お題:ワイルドな感覚 制限時間:15分 読者:139 人 文字数:1202字

人の好き好き
 大鷺高校の真倉エミリは、部活動として自ら創作した紙芝居を近隣の保育園や幼稚園、図書館などで読み聞かせしている。
 ただ、その内容があまりに皮肉に満ちていたり、子どもに聞かせたくないような内容だったり、要するに「黒い」ことで有名だった。一部からは称賛の声もあったが、近年は「リアルエルサゲート」などとも批判されている。
「また、新しい紙芝居を作ろうと思うんだけど」
 そういうことなので、エミリの友人で紙芝居の絵を担当している美術部員の七條露子は、彼女のことが心配になっていた。
「いいけどさ、今までみたいな内容だったら、あたし絵を描かないよ?」
「じゃあ別の人に頼むから、とりあえず考えた話を聞いてくれる?」
 こいつに心配は通用しない。一言交わしただけで、露子は悟ってしまった。むしろ、「自分がエルサゲートのはじまり」とでも言い出しかねない人間だった。
「わかった。じゃあ、聞いて判断するわ」
「ええ、それでは昔々……」
 エミリは話し始めた。

 あるところに漁師がいて、その漁師は嵐の夜に人魚を助けた。
 漁師の村では「人魚は魔物だ」と恐れられていたが、若いその漁師は美しい人魚に惚れてしまい、誰も来ない入り江の岩かげに彼女を隠し、怪我が治るまで保護しようとした。
「意外と普通ね」
 ここまでは、と内心で露子は付け加える。
「あら、普通の話しかしていないわよ」
 とぼけてみせてから、エミリは続ける。
 嵐の翌日、漁師は人魚に「何か食べたいものはないか」と尋ねた。人魚は上半身が魚で、下半身が人間だったので……。
「待って、待って……!」
「どうしたの?」
「今何かおかしかった気がするんだけど、もう一回言ってくれる?」
 嵐の翌日、漁師は人魚に「何か食べたいものはないか」と尋ねた。人魚は上半身が魚で……。
「はい、おかしい」
「どこがかしら?」
「上半身が魚って、半魚人じゃん!」
 しかも、漁師は「美しい人魚に惚れた」はずだ。これでは、魚の頭の女に惚れたことになってしまう。
「そうだけど、何かいけないの?」
「いけないでしょ、普通は上半身が人間で下半身が魚なのが人魚でしょ?」
「でも魚の頭を愛するがゆえに漁師になった、って人だから……」
「それはそれでヤバいでしょ!」
 ともかく、とエミリは話を続ける。
 人魚は漁師に「カニが食べたい」と言った。漁師は急いでカニをとってきた。
 漁師がカニをゆでようとすると、人魚は名状しがたい素早い動きで漁師の手からカニを奪取し、そのまま甲羅ごとバリバリ噛み砕いた。
「そう、人魚はサメの人魚だったの」
「サメの人魚だったの、じゃないでしょ!」
 その姿を見た漁師は千年の恋も冷めてしまい、村人に人魚のことを通報、殺してしまった。
「めでたし、めでたし」
「いやいや……」
 人の好みという「エゴ」がぶつかり合う、というお話よ。エミリは笑った。
作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:矢水びん お題:憧れの食器 制限時間:15分 読者:6 人 文字数:679字
光が一粒もない暗闇の中を、さまよい続けてどれくらいの時間がたったのだろう。 なにせ、ここには昼夜がない。朝日もなければ月もない。 ただただ、暗闇があるだけだ。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
子供の帝王 ※未完
作者:イグモ お題:子供の帝王 制限時間:15分 読者:8 人 文字数:454字
あの厄介な男が僕の前に現れたその日、僕は鬼川原公園の砂場で黙々と城を作っていた。この公園は僕の通う鬼川原小学校の学区であり、すなわちそれは我ら鬼川原小3-2組の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:Frannie お題:急な死 制限時間:15分 読者:17 人 文字数:243字
女は少年を押し倒すと、彼の服を剥いだ。そうして露わになったのは、当然、まだ幼い少年の身体である。女は狂ったように、まだ女を知らない少年の身体を愛撫する。少年は 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:強いカップル 制限時間:15分 読者:3 人 文字数:500字
それは…ある夜のことだった……ドゴォォォン!!爆音が鳴り響いたぐっ!?僕は一瞬で気絶してしまった…???「キョウスケ…キョウスケ!」自分を呼ぶ声がした、彼女のミ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
現を忘れて ※未完
作者:akari お題:意外!それは朝日 制限時間:15分 読者:10 人 文字数:275字
――……嘘でしょ。 愕然とした。今の状況が信じられない。目の前のブラックスクリーンに映る私の顔にはキーボードの痕がくっきり残っている。時計なんて見たくない。け 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
作者:にい お題:熱い家事 制限時間:15分 読者:17 人 文字数:779字
火傷に関しては怪我のうちに入らない。スパルタだった母の教えで、娘たちはどれも台所にいる限り、恐れを知らなかった。炒めていたチャーハンごとフライパンが燃え上がろ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
文字の戦争 ※未完
作者:かの歌 お題:小説の中の戦争 制限時間:15分 読者:10 人 文字数:261字
私は今小説の中にいる。小説を読んでいたら突然、小説の中に入ってしまったのだ。しかも読んでいた小説のジャンルは戦争ものだった。 異世界に入り込んだ私はある違和感 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:うわ・・・私の年収、年賀状 制限時間:15分 読者:3 人 文字数:440字
日々を世話し玖珠ごて年末年始さえも忙殺されたあとに一通届けられた年賀状は、現在のわたしの窮状を笑うものであった!いいだろう!このような年賀状を送りたいのなら送 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
尾ける男 ※未完
作者:イグモ お題:女のアパート 制限時間:15分 読者:12 人 文字数:285字
ふと魔が差して、通りすがりの女を家までつけてみた。一抹の罪の意識がないわけではない、むしろその罪の意識こそ、万事が平和な、窮屈極まる日曜日の午後に少しのスリルと 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:1000の神話 制限時間:15分 読者:5 人 文字数:244字
「あなたは、どれくらい有名な人なの?」「そうだなー……」 質問を受けた青年は、動くたびに周囲をキラキラと輝かせながらうーんと考えた。「僕は人気者だからね……10 〈続きを読む〉

雨宮ヤスミの即興 小説


ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:光のテロリスト 制限時間:15分 読者:19 人 文字数:1085字
「光はこの世のすべてのものを等しく照らし出す。闇はあってはならない」 そんな教えを掲げる「世之光統一教」を名乗る集団が、各地に見られるようになった。「この世には 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:昨日食べた王子 制限時間:15分 読者:16 人 文字数:1242字
成田って苗字だったので、そいつは「ナリキン」とか「王子」とかって呼ばれていた。 家が会社をやってて、お父さんが社長で、甘やかされて育ってきたんだな、と思わせる 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:腐ったライオン 制限時間:15分 読者:11 人 文字数:1095字
郊外に建つとある研究所に、ある夜雷が落ちた。 その衝撃で誕生したのが、ゾンビライオンである。 実験動物として秘密裏に飼育されていたこのライオンは、研究所に買い 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:あいつの薔薇 制限時間:15分 読者:22 人 文字数:1364字
木崎くんは常に、制服の胸ポケットにバラを差している。 わたしはそれが気になってならないのだが、誰に言ってもおかしな顔をされる。 「そんなのしてないよ」というの 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:赤い食卓 制限時間:15分 読者:23 人 文字数:1106字
「今日のお夕飯は、ナポリタン、エビのチリソース炒め、そして冷やしトマトよ」 私の妻は、赤い料理しか作れない。 料理自体はうまいのだが、何の縛りプレイなのか、宗教 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:夜のぷにぷに 必須要素: 制限時間:1時間 読者:26 人 文字数:2291字 評価:2人
唐田は最近機嫌がいい。 「大学一年の春学期の間に恋人ができなければ、一生恋人はできない」なんていう大学内の噂を真に受けて、この世の終わりみたいな顔をしていた十 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:セクシーな風 制限時間:15分 読者:17 人 文字数:1070字
近所にある「越智ヶ台」には、セクシーな風が吹くとされていた。 セクシーな風って一体何だよ、と思うのだが、要はスカートがめくれるくらいに強い風らしい。 中学に上 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:冬の広告 制限時間:15分 読者:15 人 文字数:1181字
一面の銀世界、バケツを被り墨で顔の作られた雪だるま、お盆に載った南天の目をした雪うさぎ、入り口から暖かそうな光の漏れるかまくら、斜面を滑るソリと雪合戦……。「 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:斬新な目 制限時間:15分 読者:21 人 文字数:1316字
才能はないけれど、最強の格闘家になりたい。 小岩シズオはその思いが高じて、とある研究所の門を叩く。 非合法の人体改造手術を手掛けているというそこで、シズオはい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:バイオ地獄 制限時間:15分 読者:37 人 文字数:1363字
新規のバイオマス燃料を作った、とテンサイ博士が言い出したので、見に行くことにした。 テンサイ博士は、自称では「天才」で、なるほど確かに現代の科学技術を超えるよ 〈続きを読む〉