お題:何かの王 必須要素:メロンパン 制限時間:15分 読者:122 人 文字数:824字

果汁零パーセント
 わたしはメロンパンの王だ。すべての国、すべての世界線、すべてのとき、すべての時空、ありとあらゆるメロンパンを統べ、ありとあらゆるメロンパンを管理し、ありとあらゆるメロンパンの頂点に立っている。
 クロワッサンの王が、いった。
「メロンパンさん、飲みすぎですよ。」
 カレーパンの女王がいった。
「いくら注意したってむだだよ、クロちゃん。メロンちゃんがクロちゃんのいうこと、聞くはずないもん。飲むなっていえば飲むし、飲めといわれたら飲まない。メロンちゃんはツンデレだから。」
「ツンデレ、ですか。」
「そう。ツンデレ。」
「おいそこ、わたしはツンデレではないぞ。」
「はいはい、酔っぱらいはいつだって、じぶんは酔っぱらっていないっていうもんだよ。ツンデレが、じぶんはツンデレです、なんていったら興ざめ。メロンちゃんはそこのところ、ちゃんと分かっているね。すごい。零点。」
 そういってカレーパンは、小さな手で持っていたグラスを呷った。たしか中身はホワイトレディではなかっただろうか。小ぶりなグラスとはいえ、けっこう中身が残っていたはずだが。
「ざんねんですね、メロンパンさん。零点ですって。」
 わたしの隣の席でちびちび熱燗を呑んでいるクロワッサンが穏やかに笑う。これが漫画だったら、ふふふ、と柔らかい書き文字が付け足されていることだろう。せっかくの飲み会の席だというのにこいつは、かっちりとスーツを着たままで、自慢の眼鏡には曇りひとつない。
 きょうは我々パンの王侯貴族たちがあつまる酒席だった。わたしとクロワッサン、カレーパンは、幼いころおなじ学舎に通っていたため、比較てき気の置けない相手同士だといえる。当時はもうひとり仲間がいたものだが……いや、しんみりするのはやめよう。わたしは思い出を振り払うように、クロ霧島を飲みほした。よ、いい飲みっぷり、とどこかから声が聞こえる。ほら、飲みすぎですって。ちかくでクロワッサンがそういうのが聞こえた。
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