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お題:潔白な失望 制限時間:15分 読者:15 人 文字数:739字

どうせお前も
人生で初めて土下座をした。
果たしてどんな効果があるかと思ったが、ほとんど何もなかった。彼女が僕を許すこともないし、逆上してくるようなこともない。強いて言えば、向けてくる白い目がもっと白くなったというくらいだろう。
効果がないというのは、相手にとってだけではない。僕も、土下座をしたからといって屈辱を感じる訳でもなく、あるいは罪悪感が深まった訳でもなかった。
薄々感じていたけど、ただ低い姿勢をとっているだけだ。

「いい加減、頭あげてよ。」

そう言う彼女の顔を、僕は見ることができない。眼前のフローリングの継ぎ目をじっと見つめながら、その言葉を受け流すだけだ。
それに、あえて見る必要もない。さっき考えたとおり、真っ白な目で僕を見下ろす彼女が屹立していて、その前で僕が惜しげもなく土下座をしている。そして二人の間には、白いスマートフォンが置かれている。

「もう、いいよ。こだわっていた私がバカみたい。」

微かにため息を漏らした音が聞こえてくる。

最後に見るのが、彼女の激情した姿になるのはなんだか惜しい。
彼女は僕にまっすぐ向き合ってくれた。本当に、全て受け止めて、きちんと返してくれていた。
それが、スマートフォンの中にもよく表れていた。
そのくせ僕は、彼女が返してくれるものを全て受け取ったらそのままどこかへ沈ませていた。

さっきから何度か、ポケットの中のスマートフォンが震えている。きっと僕が連絡を返してくれないから、あいつが怒っているんだろう。黒いスマートフォンに緑色のランプが点滅し続けているのが目に浮かぶ。

これほどまでにまっすぐ僕に失望してくれていたのは、彼女の最後のお返しだったのかもしれない。
もはや、ため息でそれも終わってしまったわけだけど。
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