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お題:傷だらけの笑い声 制限時間:15分 読者:59 人 文字数:855字

記憶のように儚く鮮やかに ※未完

 祖父はレコードが好きだった。
 若い頃は歌うことも好きで、ほんのひととき、歌手として活躍したこともあったらしい。祖父の家には、その頃の古いレコードが何十枚も眠っていて、暇を持て余した孫の遊び相手として大いに役立ってくれた。レコードプレイヤーの使い方を教えてくれたのも祖父だった。しわがれた祖父の声と、若かりし頃の祖父の歌声とを同時に聴くのは何とも不思議な感じだったが、普段ぶっきらぼうな祖父がこのときばかりは照れ臭そうにはにかむのが面白くて、僕はだんだん祖父のレコードばかり掛けるようになった。

 なんだおまえ、おれのファンなのか、と素っ気なく聞かれたあのとき、たとえ嘘だとしても肯定の即答を返せなかったことを、今更ひどく申し訳なく思う。

 祖父が死んだ後、行き場のないレコードたちは、リサイクル業者に回されることになった。祖父の趣味に唯一接点があった身として、立会いには僕が呼ばれた。ほとんどは二束三文の値にもならなかった。祖父が歌っているレコードなどは特に、処分費用を請求されるほどの有様だった。祖父が所属していたグループの名前を知っている人間なんてもう居ないだろうから仕方ないと言えば仕方ないのだが。

 これは買取除外品です、と残されたレコードの群の中に、ラベルもジャケットも無い、裸のレコードが一枚あった。一目見て、それが、再生することを祖父に止められたレコードだと思い出した。結局、祖父の存命中、一度も聴くことはなかった。表面は既に傷だらけで、再生しようとすればひどい音になることが見ただけでも分かる。それは祖父の歌を録音したレコードの、いわばNG版、試しにプレスした後で雑音が入っているからと廃棄されたレコードであるとだけ聞いていた。
 何が入っているのかと聞けば、メンバーの笑い声が、と言う。
 歌っているときに、なにかの拍子で、全員が笑い出してしまったのだそうだ。本当かどうかはわからない。どうか再生しないでくれと祖父は言っていた。この数十年、あまりにも繰り返し聞きすぎて、これ以上は
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