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お題:ロシア式の帰り道 制限時間:15分 読者:56 人 文字数:612字

ロシア式倒置法の階段と怪談

 階段があなたを憎んでいる。気をつけて。
 
 もともと迷信深い方では無い。
 占いなど、ほんの気まぐれ、暇つぶし、好奇心で頼んだだけ。だから、怪しげな占い師が告げたその予言にも、どう反応を返すのが良いのか分からず、私はまごついた。占いと日頃から親しんでいる人間なら、きっとこんな妙な言葉にも、ありがたがってそれらしい意味を見つけられそうなのに。結局、困ったときのいつものくせで、へらりと笑っておく。お礼の口上も述べる。えぇ、そうなんですか、そんなこと分かるんだ、すごいですね。どうもありがとう。さっさと占料を払って立ち去ろうとする私を、占い師は何故だか離さなかった。私の服の裾を掴んでまで。

「ほんとうですよ。信じてないですね、あなた。階段があなたを憎んでいる。それも、その辺の取り留めもない階段じゃない、世界中の階段があなたを憎んでる。あなたが階段を憎んだあの日、小学校の昼休み、掃除道具を、雑巾を絞ったバケツを転がされて、階段に足を踏み外すように仕組まれて、それでもあなたが誰も憎めず、代わりに、こんなところにある階段がいけないんだと、憎しみを引き受けさせられた階段の憎しみが、二十年に渡って静かに積もり続けてきた階段の恨みが、世界中の階段に共有されてあなたを見ている。大変ですよあなた、これは。きっともう、どこにも、帰ることも許されませんよ、あなたの家はいったい何階ですか?」

 私は答えられない。
 



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