お題:とびだせ俺 制限時間:15分 読者:62 人 文字数:1131字

フィクション
 俺はこの世界が作りものだと知っている。
 何故なら、常に俺の近くについて回る小さな窓、A4用紙程の大きさのそれに気付いてしまったから。
 これはすなわちアレだ、第四の壁というものだ。
 これを破れば、作りものではない世界に飛び出すことができるだろう。
 だが、どうやったってこれを破ることはできない。いろんな方法を試したが、ダメだった。
 破ったところで、作りものではない世界で、作りものである俺が生きていくことなんてできやしないだろうし。
 しかし、一つだけ思うところはある。
 この世界が作りものならば、当然「作ったもの」がいるはずだ。
 そいつを神と呼ぶのかは知らない。だが、文句を言ってやらねばなるまい。
 この世界を、どうしてこんな風な形に作り上げてしまったのか、と。

「あんた、暗い顔してるね」
 洞窟の中に造った俺の基地には同居人がいる。
「外にいる時はテンション高いのに、基地にいる時はいつもそう」
 そりゃあそうだ。自分のいる世界が作りものだと知れば、陽気ではいられない。
「外じゃ求められるからな」
 俺はちらりと第四の壁、あの忌々しい小さい窓を見た。窓は変わらずそこにあるが、今は黒い。これが白く光り始めたら、多分それは向こうの世界から「見られている」ということなのだろう。
「何を?」
「悪役を、だ」
 そう、俺は「悪役」だった。
 毎回毎回、何故か世界征服する方法を考えてしまう俺は、それを実行しようとしては「正義の味方」に殴られて失敗する。それは、ばっちり第四の壁の向こうから「見られている」状態だ。
 地平線の彼方までふっとばされても、不思議と死なない。それは俺にまだ役割があるということなのだろう。
 俺は死にたくないから、第四の壁が白く光る時は、陽気で道化でちょっと残虐な「悪役」を演じる。同居人の女はそれを評して「テンションが高い」というのだ。
「見られてるからな。悪役でいられるかどうか」
 同居人の女はきょとんとして俺の顔を見た。
 この世界は作りものだ、と他の連中に訴えたことがある。だが、みんな今のこの女みたいな顔をして、固まってしまう。そしてすぐに――
「ところで、次はどんな作戦をしよっか?」
 話を変えるのだ。この話題には、絶対に反応できないように作られている、そうに違いない。それは、俺を毎回倒す「ヒーロー」も同じだ。
 俺一人だけが「この世界は作りものだ」と気付いているのだ。
「次は幼稚園バスでも襲おう。前回襲ってから、半年以上過ぎている」
 一度襲われたからと言って、連中は対策を立てたりはしない。しかし、何回も同じことを繰り返すわけにはいかなかった。
 そんなことをしたら、精神が参ってしまうから。
作者にコメント

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