お題:プロの墓 制限時間:15分 読者:36 人 文字数:738字
[削除]

湿った弾丸
 ある男が死んだ。
 何も残せず、何も果たせず。
 ただ冷たい石の下、地面から6フィート下で物言わぬ躯となって埋葬された。
 墓に刻まれた名と生没年以外、彼が何者かを知る術は今はもう存在しないだろう。

 重く冷たい雨が傘を叩く。吐く息は、冷たい。無機質で陰鬱とした雨模様。
 だが私と彼の生死を分けたあの日の暖かく軽い雨と比べれば、まだ有情と言えよう。

 その道で名を馳せたであろうプロフェッショナルたる彼は雨によって殺された。
 彼が仕損じた最後の仕事のターゲットである私は雨によって生かされた。


 線香代わりと言い訳をしてタバコに火をつけ、重い煙を肺いっぱいに吸い込み、猥雑に捻れた思考を平坦にしようと軽い酸欠状態へと自分を貶める。

 あの日……
 照りつけるような夏の日差し、フライパンのように熱せられたアスファルト。
 スコープの十字線と私の顔が重なる直前に突如降り出した天気雨は地面にぶつかった端から蒸発し湿度を急上昇させ弾丸に予期せぬ抵抗をもたらした。
 恐らく名うてのスナイパーであっても神が気まぐれに降らした雨までは計算できはしなかったのだ。
 放たれた弾丸はまだらな湿気の分布と回転の力とで不規則な弾道へと歪められ、私に穴を穿つこと叶わず。彼が厳重な警戒態勢の中で持ち込めたただ一発の銃弾と杖に偽装した狙撃銃はその役割を果たせず。

 私の死に起因する混乱に乗じて逃げ出す、そんな算段もまた機能せず。
 駆けつけたシークレットサービスに容赦なく、贅沢なまでの数の銃弾を打ち込まれ彼は死んだ。


 後の捜査で彼のおおよその正体はつかめたが。結局、それが限界だった。
 あるプロは、そのおぼろげな正体の秘密を抱いたまま、石の下で延々に黙秘を続ける……
この作品をツイート

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:ぽつタイプライター お題:おいでよ撃沈 制限時間:15分 読者:13 人 文字数:965字
「犯人が分かりました。リビングに集まってください」 意気揚々とリビングにやってきたが、まだ誰も集まっていなかった。 5分経っても、10分経っても、人っ子一人やっ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:アリス@ドイツ&ウィーンへ行く お題:穢された何でも屋 制限時間:15分 読者:13 人 文字数:1320字
なんでもするよ、というのが口癖の少年と少女がいた。 ボロ布のような布をまとっているわけでも、飢えて困っているふうでもない、いたって普通の少年と少女が、駅前で、 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:夏野 千尋@低浮上 お題:遅いカラス 制限時間:15分 読者:1 人 文字数:959字
真新しいスニーカーを、睨み付ける女の子がいた。 僕はそのスニーカーが羨ましかった。僕のうちは貧乏だ。お父さんがいないし、お母さんも、せーしゃいん、じゃない、ぱ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:にい お題:イタリア式の教室 制限時間:15分 読者:8 人 文字数:752字
転校生への洗礼は、まず顔面ピザ投げだ。生徒の机には各種チーズが常備されていて、給食のピザの際は好きなだけ追いチーズができる。サラミやらバジルやらお好みのトッピ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:にい お題:箱の中の国 制限時間:15分 読者:7 人 文字数:765字
昔から関節がやわらかいのだけが自慢で、体を折りたたんでトランクケースに入る遊びをしていたら、はずみで留め金が閉じてしまった。内側からは開けられず、外からはなん 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
作者:金魚 お題:計算ずくめの任務 制限時間:15分 読者:11 人 文字数:1152字
木曜日はいつも七時四十三分にここを通る。私は腕時計の秒針を見ながら、心の中でそれを確認する。「がんばれ、がんばれ……」 小声で自分を励ましながら、肩にかけた鞄 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:いちご お題:オチはババァ 制限時間:15分 読者:6 人 文字数:404字
「大学生とかうちらからしたらマジでババァだよね」「わかるー」 電車でスマホをいじっていると、甲高い声が聞こえてきた。ちらと見ると、女子高生だと思われる女の子3人 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ハッサクリーフ(マイン倶楽部) お題:混沌の検察官 制限時間:15分 読者:11 人 文字数:521字
私の名前は溝口淳博、検察官をしている。裁判に勝つためにはどんな手を使っても勝たなければいけない。被告人のプライベートを洗いざらいぶちまける事から私は【混沌の検察 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:夢路 お題:熱いサラリーマン 制限時間:15分 読者:2 人 文字数:439字
「おはよう!今日もいい日だな!」 今日も鼓膜を震わせる大声のあいさつが聞こえた。 おはようございます、と返す。 声の主は目から炎でも出ているかのように煌めかせ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:びお~ら お題:日本怒り 制限時間:15分 読者:10 人 文字数:609字
「フォッサマグナ、ってなんだっけ」「あ〜、なんか地理でやった気がしないでもない」「日本のおへそじゃなかったっけ」「いや違う、なんか日本をふたつに分断してる裂け目 〈続きを読む〉

匿名さんの即興 小説


ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:ひねくれた天国 必須要素:干支 制限時間:30分 読者:0 人 文字数:1103字
天国。その単語を聞いてあなたが想像するのはどんな場所だろうか。綺麗で、荘厳で、高貴で、尊い。あるいは痛みも、苦しみも、悲しみも、辛いことはなにもない。だいたいは 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:紅茶と王子 制限時間:15分 読者:0 人 文字数:568字
ボーンボーンボーン柱時計が鳴る。先輩のもとを訪ねたのはたしか2時頃だったのでかれこれ一時間はいる計算だ。「おや、もう3時か。お茶でもどうだい?」疑問系だが実際の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:漆黒の闇に包まれしサイト 制限時間:15分 読者:3 人 文字数:277字
検索に出てこないサイトがあるらしい。検索しても出てこないから、口コミで存在が噂になっている。誰かに教えてもらわないとサイトの場所がわからないことから、ある意味 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:どす黒い恨み 制限時間:15分 読者:2 人 文字数:230字
首に手を掛ければ、ひゅっ、と喉が鳴った。自分がしでかしたことだと言うのに、これほどの恨みを買うとは思わなかったのだろうか? ほんと、反吐が出る。「……いいわ、 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:遅いカラス 制限時間:15分 読者:13 人 文字数:622字
10/20(土) 曇りのち雨今日は買い物へ行った。2分ほど歩いた先のコンビニだ。2分といっても、僕の家から2分という意味ではない。家から徒歩4、5分先にある電柱 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:捨てられたマンション 制限時間:15分 読者:13 人 文字数:419字
街の外れ、小高い山の中腹あたりに1棟のマンションが建っている。私が小さな頃に不正が発覚し、住人は立ち退き。結果としてマンションは捨てられた。正面にあるこの坂から 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:刹那の希望 制限時間:15分 読者:4 人 文字数:560字
「きっとこれだ。間違いない」息を弾ませながら、僕は白い花にそっと触れた。ポケットの情報端末に入っている画像と何度も見比べ、ついに目的の植物を発見した。秘境のよう 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:彼女と動機 必須要素:つけ麺 制限時間:15分 読者:3 人 文字数:900字
無性にラーメンが食べたくなる時がある。 理由が本当にない。ただ食べたいとだけ思い、頭からラーメンが離れない時がある。 それもただのラーメンが食べたいとかじゃな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:死にかけの娼婦 必須要素:文を動詞の現在形で終わらせない 制限時間:15分 読者:5 人 文字数:163字
顔のない男と目が合った。顔もないのにどうやって目を合わせられるんだ、と思うかもしれないが、たしかに目が合ったのだ。 僕は体を熱くし、全身を作り変えられるのを直に 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:簡単な水たまり 制限時間:30分 読者:4 人 文字数:671字
「水たまりの調査ぁ?」冒険者ギルドに素っ頓狂な声が響く。声を上げた男、ガイは向かいの席に座る相棒の持ってきた依頼書をまじまじと見直した。そこには水源のない洞窟内 〈続きを読む〉