お題:運命の門 制限時間:1時間 読者:64 人 文字数:2067字

ウルトラミラクルゴッドネスフューチャー
 なつきは占いが好きで、その日あったいいことも悪いことも全部運命によって決められていることだと信じていた。だからテスト前は「勉強なんてしなくても良い点取れるかどうかは運命によって既に決められているから」といってまったく勉強していなくて、案の定殆どの科目で赤点を取っていた。

「いやまあ実際今日の運勢最悪だったし仕方ないよね」

 とテスト結果の発表の日に言っていたが、試験当日には「今日めっちゃ占いの結果良かったから期待できるよ」と言っていたのを私は覚えているし、発表の日の運勢でテスト結果が影響受けるのはどういう理屈なんだと思ったが、本人は真剣に考えているようで特に何も言わないでいておいた。

 彼女の占い好きは彼女の中だけで完結しているようで、「信じないなら信じなくても別にいい」というスタンスで占いの結果を周りに押し付けるようなことはしなかったし、事実私も「そういうの別に信じていない」というと彼女はそれ以降私にうるさく言ってくるようなことはなかったし、迷惑を被ったこともなかったので普段から彼女の占い信奉に関して特に言うことはなかった。
 試験前に占いを理由にして勉強しなかったときは流石に「勉強しておかないと受かるものも受からない」と言ったのだが、彼女は「そうなったらそういう運命だったってことだよ」と聞く耳を持たなかったのであった。

「さすがにこんだけ赤点あるのは厳しいよねー」

 図書館にあるPCから自分の試験結果を確認した後、めんどくさそうな顔でそう呟いた。

「だから勉強しろってあれほど言ったのに。なんにもやってないんだからそうなるのは当たり前でしょ」

「いやいや、だから頑張ったところで結果は決まってるんだって。私が勉強しなかったことは別に関係ないの」

 お前が勉強してなかったことしか関係ないだろ、と言おうと思ったが、今の彼女に何を言おうとしても響かなさそうなので辞めておいた。そんな考え方でよく大学まで来れたよなぁとしみじみ思うが、「高校までは勉強なんてしなくてもなんでもできたけど、大学はそうはいかなかった」と高校の先輩が言っていたのを聞いたことがあったし、彼女もそういうたぐいなんだろうと思っていた。

 それより夏休みの旅行の話しよう、とこの話題を早々に打ち切り、ガイドブック取ってくるから待ってて、と書架の方に向かって行った彼女の後ろ姿を見ながら、真剣に彼女は卒業できるのだろうかと考えていた。

 それから数ヶ月が経ち、後期の試験が近づいてきてみんなが過去問探しに奮闘したり図書館にこもりだしたりし始めた頃、なつきは図書館で勉強している私をわざわざ探し出して「今日帰りカラオケ行かない?」と誘ってきたのだった。

「いや、勉強するからムリ。ていうかあんたはしなくて大丈夫なの?」

「しなくて大丈夫っていうか、してもしなくても大丈夫っていう感じだから」

 試験前のピリピリしてきた図書館のなかであっけらかんと言う彼女を見て、こいつみたいに生きれたらある意味幸せなんだろうなぁと思ったが、普通に考えると不幸すぎるなぁとも思い、流石にこのままじゃかわいそうだと思って反論してみた。

「いや、そう言うけどこのままじゃまた赤点ばっかになると思うよ。私も付き合うから一緒に勉強しようって」

「大丈夫大丈夫。勉強してるなら邪魔しても悪いし帰るよ」

 と言って帰ろうとしたので、ちょっとまって、と呼び止め私は手元にあるレジュメに書かれている参考資料を付箋にメモし、彼女に渡した。

「ごめん、悪いんだけど、もう帰るならその前にこの資料だけ取ってきてくれないかな」

 なつきは、いいよ、と快諾してくれ、カバンを私の横において少し離れた書架まで取りに行ってくれた。

「はい、これでいい?」

「ありがとう。ねぇ、ほんとに帰るの? 一緒に勉強しない?」

「だから、いいって。勉強してもなるようにしかならないから。そういう運命なの」

「もしかしたら今回は勉強する運命になってるかもしれないよ? 例えば図書館から出ようとしたらゲートが開かないとか」

「はいはい。もしそうなったら一緒に勉強してあげますよ、っと」

 じゃあね、と言ってカバンを手に持ち、なつきはエントランスに向かおうとして、私は「ついていくよ」といって一緒に出入り口まで向かった。
 そして「それじゃあまた明日」と言って学生証の入っているパスケースを取り出し、出ようとしたところで「ピンポーン」と音がしてゲートが閉じた。
 あれ、なんでだろう、といって彼女は何度もパスケースを押し当てたが、開くことはなく私は「やっぱ勉強する運命だったんじゃない?」といって渋る彼女を自習室まで連れて行くのであった。

 実際のところは運命なんかじゃなくて先程私が彼女のカバンにあるパスケースから学生証を抜いていただけの話だったのだが、彼女の言う「運命」を操ることのできた私は神様になったようないい気分で彼女の手を引き自習室に引きずっていった。
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