お題:鋭い投資 制限時間:15分 読者:62 人 文字数:1082字

兄弟の投資
 父の教えは「お金は自分への投資になるよう使いなさい」というものだった。
 僕も弟も、それを胸に生きてきた。
 自らを研鑽することを厭わず、入学試験や資格試験、就職戦線を勝ち抜いてきた。
 しかし、どれだけ磨いても、尚磨き足りないのが人間というものなのかもしれない。あるいは、僕も弟も、磨きすぎてすっかり削れてしまったのかもしれない。
 僕は会社で忙殺される中、心がぽっきり折れる音が聞こえてから、家の中から出られないでいる。今は貯金を元手に株の運用でギリギリ生きている。
 弟は、もっと折れるのが早かった。
 就職に失敗し、家にパラサイト。弟は自分自身に厳しいタイプなので、何とか自立しようと躍起になってはいるのだが、結果は芳しくない。
 父が厳しく発破をかけ続けたせいもあり、弟は折れた心を癒すこともなく「次へ、次へ」と焦り過ぎて、遂には完全に粉々になってしまったようだ。
 加えて、この兄の失敗である。兄ちゃんのようになるのだ、と弟は常々言っていたそうだが、兄ちゃん以上に心がぼろぼろになってはいけないだろう。
 そういうわけで、我が実家で弟は引きこもっていたのである。
 数日前までは。

 実家の惨状と言ったら、筆舌尽くしがたいものだった。
 外見は慣れ親しんだ我が家なのだが、一歩中に入ると目を疑う光景が広がっている。
 柱や壁、床や梁についた大きな傷。そして、こびりついた血痕。
 何よりも、廊下に倒れる二人の人物。そう、父と母だ。
「やったのか?」
 立ち尽くす三人目の影、弟に僕は尋ねた。
「そうさ」
 弟はどこか得意げだった。昔と変わらない。すぐに感情が表情になって出てくる。
 いつもの弟だ、両腕が刃物になっている以外は。
「どうしたんだ、その腕?」
「投資さ」
 弟はにやりと笑う。
 何でも、改造人間と言うものを造る会社が実際にあるそうで、弟は親のカードを使ってそこで改造手術を受けたらしい。両腕を鋭い刃物にするのは、最も安い改造だそうだが「こんなものでも効果てきめんだった」と血を拭いもしていない刃を見せびらかす。
「俺はこれで、天下を取るんだ。この刃に切れないものはない。この力で、馬鹿にしてきた企業の採用担当者も、ハローワークの職員も、親も殺したんだよ」
 そうだな、と僕はうなずいた。天下が取れると思ったんじゃなくて、弟の犯した所業についてだ。
「兄ちゃんは、俺の味方か?」
「敵だよ」
 僕が来たのは弟を裁くためだった。そのために、僕も投資した。
 弟が刃を振るうよりも早く、僕は投資して手に入れた拳銃で彼を撃ち殺したのだった。
作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:日ノ宮理李@ハナねね町長 お題:鋭い投資 制限時間:15分 読者:55 人 文字数:1042字
人類の次のステップはなにかと聞かれたら、不老不死、タイムスリップと誰しも答えるだろう。無論、筆者である僕もそうなると信じてた。 だけど、現実は違った。 増えす 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ふす お題:鋭い投資 制限時間:15分 読者:79 人 文字数:681字
俺はナイフの代わりに札を投げる。誰もこの鋭い投資から逃げる事は叶わない。この札に描かれた最高金額を象徴するYU☆KI☆TIそう、俺だって初めて喰らったときは逃げ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:tomogata お題:鋭い投資 制限時間:15分 読者:46 人 文字数:475字
「困ります。こんなにいただけません」私は姪にお年玉を渡した。彼女は複雑そうな表情で、それを私に突き返した。「遠慮することはないよ。君ぐらいの年の子には欲しいもの 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
先行投資 ※未完
作者:表田 圭 お題:鋭い投資 制限時間:15分 読者:67 人 文字数:520字
小さい頃から、僕は周囲とは違うのだと疎外感を持て余していた。 小学校からの帰り道に捨て犬がいると、みんなは可哀想だと云って、各々の家からミルクやらパンやらを持 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:パンプキーナ・イトカ/欄橋 お題:魅惑の武器 制限時間:15分 読者:20 人 文字数:846字
誰しもが、己が魂を燃やすことに憧れを覚える。この世界ではそれが″生き様″であるからだ。だからこそ、人は消費することに全てを注ぐ。人は命を消費して生を得る。その法 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
作者:かたぎり お題:わたしの嫌いな鳥 制限時間:15分 読者:3 人 文字数:90字
来は肉を焼いていた。すると、なにやら変な鳴き声がきこえた。「なんだ、近くの鳥たちか。」疑問がはれて来はすっきりした。そして再び肉にもどった。火力をあげて夜を吹き 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:にい お題:遅い豪雨 制限時間:15分 読者:7 人 文字数:824字
梅雨のためにずいぶん前から準備をしてきた。屋根瓦は防水に変えたし、家の外壁は防水に変えたし、あらゆるドア、窓からすべて防水に変えた。つまり防水に変えたのだ。「 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:聖女ミスリア巡礼紀行 お題:許せない弁当 制限時間:15分 読者:35 人 文字数:785字
笑われた。 クラスの友達に、女子に、果てはひそかに憧れていた間島さんにまで、俺は今日笑われてしまったのだ。 みんな口元を隠すなり顔をそらすなりしてたが、その気 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:しろみ@雑多 お題:馬鹿な手 制限時間:15分 読者:18 人 文字数:592字
多ければ多いほどいいわけでもないというのはなにものにも適応される。指が片手に三十本ついていたなら、婚約指輪は三倍になるだろうし、料理をしたなら怪我をすることだろ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:環蜜虫 お題:馬鹿な手 制限時間:15分 読者:20 人 文字数:674字
「友達が失踪しました。助けてください」ヨウタ 投稿日:20xx年 3月30日 00:00 ID:e381a4e3818ee381afe3818ae381bee3 〈続きを読む〉

雨宮ヤスミの即興 小説


ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:汚れた狐 制限時間:15分 読者:13 人 文字数:956字
「ごん、お前だったのか。いつも栗をくれたのは」 これがやりたい、とある狐は思った。 別に銃で撃たれて死にたいわけではなく、人間にショックを与えてやろうと、こう考 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:やわらかい道 制限時間:15分 読者:16 人 文字数:1467字
固い道を歩き続けると、足が疲れるものだ。 たまにはやわらかい道を歩いたっていいんだよ、とわたしの恩師は言った。「というわけで、ここが世界一やわらかい道です」 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:有名な昼 必須要素:唾液 制限時間:1時間 読者:24 人 文字数:4200字 評価:0人
いくら美人が作ってるからって、こんなのは異常だ。 佐々木フミカはスパイスの臭気漂う会議室を見渡した。 フミカの勤める会社は、お昼時になると二つある会議室の内の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:優秀な本 制限時間:15分 読者:17 人 文字数:1513字
「この本は非常に優秀な本よ」 彼女は自慢げに一冊の本を掲げて見せる。「何せ、武器になるんだもの」 本はカヴァーがかかっていて書名は見えないが、どうやら大きさと厚 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:左の神話 制限時間:15分 読者:17 人 文字数:1057字
左利きの人は天才が多い。 そういう風潮が、南タモツは嫌いだった。 彼は左利きであるが、ちっとも天才ではなかった。 それなのに、人は左利きであるというだけで、タ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:昨日食べた村 制限時間:15分 読者:24 人 文字数:1028字
村中の人間が、外に出て不安げに空を見上げている。太陽も月も雲も星もない、真っ暗な空を。 夜中に大きな地鳴りがしたことは覚えている。地震のような衝撃で、みんなが 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:輝く暗殺者 制限時間:15分 読者:19 人 文字数:1107字
照岡は優れた技術を持つ暗殺者であったが、特異体質のために実戦では苦労していた。 その特異体質とは、「人を殺した瞬間に体が一分間発光する」という職業上致命的なも 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:失敗のエデン 制限時間:15分 読者:20 人 文字数:1070字
神はそれを見て「悪し」とされた。 それ故に、66番目の「エデンの園」はそのまま放棄されることになった。 現在につながる「エデンの園」ができたのは、それから×× 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:都会のあいつ 制限時間:15分 読者:19 人 文字数:1374字
都会に行ってあいつは変わっちまった。「清い空気の所でしか住めないもんだ。それなのに、あんな汚れた場所にいるからああなるんだ」 じいちゃんはそう言うけど、俺には 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:つらい「えいっ!」 必須要素:コミケ 制限時間:1時間 読者:35 人 文字数:3565字 評価:1人
「えいっ、えいっ……!」 またあのおじさんいるよ、とマナは眉をひそめた。 白髪と長い髭が特徴的なそのホームレスは、マナの通学路にある広い運動公園によく出没する。 〈続きを読む〉