お題:知らぬ間の足 制限時間:15分 読者:65 人 文字数:1162字

人が怖い、人より怖い
 中学二年生の松田トシキは、ある夏林間学校で山奥のロッジに泊まった。
 クラスメイト達と雑魚寝をしていたのだが、深夜尿意を覚え、目が覚めてしまう。
 不便なことに、ロッジの中にはトイレがない。山道を降りたところに炊事場があって、そこに仮設トイレがあるだけだ。
 トシキは隣で寝ている友達のツトムを起こそうと思ったが、ピクリとも動かずに寝ている彼を起こすのは忍びないと思い、一人で外に出た。
 別に炊事場まで下りなくとも、とトシキは夜闇の中考える。どこかの藪に向かって立小便をしてもバレまい、と思いついた。そうして山道の横道に入り、木の陰で用を足す。
 し終った頃に、ふと木の向こうに何者かの気配があることに気が付いた。
 こっそりと覗き見、トシキは青ざめる。
 そこにいたのは、頭にライトを二本刺した鬼気迫る形相の女だったのだ。女の手には、木槌と五寸釘、そして藁人形が握られている。
 丑の刻参りだ。
 トシキはかつてホラーマンガで読んだ知識を思い返す。
 丑の刻参りは、決して見られてはいけない。見られると、かけた呪いが自分に返ってしまうから。だから、目撃者を殺さねばならないのだ。
 気付かれたら殺される。トシキは急いでその場を離れようとする。
 その時、足元で大きな音が鳴った。
 枝を踏み砕いてしまったのだ。
 丑の刻参りの女が、鬼の形相でこちらを見た。
 目が合う。
 一瞬の静寂の後、トシキは悲鳴と共に逃げ出した。
 一方の女は、一瞬呆気にとられたものの、すぐに我に返って「待て!」とトシキの後を追う。

 這う這うの体で、トシキはロッジに帰りつく。すぐさま自分の布団に入り、ガタガタ震えた。
 まさか、ここまで追っては来ないはず……。
 が、その期待を無情にも砕く音がした。ロッジの玄関が開いたのだ。
 しまった、鍵をかけておけばよかった。
「寝ていた者は、足が暖かい。起きていた者は……」
 女の低い声が響く。他の者は起き出さない。みんな寝入っている。
「違う……」
 女は玄関に近い方から順に、布団の中に手を入れている。
「違う……」
 トシキがいる布団は、玄関から数えて四番目だ。
 すぐに順番が来る。女の衣擦れの音が迫る。今に、トシキの隣、ツトムの布団に手を……。
「違……!?」
 きゃあ!? と女は大きな悲鳴を上げた。
 さすがにその声で他のクラスメイトが起き出す。女は慌ててロッジを出て行った。
 何だ、何だとクラスメイトたちが騒ぐ中、トシキは生きた心地がしなかった。
 蒼い顔をしていると、同じく蒼い顔のツトムが話しかけてきた。
「なあ、俺の隣にずっと、青白い顔の女が寝てたんだ。それが、さっき何かが布団の中に手を入れて来て、それにさわって逃げ出したんだ……」
 幽霊と鈍い画家hし合ったのだ。
作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:矢水びん お題:憧れの食器 制限時間:15分 読者:8 人 文字数:679字
光が一粒もない暗闇の中を、さまよい続けてどれくらいの時間がたったのだろう。 なにせ、ここには昼夜がない。朝日もなければ月もない。 ただただ、暗闇があるだけだ。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
子供の帝王 ※未完
作者:イグモ お題:子供の帝王 制限時間:15分 読者:8 人 文字数:454字
あの厄介な男が僕の前に現れたその日、僕は鬼川原公園の砂場で黙々と城を作っていた。この公園は僕の通う鬼川原小学校の学区であり、すなわちそれは我ら鬼川原小3-2組の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:Frannie お題:急な死 制限時間:15分 読者:17 人 文字数:243字
女は少年を押し倒すと、彼の服を剥いだ。そうして露わになったのは、当然、まだ幼い少年の身体である。女は狂ったように、まだ女を知らない少年の身体を愛撫する。少年は 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:強いカップル 制限時間:15分 読者:3 人 文字数:500字
それは…ある夜のことだった……ドゴォォォン!!爆音が鳴り響いたぐっ!?僕は一瞬で気絶してしまった…???「キョウスケ…キョウスケ!」自分を呼ぶ声がした、彼女のミ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
現を忘れて ※未完
作者:akari お題:意外!それは朝日 制限時間:15分 読者:10 人 文字数:275字
――……嘘でしょ。 愕然とした。今の状況が信じられない。目の前のブラックスクリーンに映る私の顔にはキーボードの痕がくっきり残っている。時計なんて見たくない。け 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
作者:にい お題:熱い家事 制限時間:15分 読者:17 人 文字数:779字
火傷に関しては怪我のうちに入らない。スパルタだった母の教えで、娘たちはどれも台所にいる限り、恐れを知らなかった。炒めていたチャーハンごとフライパンが燃え上がろ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
文字の戦争 ※未完
作者:かの歌 お題:小説の中の戦争 制限時間:15分 読者:10 人 文字数:261字
私は今小説の中にいる。小説を読んでいたら突然、小説の中に入ってしまったのだ。しかも読んでいた小説のジャンルは戦争ものだった。 異世界に入り込んだ私はある違和感 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:うわ・・・私の年収、年賀状 制限時間:15分 読者:3 人 文字数:440字
日々を世話し玖珠ごて年末年始さえも忙殺されたあとに一通届けられた年賀状は、現在のわたしの窮状を笑うものであった!いいだろう!このような年賀状を送りたいのなら送 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
尾ける男 ※未完
作者:イグモ お題:女のアパート 制限時間:15分 読者:12 人 文字数:285字
ふと魔が差して、通りすがりの女を家までつけてみた。一抹の罪の意識がないわけではない、むしろその罪の意識こそ、万事が平和な、窮屈極まる日曜日の午後に少しのスリルと 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:1000の神話 制限時間:15分 読者:5 人 文字数:244字
「あなたは、どれくらい有名な人なの?」「そうだなー……」 質問を受けた青年は、動くたびに周囲をキラキラと輝かせながらうーんと考えた。「僕は人気者だからね……10 〈続きを読む〉

雨宮ヤスミの即興 小説


ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:光のテロリスト 制限時間:15分 読者:19 人 文字数:1085字
「光はこの世のすべてのものを等しく照らし出す。闇はあってはならない」 そんな教えを掲げる「世之光統一教」を名乗る集団が、各地に見られるようになった。「この世には 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:昨日食べた王子 制限時間:15分 読者:16 人 文字数:1242字
成田って苗字だったので、そいつは「ナリキン」とか「王子」とかって呼ばれていた。 家が会社をやってて、お父さんが社長で、甘やかされて育ってきたんだな、と思わせる 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:腐ったライオン 制限時間:15分 読者:11 人 文字数:1095字
郊外に建つとある研究所に、ある夜雷が落ちた。 その衝撃で誕生したのが、ゾンビライオンである。 実験動物として秘密裏に飼育されていたこのライオンは、研究所に買い 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:あいつの薔薇 制限時間:15分 読者:22 人 文字数:1364字
木崎くんは常に、制服の胸ポケットにバラを差している。 わたしはそれが気になってならないのだが、誰に言ってもおかしな顔をされる。 「そんなのしてないよ」というの 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:赤い食卓 制限時間:15分 読者:23 人 文字数:1106字
「今日のお夕飯は、ナポリタン、エビのチリソース炒め、そして冷やしトマトよ」 私の妻は、赤い料理しか作れない。 料理自体はうまいのだが、何の縛りプレイなのか、宗教 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:夜のぷにぷに 必須要素: 制限時間:1時間 読者:26 人 文字数:2291字 評価:2人
唐田は最近機嫌がいい。 「大学一年の春学期の間に恋人ができなければ、一生恋人はできない」なんていう大学内の噂を真に受けて、この世の終わりみたいな顔をしていた十 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:セクシーな風 制限時間:15分 読者:17 人 文字数:1070字
近所にある「越智ヶ台」には、セクシーな風が吹くとされていた。 セクシーな風って一体何だよ、と思うのだが、要はスカートがめくれるくらいに強い風らしい。 中学に上 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:冬の広告 制限時間:15分 読者:15 人 文字数:1181字
一面の銀世界、バケツを被り墨で顔の作られた雪だるま、お盆に載った南天の目をした雪うさぎ、入り口から暖かそうな光の漏れるかまくら、斜面を滑るソリと雪合戦……。「 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:斬新な目 制限時間:15分 読者:21 人 文字数:1316字
才能はないけれど、最強の格闘家になりたい。 小岩シズオはその思いが高じて、とある研究所の門を叩く。 非合法の人体改造手術を手掛けているというそこで、シズオはい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:バイオ地獄 制限時間:15分 読者:37 人 文字数:1363字
新規のバイオマス燃料を作った、とテンサイ博士が言い出したので、見に行くことにした。 テンサイ博士は、自称では「天才」で、なるほど確かに現代の科学技術を超えるよ 〈続きを読む〉