お題:純粋な医者 必須要素:宗教 制限時間:15分 読者:75 人 文字数:738字

先生は神様
「先生は、神様を信じる?」

そう訪ねると、先生は目を大きく丸めて私を見た。
突然そんなことを聞かれれば誰だって驚くだろう。
私はそのまま何も言わず、先生の出方を待った。

「……うーん、そうだなぁ」

先生は手に持っていたペンを机に置き、改めて私と正面から向き合った。

「僕は信じてるかな、神様のこと」
「そうなんだ」
「綾ちゃんは? 信じてないの?」
「わからない。神様なんて、サンタクロースみたいなものじゃないかって思ってる」
「サンタクロース?」
「そう。信じるか信じないかは本人次第ってこと。だって、神様を信じたって信じなくたって叶う願いは叶うし、叶わない願いは叶わない。治るものは治るし、治らないものは治らない。そんなものでしょ?」

我ながらひねくれた考えだと思う。
それを証明するかのように、先生は困ったように苦笑した。

「じゃあ、綾ちゃんはサンタクロースは信じてる?」
「サンタクロースを信じる純粋な年齢はもう過ぎてるし、さすがにそれはないかな」
「僕は信じてるよ。サンタクロース」

どきっとした。
そう言った先生の笑顔が、何かを諭しているようだった。

「…先生、いくつだっけ」
「今年で34かな」
「純粋すぎるでしょ」
「そうかなぁ」

アハハと愉快そうに笑いながら、先生は再びペンを持ってカルテを書き始めた。

「綾ちゃんが言っていた通り、神様もサンタクロースも同じものなのかもね」

シャシャシャッと小気味良く紙の上を滑るペンの音が私の耳に届いた。

「だからさ、綾ちゃん。もう一度、サンタクロースを信じてみない?」
「……だから、私はそんな純粋な子じゃないって」

先生はまた笑った。
先生の笑顔を見て、私はなんだか胸の奥が熱くなった。


作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:yaichiyo お題:輝く電話 必須要素:宗教 制限時間:15分 読者:9 人 文字数:799字
(#97) 自分たちとは違うという認識は他者を迫害する。 まるで肉体に宿っている免疫細胞がウィルスを攻撃するように。 全てが薄い砂色の街だった。 建物は土を固め 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:Syromid お題:地獄の夜 必須要素:宗教 制限時間:15分 読者:30 人 文字数:577字
また即興小説は無茶なお題を振ってきたな。何だよ地獄の夜って。まあいいや。適当にさくさくかいていこう。地獄の夜ね。そんな夜あったっけ。猛暑のなかエアコンが壊れたこ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:Syromid お題:俺の空想 必須要素:宗教 制限時間:15分 読者:27 人 文字数:601字
俺は子どもの頃から空想癖があった。よく通知表には「窓の外ばかり見てる」とかかれていたものだ。まあ、そうだ、実際俺は窓の外ばかり見て、自分だけの世界にはいりこんで 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:夏のアパート 必須要素:宗教 制限時間:15分 読者:16 人 文字数:694字
「なっちゃん様……なっちゃん様はおられる……」べったりと肌に張り付いた黄ばんだTシャツを気にも留めず、ひたすらブツブツと何かを呟く男が、さながらサウナのように蒸 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:臆病な夏 必須要素:宗教 制限時間:15分 読者:32 人 文字数:981字
平成最後の夏が苛烈を極め人死にが大量に発生したが、次の年の夏はそうでもなかった。「ん?あれ?」っていう感じの夏だった。新年号になって初めての夏がなんともこう、水 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
神秘打倒 ※未完
作者:t お題:ラストはプレゼント 必須要素:宗教 制限時間:15分 読者:15 人 文字数:358字
彼の世界に神は居なかった。故に彼が神となったのは半ば必然である。神は無責任の象徴だ。救いを、願いを、呪いを。人々が手には負えないと信じたものが神の手に委ねられる 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:汚れた雲 必須要素:宗教 制限時間:15分 読者:51 人 文字数:1013字
雲は白い。大体白い。曇りだと黒め、灰色。人間は空腹時、とてつもない空腹時、雲を食べ物に見立てることがある。「あ、あれはドーナツのようだ」みたいな感じ。見立てられ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:そ、それは・・・土地 必須要素:宗教 制限時間:15分 読者:92 人 文字数:708字
生き物が生きるために「場所」を必要としなくなって五千年たちました。生き物たちは、五千年前のわたくしたちからすると、「情報」といった概念になって、ふわふわとそこい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:私が愛した男の子 必須要素:宗教 制限時間:15分 読者:59 人 文字数:489字
彼はいつも汚れていた。服はほつれて泥がつき、裸足のすねには生傷が絶えない。 一度だけ、聞いてみたことがある。「なぜ私を訪ねるの。どこから来たの。名前は何と言う 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
未完 ※未完
作者:青木零と宮島治子 お題:あいつと小説合宿 必須要素:宗教 制限時間:15分 読者:151 人 文字数:392字
「今から小説合宿をしよう」近藤は俺の返事を聞く前に家に上がり込み、机の上の荷物をなぎ倒すように落とし、陣取った。バサバサと俺の荷物が落ちるのも気にせずに、原稿用 〈続きを読む〉

早坂 漣の即興 小説


ユーザーアイコン
作者:早坂 漣 お題:純粋な医者 必須要素:宗教 制限時間:15分 読者:75 人 文字数:738字
「先生は、神様を信じる?」そう訪ねると、先生は目を大きく丸めて私を見た。突然そんなことを聞かれれば誰だって驚くだろう。私はそのまま何も言わず、先生の出方を待った 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:早坂 漣 お題:夜と雑草 制限時間:30分 読者:99 人 文字数:803字
満月が眩しい夜、私はふと目を覚ました。 辺り一面には星がきらきらと輝いていて、その中心に浮かぶ丸い月は、まるで星たちと一緒にこの世界を吸い込んでしまうのではな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:早坂 漣 お題:かっこいい絵描き 制限時間:15分 読者:104 人 文字数:546字
私の大学には、似顔絵師がいる。なんでもその絵師さんは私の後輩に当たる大学1年の男で、特に女子生徒から人気を得ている。なぜなら彼は、見るものすべてを魅了してしまう 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:早坂 漣 お題:どうあがいてもお天気雨 制限時間:30分 読者:114 人 文字数:1240字
今朝見た天気予報では、お天気お姉さんが寝起きの目には眩しいほどの笑顔で「今日は一日、青空の広がる気持ちのいいお天気でしょう」なんて言っていたはず。それなのに、な 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:早坂 漣 お題:かゆくなる失敗 制限時間:15分 読者:148 人 文字数:590字
ああもう、またやってしまった。 私はいつもこうだ。いつもいつも、私は相手にこんな顔をさせてしまう。「えっと…、ごめん。俺、君のことは友達としか思えないんだ」「 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:早坂 漣 お題:小説の中の勇者 制限時間:30分 読者:164 人 文字数:849字
小さい頃は誰だって、世界を守る勇者になれた。 剣を片手に、大きな敵や手強い敵を次々と倒していって、小柄で可愛いお姫様を助けて世界に平和が訪れる。 しまいにはお 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:早坂 漣 お題:12月の母 制限時間:30分 読者:130 人 文字数:596字
寒い寒い冬の日。私は、お腹に子どもがいることを知った。おめでとうございます。と、産婦人科の先生に言われた。 私はまだ実感が沸かなかった。お腹に手を当てて、本当 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:早坂 漣 お題:死にかけの殺し 制限時間:15分 読者:123 人 文字数:642字
「何かやり残したことはある?」「何もない、早くやって」 なんて上から目線なのでしょう。本来なら頭さげて頼み込むくらいは欲しいところ。 まあいいや。わたしはそこま 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:早坂 漣 お題:忘れたい女の子 制限時間:1時間 読者:157 人 文字数:1578字
冷たい椅子に腰をかけ、僕はノートパソコンを開いた。ブゥゥン…と無機質な音が辺りに響く。淹れたての温かいコーヒーを飲みながら、僕はパソコンが起動するのを待った。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:早坂 漣 お題:信用のない孤島 制限時間:15分 読者:164 人 文字数:349字
この小さな島は、時々息苦しくなる。 嘘っぱちだらけで、中身はドロドロ。 右耳から聞こえる笑い声。 左耳から聞こえる話し声。 お互いが行き来しあって、ぶつかりあ 〈続きを読む〉