お題:蓋然性のある感覚 制限時間:15分 読者:34 人 文字数:1144字

筑波くんは感覚でわかる人
「大体のことは感覚でわかるんだ」
 筑波くんはよくそう言うが、学校の成績は良くない。感覚でわかるんじゃないのかよ、と言うと「こういうのは勝手が違うから」と言い訳する。
 じゃあスポーツがすごいのか、と言えばそういうわけじゃない。すごくできない、ということではないが、万能からは程遠い。テニスのラケットを手に首を傾げる筑波くんに「感覚でわかるでしょ」と言うと、やっぱり「これも勝手が違う」という。
 何がじゃあわかるんだよ。芸術方面に才能があるわけでもない。「ピアノも感覚で弾けるだろ」とか、「絵や彫刻も感覚でできるだろ」と振っても、「こういうのは練習や積み重ねが大事だから」と逃げてしまう。
 本当にお前、何なんだよ。じゃあ何で毎日毎日、挨拶のように「大体のことは感覚でわかるんだ」とか言ってくるんだよ。僕は若干、この高校に入ってからできた友人に苛立っていた。

 ある時、僕はソーシャルゲームにはまった。ものすごく流行ったタイトルで、なんだけど所謂「ガチャ」の確率が渋い。渋い上に、何枚も同じキャラを手に入れないと強化できない仕組みで、みんな躍起になって回していた。
 僕は高校生だから、ガチャ課金も我慢するの。そう思っていたけれど、どうしても欲しいキャラがいて、そのキャラのピックアップ(ガチャでの排出確率が上がるイベント)の時に遂に課金を決意した。
 お年玉を使い、グーグルプレイカードを買って、「いざ」という時に、筑波くんからLINEが入る。
「今は止めといた方がいい」
 その一言が画面に通知される。
「感覚でわかるんだけど、今ガチャ回そうとしてるだろ?」
 僕はゾッとした。一瞬監視カメラの存在を疑ったが、ありえないと打ち消す。
「さっきコンビニでグーグルのカード買ってたの見た」
 追いかけでメッセージが来て、「ああ」と僕は納得する。近所のコンビニで買うのは何となく気恥ずかしく感じて、ちょっと遠いところまで行ったのだが、そういえばあの辺りに筑波くんは住んでたのだった。
 ……って、全然感覚じゃないじゃないか。
 そう送り返すと、「感覚がするのはそこじゃない」と返信がくる。
「俺の感覚だと、午後10時ごろがいいだろう」
 突然そんなことを言い出す。今は午後7時だから結構間がある。
「今まで黙っていたが、俺が『確からしい』とわかるのは、ガチャとか宝くじとか、そういうのが当たる感覚なんだ」
 本当かよ、と僕は疑った。しかし、筑波くんは譲らない。
「午後10時、多分3分から5分ごろ。その辺で回せ」
 それ以上は返事がなかった。
 まあ、新しい「ガチャ宗教」だ、と思って僕はその通りにした。
 すると、最レアが出た。出たのはいいのだが、ピックアップじゃないすり抜けだった。
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