お題:意外!それは伝承 必須要素:クレジットカード 制限時間:1時間 読者:12 人 文字数:3767字

洞窟の財宝
異世界物

洞窟探索

伝承に伝わる外世界からの証を入手するための冒険

クレジットカード


――始まりは異世界で――

 始まりはなんでもない日常だった。いつものように起きて学校へ行き、友達と喋りながら一日が更けていく。夜になったら家に帰ってごはんを食べて寝る。そう、そんないつもの一日になるはずだった。

 焼けたコンクリートに粉々になった自転車。溶けた鉄の熱気が頬を撫でる。

「貴方が……」

「ちょっとまってなにこれ、なんで爆発して……女の子?」

「私はユースティア、貴方を迎えに参りました」

 こうして俺の日常は異世界に移ったのだ。



 濃い緑、川のせせらぎ、多くの動植物の存在が感じられる森に少女――ユースティアと名乗ったか――と二人で居た。その目に映る光景全てが初めて見るもので、ここが今まで暮らしていた場所とは違うことを示していた。

「それで、俺に何をしろと?」

 眼の前にいる少女は俺にとっては誘拐犯にも等しい。というか有無を言わさずここに飛ばした以上誘拐犯そのものだ。

「貴方にはあの洞窟へ入ってもらいます。」

 そう言いながら彼女は鞘に収まった剣を投げ渡す。

「お持ちください、護身用にはなるでしょう」

 剣なんか持ったことも振ったこともないんだが。

「洞窟の奥に貴方と同じ世界からやってきたと言われている人物の遺産が眠っていると言われています、それを手に入れてここへもどってきてください」

 もはや有無を言わさぬ状況だと言わんばかりの態度で洞窟を指し示す。そこには確かに深々と口を開けた洞窟の入り口が有った。



 中に入ると意外と広く、また天井や壁が光る鉱石によって照らされているために明かりにも困らなそうだった。複数枝分かれをしているわけでも無く、くねくねと曲がりくねりながらの一本道が続いていた。
 少し進んだ所で開けた空間にでる。そこには大きな猿のような何かが一体そこに居た。

「うぇ……なんだよあれ……ゲームだったら間違いなくエネミーだよなぁ」

 思わず顔を顰めながら口に出していた。自分の精神は思った以上に追い詰められているらしい。震える手で剣を握りながら広場へ入っていく。

「ギギ!ニンゲン!ニンゲン!!エサダエサ!!」

 やっぱりエネミーだった。少し覚悟出来ただけ良かったのかもしれない。震える手で剣を構えながらそれと相対する。相手は手に棍棒のような何かを手に握っているのが見える。

「あぁ、やっぱり当たったら痛いよなぁ……よぉし!」

 意を決してエネミーに駆け寄る。相手が棍棒を構えるのがわかる、そのまま棍棒を持った手を打ち据えるように剣を振る。瞬間、手に嫌な感触が残る。柔らかい肉を削ぎ硬い骨を叩き折る感覚。

「グギャ!!」

 そんな目で見るなよ、頼むからさ。そんな思いが通じるわけもなく、エネミーは体当りするようにこちらに駆け出してくる。その足を払うように左手に持った鞘で打ち付け、倒れたエネミーの喉元に刃を降ろす。
 グチャっと嫌な音と狭いところから息が漏れる音が聞こえた後、エネミーは動かなくなった。

「あーあ、ついにやっちゃったよ……」

 ふと見てみれば倒したエネミーが黒い砂となって消える瞬間だった。砂の中から数枚の銅貨が出て来る。

「あー……やっぱりRPGよろしくエネミーを倒すとドロップアイテムが出てくると」

 少しずつこの世界に順応している自分が自分で少し嫌になる。

 そうして、少しずつ歩を進めときには敵を倒し奥へ奥へ進んでいった。


 洞窟の大分奥へ進むと一際大きな観音開きの扉が目の前に現れる。おそらくは最奥部なのだろうと直感できるそれは、まるで入ろうとするものを威圧するかのような見た目だった。

「ゴールかなぁ……でもあれって絶対ボスだよね……」

 ボヤきつつも扉を開く。エネミーが居ても今まで倒してきた猿のようなやつだけだろうと思いこんでいた。そして、そこに居たのは大きな翼を持ったトカゲのようなエネミーだった。

「は……ドラゴン?」

 思わずそう口に出さずのにはいられない見た目に圧倒される。口から火を吐き空を飛ばんとするそれは間違いなく創作に出てくるドラゴンだった。

「いやいやいや、無理でしょこんなの……」

 もちろん、そんなこっちの都合はお構いなしにドラゴンは口から吐いた火をこちらに向ける。慌てて横に走り柱の影に隠れて様子を伺う。
 扉は……気づけば閉まってる。ドラゴンは……のっそのっそとこっちへ歩いてくる。そもそもあの大きさのエネミーとか人一人で何とかなるもんじゃ……
 ……歩いてくる?洞窟内とはいってもそれなりに天井は高さがある。上から巨体ゆえの体重で潰されればひとたまりも無いだろうに。あるいは上から火を吹くだけでもこちらはどうしようもない。なのにあのドラゴンはただこちらにゆっくりと歩いてくるだけ。

「もしかして、自重を支えきれないのか……」

 それなら、と意を決してドラゴンへ駆け出す。そのまま足元をくぐり反対側の壁を目指す。想像が有っていればきっとそこに扉がある……

「ないぃ!」

 望んでいた物はそこに無かった。慌てて柱に身体を隠す。

「ってことは倒さないとダメってことか」

 頭のなかで使えるものを洗い出す。剣、その辺に転がってる大小様々な石、スマホ、サイフ。

「ちょっと試してみるか」

 手頃な石を幾つか手にとってドラゴンに向かって放る。そのどれもが意にも介されなかったが例外が有った。
 天井や壁と同じ素材だろうか。光る石にだけ興味を示すようだった。

「つまり光り物なら通じると、なら……」

 周囲を見渡して幾つか光る小石を集める。それと同時に登れそうな場所を探す。幾つか登れそうな場所が有ったがそのどれもが高さが足らない。

 しょうがないか、と思いながら頭の中で作戦を描く。光る石で陽動、こっちを見失ったらスマホのアラーム機能を使って陽動。飛び乗って首を落す。これで行こう。

 光る小石を投げドラゴンの気を引く。その度に柱を移動し徐々に近づいていく。ドラゴンの息が聞こえるほど近づき、身を隠す。少しして携帯からアラームが流れ出す。その音に吊られてドラゴンが歩いていき、首を下げるのが見える。その瞬間、覚悟を決めて走り出す。崩れた柱に足をかけ、ドラゴンの背中に飛び乗る。そのまま羽の付け根を踏み台にして首元に飛びしがみつく。そしてその首筋に剣を突き立てた。

「早く……沈めぇ!!」

 思わず口から絶叫がでる。そこで意識が途切れ、気づけば黒い砂の山で目を覚ました。

「勝った……んだよな、負けてたら今頃炎に焼かれてるか食べられてるかだっと」

 砂の山を崩してドロップを確認する。銅貨が数枚と銀貨と金貨、それとカードのような何かがそこには有った。

「何だこれ……クレジットカード?」



――脱出とこれからと――

 そうして洞窟で得たものを手に脱出する。外は既に暗くなっていたが、そんなことは意に介さないかのように少女が仁王立ちしていた。

「死ななかったんですね、少し意外でした」
「まるで死んだらそれがわかるかのような言い回しだな……」

 彼女はキョトンとこっちを見ると

「死んだらダンジョンの入口……今回の場合洞窟の入ぐりに飛ばされるのですぐにわかりますよ?」

とさも当然のように言うのだった。

「それで、遺産は見つかりましたか?」

 彼女は役割を果たしたのかどうかを聞いてくる。おそらくはこれだろうとクレジットカードを渡す。

「おそらくは、これでしょ……なんだってクレジットカードがドラゴンの体内から出てくるのさ」

「それは、その人物がドラゴンに変化したからでしょう」

 もはや何でもありだな、と口にするのも億劫でその場に倒れ込む。もう疲れたから休みたかった。やってくる眠気と気だるさに意識を明け渡し……俺の意識はそこで途切れた。



 陽の光で目が覚める。暖かな日差しとどこか冷たい風が身体を撫でる。頭に柔らかな感触を覚えふと上を見るとそこには少女の顔があった。

「目を覚ましましたか」

 彼女はなんでもないかのように答える。当然女性経験どころか彼女すら居なかった俺にとってはかなり恥ずかしい状況で……

「うわぁぁぁ!」

 と素っ頓狂な声で飛び起きるだけだった。



 しばらくしてから朝食を取り、彼女の話を聞く。

「貴方はまさしく選ばれた御方であり、この世界を救ってもらうために来ていただきました」

 任意ではなく強制、拉致と言ってもいいものだったが。しかも世界を救えとはまた大きな話になった。

「それで、それは胡散臭い伝承にでも書かれてたのか?」

 もはやなんでも来いの気持ちで聞いてみる。

「いえ、占い師のお告げです」

 その後、彼女は続けるように

「伝承にあったのは誰でもいいから洞窟に送り込めば外の世界の遺産が手に入る、というものだけですから」

 世界を救うとされてる男にお使いをさせたをわかった瞬間に、この世界に来てから何度目かのため息を吐かざるを得なかった。
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