お題:とびだせ俺 制限時間:15分 読者:24 人 文字数:1131字

フィクション
 俺はこの世界が作りものだと知っている。
 何故なら、常に俺の近くについて回る小さな窓、A4用紙程の大きさのそれに気付いてしまったから。
 これはすなわちアレだ、第四の壁というものだ。
 これを破れば、作りものではない世界に飛び出すことができるだろう。
 だが、どうやったってこれを破ることはできない。いろんな方法を試したが、ダメだった。
 破ったところで、作りものではない世界で、作りものである俺が生きていくことなんてできやしないだろうし。
 しかし、一つだけ思うところはある。
 この世界が作りものならば、当然「作ったもの」がいるはずだ。
 そいつを神と呼ぶのかは知らない。だが、文句を言ってやらねばなるまい。
 この世界を、どうしてこんな風な形に作り上げてしまったのか、と。

「あんた、暗い顔してるね」
 洞窟の中に造った俺の基地には同居人がいる。
「外にいる時はテンション高いのに、基地にいる時はいつもそう」
 そりゃあそうだ。自分のいる世界が作りものだと知れば、陽気ではいられない。
「外じゃ求められるからな」
 俺はちらりと第四の壁、あの忌々しい小さい窓を見た。窓は変わらずそこにあるが、今は黒い。これが白く光り始めたら、多分それは向こうの世界から「見られている」ということなのだろう。
「何を?」
「悪役を、だ」
 そう、俺は「悪役」だった。
 毎回毎回、何故か世界征服する方法を考えてしまう俺は、それを実行しようとしては「正義の味方」に殴られて失敗する。それは、ばっちり第四の壁の向こうから「見られている」状態だ。
 地平線の彼方までふっとばされても、不思議と死なない。それは俺にまだ役割があるということなのだろう。
 俺は死にたくないから、第四の壁が白く光る時は、陽気で道化でちょっと残虐な「悪役」を演じる。同居人の女はそれを評して「テンションが高い」というのだ。
「見られてるからな。悪役でいられるかどうか」
 同居人の女はきょとんとして俺の顔を見た。
 この世界は作りものだ、と他の連中に訴えたことがある。だが、みんな今のこの女みたいな顔をして、固まってしまう。そしてすぐに――
「ところで、次はどんな作戦をしよっか?」
 話を変えるのだ。この話題には、絶対に反応できないように作られている、そうに違いない。それは、俺を毎回倒す「ヒーロー」も同じだ。
 俺一人だけが「この世界は作りものだ」と気付いているのだ。
「次は幼稚園バスでも襲おう。前回襲ってから、半年以上過ぎている」
 一度襲われたからと言って、連中は対策を立てたりはしない。しかし、何回も同じことを繰り返すわけにはいかなかった。
 そんなことをしたら、精神が参ってしまうから。
作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:響木 お題:とびだせ俺 制限時間:15分 読者:13 人 文字数:224字
授業終了まであと27分。窓の外、大通りには桜が舞っている。その歩道の片隅に猫を見つけた。種類は確か、ロシアンブルー。その青い瞳と目があった。瞬間、寒気にもにた高 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:にい お題:愛の風邪 制限時間:15分 読者:8 人 文字数:873字
誰にも教えるな、とたしかに忠告したはずなのに、どこから情報が漏れたのだろう。と考えて、いや考えるまでもなく友人の一人が思い当たった。病気で寝込んでいると、心細 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:砂糖指輪 お題:小説の中の修道女 制限時間:15分 読者:13 人 文字数:501字
金がない学生にとって、クーラーの入る図書館は夏の憩いの場だ。普段は静かな場所がにわかに活気づいた様が好きで、休みにはいってからは週三で通っている。もっとも、一番 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:tomogata お題:めっちゃ伝説 制限時間:15分 読者:11 人 文字数:460字
「ヤベーよマジでこれめっちゃ伝説だって」「ウヒョー、伝説!マジでこれめっちゃ伝説」今朝方、駅前の雑貨屋で女子高生2人が何かを覗き込みしきりに絶賛していた。その時 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:砂糖指輪 お題:急な稲妻 制限時間:15分 読者:9 人 文字数:414字
「別れよう」 その言葉はあまりに突然で、理解するのには時間がかった。頭のなかにぐるぐる響いて、楽器にでもなったように感じる。 突然の言葉の意味を探す間、私たちは 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
作者:ぽつタイプライター お題:小説の中の村 制限時間:15分 読者:19 人 文字数:907字
サービス精神が旺盛なトトバ村の人たちは、自分たちの故郷が一躍有名になったと知って、そりゃあもう舞い上がった。浮足立った。じっとしてはいられなかった。『群青色の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:真面目勇悟@即興小説 お題:闇の囚人 制限時間:15分 読者:13 人 文字数:671字
何かの業を背負って生まれてきてしまったのだろうかと考えるほどに今の人生は憂鬱であった。やっとのことで仕事を終え、帰路についた頃にはもう日付をまたいでいた。終電も 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ケイドウカイイ お題:かゆくなる視力 制限時間:15分 読者:9 人 文字数:140字
人家らしき灯りが、夜道にぼんやりと浮かぶ。近づいてみるとやはり家が一軒ある。辺りは暗く静かに沈み、光はその家の煤けた門灯一つである。家の扉が開いていると解る。中 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:むにゃむにゃ@即興 お題:東京の女の子 制限時間:15分 読者:15 人 文字数:781字
東京の人はみんな冷たいと、家を出る時に言われた。半年ほど過ごしてみて、その言葉は間違いではなかったと思うと同時に、冷たいけれど、温かみのある冷たさもあるのだと分 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:真実のガール 制限時間:15分 読者:54 人 文字数:1100字
「――実は私、女じゃないんだ」「……はっ?」 突然の告白に驚いて、予想外の声が出る。「あなたには悪いけれど、この姿の方が、近づけると想ってね」「だ、だって、おか 〈続きを読む〉

雨宮ヤスミの即興 小説


ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:青い模倣犯 制限時間:15分 読者:22 人 文字数:1062字
赤い全身タイツを身にまとった集団による強盗事件が多発しているらしい。 これは、と思い、俺はテレビやネットの情報を元にそいつらが着ているのと同じようなタイツを取 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:頭の中の妄想 制限時間:15分 読者:30 人 文字数:1064字
朝のホームルームで突然、大御所のお笑い芸人兼映画監督みたいな顔の人が白衣を着て出てきて、「みなさんに殺し合いをしてもらいます」と言ったとしたら? 前島くんは調 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:彼女の夏休み 必須要素: 制限時間:1時間 読者:37 人 文字数:3394字 評価:2人
目の大きい少女だな、というのが第一印象だった。 それを上目づかいにこちらに見せてくるのだから、たまらない。「ねえ、おじさん。あたし泊まるとこないんだけど」 俺 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:誰かと朝日 制限時間:15分 読者:28 人 文字数:1036字
小森くんは吸血鬼なのかもしれない。 リホが真顔でそんなことを言うので、わたしは吹き出してしまった。「だって、初日の出見に行こうってあたしが誘ったのに、来ないっ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:とびだせ俺 制限時間:15分 読者:24 人 文字数:1131字
俺はこの世界が作りものだと知っている。 何故なら、常に俺の近くについて回る小さな窓、A4用紙程の大きさのそれに気付いてしまったから。 これはすなわちアレだ、第 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:彼と凶器 制限時間:15分 読者:27 人 文字数:1038字
どうしよう、死んでしまったぞ。 他人事のように、わたしは動かなくなった彼を見下して思った。 ちょっと押しただけなのに、何でこんなことになっちゃうんだろう。人間 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:謎の血液 制限時間:15分 読者:23 人 文字数:1051字
菜花小学校には、七不思議が伝わっている。 そのどれもが深夜に起こるため、実際に目撃したものは少ない。そのため、七不思議があることを知っていても、信じているもの 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:不本意な税理士 制限時間:15分 読者:36 人 文字数:1176字
「合コンで『税理士なんですよー』って言ったら、『へーすごいですね』って言われてそれから話しかけられなくなったんだが」 どういうことだよ、と友人の税理士は机を叩い 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:鋭い投資 制限時間:15分 読者:22 人 文字数:1082字
父の教えは「お金は自分への投資になるよう使いなさい」というものだった。 僕も弟も、それを胸に生きてきた。 自らを研鑽することを厭わず、入学試験や資格試験、就職 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:団地妻の脱毛 必須要素:二号機 制限時間:1時間 読者:59 人 文字数:3662字 評価:3人
「脱毛ババア?」 田中はあくまで真面目な表情で、すっさまじい名前だなあ、と俺は顔をしかめた。 俺と田中は、とある団地に来ていた。かなり古びた建物群で、地元民の田 〈続きを読む〉