者:11 人 文字数:1058字
高校の図書室で司馬遷の『史記』を読んでいると、同じクラスの志麻英菜に声をかけられた。「また難しい本を読んでるの?」からかうような口調だが、不思議と嫌みがない。秀 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
告白 ※未完
作者:匿名さん お題:オレだよオレ、ピアノ 制限時間:15分 読者:5 人 文字数:550字
私は大手経済新聞のベテラン記者だ。今日は、歴史に名を残す楽器が数多く展示している国立の博物館の取材に来た。 また、この博物館の館長は女性だ。この業界では世界初 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:絶望的な同性愛 制限時間:15分 読者:8 人 文字数:409字
不知道为什么会抽到这样的题目。因为心情非常低落,所以才打开即兴小说的网站。想着如果打开时限,跳进一个远离现实的主题故事,应该就会没有任何烦恼了吧。可是题目却像是 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
喫茶 ※未完
作者:匿名さん お題:紅茶と川 制限時間:15分 読者:2 人 文字数:356字
ティータイムはどの国にも必ずあると言っても過言ではない。お茶の種類こそ違うものの、茶を楽しむ時間は、その国の文化を垣間見ることができる。 ある国を旅していた時 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:R お題:いわゆる内側 制限時間:15分 読者:17 人 文字数:411字
こんにちは、コミュ障です。このたび、私の自己紹介の場を与えてくださったことに感謝します。私は、地方のありきたりな県庁所在地に生まれました。四車線道路の脇には、チ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
バカげてるぜ ※未完
作者:匿名さん お題:見知らぬ稲妻 制限時間:15分 読者:4 人 文字数:172字
やあ、おれはきょうと言う、え?適当だって?しゅうがないだろ、まあとりあえず冒険に行こうかないやなんでそうなったしとこ皆思うだろうな(笑)いやまあ実際適当だけど、 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:あさ津 お題:重い天使 制限時間:15分 読者:6 人 文字数:1185字
起きると庭で天使が伸びていた。 よく宗教画で見るあれだ。そこそこの長身で、金色の髪はふわふわと波打っていた。 昨日芝を刈ったばっかりのうちの庭は草いきれでむん 〈続きを読む〉

の即興 小説


ユーザーアイコン
作者: お題:暗い心 制限時間:15分 読者:34 人 文字数:758字
火傷だらけの鬼がひとり、森を歩いてゆく。 その晩は新月で、鬼にとって幸いなことに、今にも雨を降らしそうな厚い雲が夜空をみっしりと埋めていた。風も重く、優しく、 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: お題:孤独な黒板 制限時間:15分 読者:40 人 文字数:690字
その日、登校すると、黒板には暴言が描き殴ってあった。私の名前と一緒に。およそ板書にはそぐわない、たった数文字で黒板の端から端までを埋めてしまうほどの、大きくて 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: お題:3月の動揺 制限時間:15分 読者:40 人 文字数:743字
最近ちょっと困っていることがあって、と、二百年ぶりに再会した旧友は挨拶もそこそこに口火を切った。 最近と言ったって、私たちの尺度のことだ、どうせ三百年以内の出 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: お題:セクシーな善人 制限時間:15分 読者:40 人 文字数:377字
新宿何とか丁目の細い裏路地、丑三つ時の間だけ、とある地縛霊が人生相談所をやっているらしい。しかも、実に盛況であるらしい。先週の土曜は十人以上の大人たちが寒空の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: お題:当たり前の木 制限時間:15分 読者:41 人 文字数:456字
裏山に佇む一本の白樺が、私の神様だった。 いつから信仰心を抱くようになったのかは覚えていない。物心ついた頃にはもう、裏山で遊びまわった帰り道に、白樺に手を合わ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: お題:戦争と絶望 制限時間:15分 読者:53 人 文字数:861字
どうも私は気が狂っているらしく、ふたつの時間を交互に生きている。 現在と100年後の世界、と言うべきか、100年前と現在の世界、と呼ぶべきか、いまいち判断が付 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: お題:静かな傘 制限時間:15分 読者:45 人 文字数:782字
不思議ではあるけれど、何の役にも立たない代物、というのが世の中にはそこそこ存在する。 祖父から譲り受けたこの傘も、そんな代物のひとつだった。祖父もまた知り合い 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: お題:傷だらけの笑い声 制限時間:15分 読者:35 人 文字数:855字
祖父はレコードが好きだった。 若い頃は歌うことも好きで、ほんのひととき、歌手として活躍したこともあったらしい。祖父の家には、その頃の古いレコードが何十枚も眠っ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: お題:有名な消費者金融 制限時間:15分 読者:46 人 文字数:800字
名前を粗末に扱ってはいけない、というのは、魔法使いでなくても知っているこの世界の常識である。 名は当人を表す最も短い呪いであり、その名を貶めたり変質させてしま 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: お題:人妻の脱毛 制限時間:15分 読者:47 人 文字数:654字
もともと、自分の容姿に対して卑屈気味なところがある人だ、とは解っていた。 私から見れば輝かしいほどの服装センスも、ドレッサーを埋め尽くす化粧道具も、まめまめし 〈続きを読む〉