お題:団地妻の扉 制限時間:15分 読者:27 人 文字数:1014字
[削除]

鳴らない電話 ※未完
 まだ夏の日差しが残っている頃だった。夜には気温が下がるが、昼には衣服に汗の臭いが混じる。僕は長い夜を過ごした後、少しばかり酩酊した頭を日差しの中に横たえて、布団の中にまだ体をうずめていた。倦怠が唯一うっすらとでも実体を持つ季節。僕は布団の中で手を動かしては、自らを慰め続けていた。その手を伸ばし、強い日差しに透かすようにしてみると、つんと、鼻をさす匂いが漂ってくる。僕はそれを犬のように嗅ぎながら、電話を待っていた。彼女からの電話を待っていた。時間が過ぎていくのをとどめようとすることで早めようとしていた僕は、ただ一声を聞きたかったのだ。裸のまま外へ駆け出していきたいと僕は思う。その一声を聞いてから、裸のままで日差しを浴びてみたいと僕は思う。なぜそれが許されないのか。楽園時代には羞恥心がなかった。そうだとすれば、その楽園はむせ返るような栗の花の匂いがしただろうに。僕の頭が真っ白になる。僕は左手を使って、つまり、普段よりはずっと不慣れなやり方で、けれどもしっかりと、夢の内に果てた。持続する意識と、秘められた断絶。持続を装いながら、誰もが夏の日差しの中では意識を失っている。連続の内に静けさがあり、静けさの反動に興奮があった。誰もが体を震わせる時期。夏の終わりに子を宿せば、生まれてくるのは初夏になる。子供は生まれたとき冬の冷たさを知らず、秋のさみしさも知らない。春の豊饒の名残を味わい、夏の狂乱にどっぷりとつかる。夏、命は交尾して、繁殖する。十か月もの時を胎内で過ごすのは人間ぐらいなものだ。だけど、少なくとも、人間の論理の内では、子供を産むのは初夏が良い。僕たちはそのことを知っているのだ。
 僕の待っている電話は鳴らない。僕は鳴らない電話を待ち続けている。僕は電話を待っているのか、それとも、鳴らないことに耐えているのか。耐えるということは甘美でもある。罪を犯せば、もっと甘美だ。だがそれは罰せられる恐怖が常に魂を苛んでいるからである。罰せられてしまえば、その恐怖も終わりだ。終わってしまった恐怖は、もはや甘美ではない。続いている恐怖は甘美だ。その味を、僕たちは少しでも長く味わいたいと思う。犯罪者が逃走するのはその甘美を引き延ばすためだ。犯罪者が現場に戻るのは、その甘美が永遠に追放されることを防ぐためだ。僕たちは恐怖を忌避しながら、恐怖を求めてさまよう。罪を憎悪しながら、罪の刻印をわが身に刻み付けることを願う。
この作品をツイート

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:パンプキーナ・イトカ/欄橋 お題:魅惑の武器 制限時間:15分 読者:20 人 文字数:846字
誰しもが、己が魂を燃やすことに憧れを覚える。この世界ではそれが″生き様″であるからだ。だからこそ、人は消費することに全てを注ぐ。人は命を消費して生を得る。その法 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:かたぎり お題:わたしの嫌いな鳥 制限時間:15分 読者:3 人 文字数:90字
来は肉を焼いていた。すると、なにやら変な鳴き声がきこえた。「なんだ、近くの鳥たちか。」疑問がはれて来はすっきりした。そして再び肉にもどった。火力をあげて夜を吹き 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:にい お題:遅い豪雨 制限時間:15分 読者:7 人 文字数:824字
梅雨のためにずいぶん前から準備をしてきた。屋根瓦は防水に変えたし、家の外壁は防水に変えたし、あらゆるドア、窓からすべて防水に変えた。つまり防水に変えたのだ。「 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:聖女ミスリア巡礼紀行 お題:許せない弁当 制限時間:15分 読者:35 人 文字数:785字
笑われた。 クラスの友達に、女子に、果てはひそかに憧れていた間島さんにまで、俺は今日笑われてしまったのだ。 みんな口元を隠すなり顔をそらすなりしてたが、その気 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:しろみ@雑多 お題:馬鹿な手 制限時間:15分 読者:18 人 文字数:592字
多ければ多いほどいいわけでもないというのはなにものにも適応される。指が片手に三十本ついていたなら、婚約指輪は三倍になるだろうし、料理をしたなら怪我をすることだろ 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
作者:環蜜虫 お題:馬鹿な手 制限時間:15分 読者:20 人 文字数:674字
「友達が失踪しました。助けてください」ヨウタ 投稿日:20xx年 3月30日 00:00 ID:e381a4e3818ee381afe3818ae381bee3 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:夢路 お題:馬鹿な手 制限時間:15分 読者:10 人 文字数:190字
おれの右手ときたら全く抑えが効かない。 いつも気づいたら何かを手にしている。雑踏を抜けたら手に持っている。 りんご、財布その他諸々。 音もなく華麗にスる汚い盗 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:しろみ@雑多 お題:群馬の小説合宿 制限時間:15分 読者:16 人 文字数:644字
きしきしと床が鳴く旅館の廊下を歩きながら、チエとわたしは濡れた髪を拭いている。文芸部で、まさか電車に揺られて山道を歩くとは想像していなかった。この旅館は学生時代 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:環蜜虫 お題:群馬の小説合宿 制限時間:15分 読者:21 人 文字数:458字
――電車がホームに到着した。見渡す限りの林。電車が去った後の景色を振り返ると、ほど近くに小さな山々が連なっていた。無人駅の改札を出ると、昭和の風景が渋々と言った 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:TMさん お題:2つの嫉妬 制限時間:15分 読者:8 人 文字数:1047字
● 自分でも餓鬼だという自覚はある。 それでも、しょうがないじゃないかと言い訳じみた正当化をして、俺はその日も機械のように、ルーチンワークじみた仕事に従事する。 〈続きを読む〉

匿名さんの即興 小説


ユーザーアイコン
未来予想図 ※未完
作者:匿名さん お題:絵描きのガールズ 制限時間:30分 読者:1 人 文字数:1001字
全員「今日は私達お絵かきガールズが、中国によるにっぽんの潰し方を描いちゃいまーす」画伯A「じゃあ最初の絵は私からぁ。まずはぁ、アメリカがにっぽんを見捨てちゃいま 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:早い靴 必須要素:「うー遅刻遅刻!」 制限時間:15分 読者:5 人 文字数:820字
「うー遅刻遅刻!」 食パンを齧りながら、慌てた様子で街角を走り抜けていく少女。 その少女が交差点に差し掛かったときだ。 ちょうど少女と同じように登校中で、タイミ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
白脳世界 ※未完
作者:匿名さん お題:群馬の小説合宿 制限時間:15分 読者:6 人 文字数:409字
そう…ここは足を運んだものが決して戻らないと名高い合宿所である。一種の心霊スポットのようなものだ。怖いもの見たさに足を運ぶものは多い。もちろん自分も、そういった 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:愛と死の汁 必須要素:学校使用不可 制限時間:30分 読者:7 人 文字数:717字
傘を差すほどでもない、静かな霧雨なのだろう。今日のお客は皆しっとりと濡れている。そんな中、彼女は1滴も濡らさずにやってきた。小雨でもきちんと傘を差す女は、いい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:進撃の就職 制限時間:30分 読者:7 人 文字数:749字
運転手のいなくなったトラックには運よくカーナビがあって、どこを通ってきたか残されていた。外国語は全くわからないなりに適当に操作してもと来た道を辿る。少し走ると 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:汚れた牢屋 制限時間:1時間 読者:2 人 文字数:1785字
私はため息をついた。だいたいの検討だが、これからもずっと私の話は全く聞き入れてもらえないだろう。全くもって楽観的な予測をする気になれない。私を捕えた厳つい警官 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:嘘のアパート 必須要素:全身脱毛 制限時間:15分 読者:5 人 文字数:832字
いつもの学校の帰り道、私はいつもの通学路を歩いていた。現在は午後の4時半。学校に残っている人もいるだろうが、私は部活もやっていないので帰宅している。友達を待つこ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:でかい私 必須要素:バイブ 制限時間:15分 読者:6 人 文字数:456字
「せんぱーい、スマホ、鳴ってますけど」 声かけ空しく、先輩のスマホは細かに机を叩き殴り、終いには向こう側へ落ちて見えなくなってしまった。「せんぱーい、スマホ、う 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:大人の狙撃手 制限時間:15分 読者:29 人 文字数:277字
どうにも現実を見ることができない。手に届く範囲にあるわけがないのに、どうにか手に入れようと必死になって、これさえ手に入れれば、幸せになれるはずと。届いた憧れには 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:私と四肢切断 制限時間:15分 読者:13 人 文字数:280字
ウィィィィン…………。 静かな空間に切断機の音が響く。やがてその音は濁り、びちゃびちゃと水分の多いものが飛び散る音が混じる。そしてその音も止まりまた静かな空間 〈続きを読む〉