お題:不本意な税理士 制限時間:15分 読者:142 人 文字数:1176字

モテる士業
「合コンで『税理士なんですよー』って言ったら、『へーすごいですね』って言われてそれから話しかけられなくなったんだが」
 どういうことだよ、と友人の税理士は机を叩いた。
「士業は大人気じゃなかったのか? モテるんじゃなかったのか?」
「まあ、一般の人には分かりにくい仕事だから」
「だからって無視することないじゃないか!」
 ずっと大根のサラダ食ってたわ! と舌打ちする。
「自分から話振っていったらいいじゃん。税金のことで困ってませんか、とか」
「相手は大体会社勤めだったからな。別に困ってるやつはいないだろ」
 率にして4分の3が、何らかの会社に勤めていたという。
「4分の1は?」
「ニート」
 そりゃ税金関係ないな、と僕は呆れた。
「女の子のレベルが低かったと思うことにしようよ」
「いや高かった。かなりの高さだ」
「顔だろ。頭の方だよ」
 友人はちょっと黙った。黙ってから、「そうだな」と納得した様子だった。
「とは言え、知られてないっていうのは、やっぱり辛い。弁護士は『何かすごい』みたいな漠然としたイメージを持たれてるのに、俺らはそれすらないから」
「弁護士はたくさんドラマとか作られてるからなあ。ゲームもあるし。タレント弁護士みたいなのもいるし、そういうのがクイズ番組とか報道バラエティとかで活躍してるのもあって、頭いいイメージがあるんだろう」
 そこだよ、と友人は人差し指を立てる。
「つまり、税理士が主役のドラマがあればいいんだよ」
「……地味そう」
 友人はまた黙った。黙ってから、「そうかもな」と納得した様子だった。
「とは言え、行政書士のドラマとかあっただろ? できるって」
「あったなあ。漫画原作だっけか」
「行政書士なんて、俺ら以上に何やってるのか分からん仕事だぞ、一般的に」
 まあ確かに、何をやっているのか名前からは理解できない。
「会計士もそうだよ。会計士の推理なんちゃら、みたいなのもやってただろ? ああいう感じで税理士もなんかやったらいいんだよ」
「まあな。校正記者もドラマで知名度上がったって言うしな」
「だろ?」
 そしたら俺もモテるようになる、と友人はしたり顔でうなずくが、僕はそうは思えなかった。
「と言うかさ」
「何だよ?」
「士業=モテる、っていう前提がおかしいんじゃない?」
「おかしかないだろ! どんだけ苦労したと思ってるんだよ」
 いやまあ、そうだけどさ。
「そもそも、僕もモテないよ」
「当たり前だろ。社会保険労務士とか、マイナーすぎるわ」
 腹立つなあ、この税理士。確かに、字面だけでは全く意味が分からない資格だけどさ。
「自分を磨こうよ。身ぎれいにしてさ、清潔感出して。紳士的に。そしたらモテるよ」
 友人は、三度目の沈黙を迎えた。そして、「そんな身もふたもないこと言うなよ」とうなだれた。
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