お題:俺は映画館 制限時間:30分 読者:13 人 文字数:623字

夢を覚ましたのは、彼の夢だった
結局俺は何やっているんだろう。

俺は今、自分が働く映画館の事務所で経営者として座っている。毎日、PCの前で同じ事務作業をこなす日々を繰り返していた。映画が好きで、いつかは映画監督になりたいと思っていた。小学生からの夢。気がつけば36歳で、映画館で仕事をしてた。小学生の時、同級生の柏木仁志は、今、この映画館で上映されている作品を手がけた。大ヒットしているわけではないが、赤字にはならないだろう。彼のデビュー作だ。この作品が、この映画館で上映されると聞いた時、一気に忘れかけていた記憶が蘇ってきた。一緒に、同じ夢を見て、いつかは、日本のジョージルーカスとスティーブンスピルバーグのようになろうと語りあった。高校へ進学するのと同時に疎遠になった。

彼は夢を追いかけていたのだ。
その間、俺は逃げていた。高校の時は、映画をたくさん見た。小説もたくさん読んだ。大学に入って、映画館でバイトをし、何となく、好きなことに近い事をしていると、そう思って・・・ 勝手に僕は、良しとしてしまった。現実、そういうものだろうと、自分を肯定していた。映画を作る何んて、別の世界の、才能溢れた特別な人間が作るものと感じていた。柏木は、そういう人間だった。

馬鹿だ、俺は。

柏木仁志は、普通の人だ。選ばれた特別の人間ではない。自分に正直な柏木は信じるがまま進み、俺は何もしなかった。あんなに身近な奴が、夢叶えられちゃうとな。
可能なんだな、夢はいつか叶うものだと。
作者にコメント

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