お題:振り向けばそこにダンジョン 制限時間:15分 読者:62 人 文字数:654字

ダンジョン
感情を形にする力があったら、人間は他人のクオリアを理解できるだろうか?
哲学的な問いを投げかけても答えを誤魔化しただけで、あって意味はない。そもそもクオリアという単語の用途自体怪しいものだ。

剣を弾く。耳障りな金属の音が響く。
蹌踉めく相手の懐に飛び込み剣先を滑らせる。
ずぶり、ずぶり、と肉を引きちぎり剣は滑り込む。生暖かい血液が吹き出す。鼻腔は既に効きやしない。
どさり、と倒れた男を見下ろしてようやく息を忘れていたことに気づいた。

僕は剣士に憧れた。
そして、洗礼の儀式として冒険者のパーティーに参加した。
大人の証としてモンスターを討伐する洗礼の儀式で、まさか人間をはじめに討伐することになるなんて夢にも思わなかった。
少しパーティーメンバーの女性にちょっかいかけただけなのに……。
剣の血を拭き取り、金品を漁る。先程寝首を襲った二人の分も合わせるとかなりの収穫である。
やはり、日頃の行いがいいのだろう。

暫くして出発の支度をしていると、可笑しな音が響いてきた。
群で動く小動物の気配。そして、金属の音。
なるほど、血の匂いに誘われてモンスターがやってきたのか。おそらく鼠人間と言われるモンスターだろう。
いざ、走ろうと背を向けると気配がすぐ後ろに感じた。
ふと、振り返るとそこには先程殺したはずの冒険者の死体だった。裸に剥かれた女性の死体。首が皮一つで繋がったままなのに、恐ろしいほどの躍動感でしがみついてきた。
力任せに倒される。
振りほどこうとしても、動けずに、彼は死ぬことになる。

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