お題:愛と欲望の接吻 制限時間:15分 読者:57 人 文字数:1282字

キスのしどころ
 唇にキスをすれば、その相手を自由に操ることができる。
 マンガなんかでありそうな能力だ。
 こういうのを持っているのは、大抵セクシーな女性キャラクターだ。スタイル抜群で、肩の出た服を着たブロンドの美女、みたいな。
 つまり、俺なんかが持ってもしょうがない能力だってこと。
 そう、その辺にいる男子高校生で、取り立ててイケメンでもない俺が持っていても、宝の持ち腐れだって話だ。

「あなたは死にかけてます」
 気が付くと、俺は白い世界にいた。目の前にはスーツを着た七三分けにメガネのおじさんがいた。腕章をしていて、そこには「神」と書かれている。
 おかしいな、俺は学校に向かっていたはずなのに。それで、校門の前の横断歩道を渡ろうとした時、ものすごい勢いで車がこっちに飛んで……。
 ああ、そうか。死にかけてるというのは、そういう意味か。
「思い出されたようですね」
 メガネの弦をクイッと押し上げるこのおじさんは、文字通り神なわけか。
「あなたはドラッグを使用した若者の運転する車にぶつかり、命を落としかけています」
 酷い話だ。まだ女の子と寝たことすらないのに。
「そう気を落とさず。これはイレギュラーな死ということで、あなたが希望すれば蘇ることができますが、いかがでしょう?」
 ああ、これアレだ。「小説家にな○う」で見たやつだ。
 ってことは、異世界に蘇るってこと? チート付きで。そう尋ねると、神らしいおじさんは「いいえ、違います」と首を振る。
「異世界から受け入れが拒否されるケースが増えていましてね。この世界の人間は、少し異世界で暴れすぎました」
 ファンタジーが流行れば次に来るのは学園モノ、そう歴史が証明している。神おじさんは力強く断言した。
「先を行きましょう、少年よ。あなたに所謂『チート』を与え、復活させます」
 次に目を覚ました時は病院で、俺は三か月入院することになる。怪我は治してもらえなかった。
 しかし、俺は「所謂『チート』」なるものをもらった。
 それこそが、キスで相手を操る能力だった。

「おいおい、俺らにケンカ売ってんの、お前……?」
 ガラのよくない連中に凄まれても、その少女は引き下がらなかった。逆ににらみ返した。
 すごい度胸だ、とギャラリーの俺は思う。
「未成年が、こんなところで制服で煙草を吸って……。同じ学校の人に迷惑だと思わないんですか?」
 おいおい、とヤンキーたちは笑い合う。
「知るか、大した学校でもねえだろうが!」
「うぜえぞ、クソ女!」
 本当にそうだよ、と俺も内心で便乗する。お前らや、俺みたいなのしかいない学校だし。
 でも、その女の子はちょっと違う。うちのクラスの委員長、びっくりするほど潔癖症。ルールを人に守らせるって意味でのね。
 俺は深々ため息をついて、委員長を助けてやることにする。
 ヤンキーにキスするのかって? いいや、違う。
 俺はそっと地面に手をついて、アスファルトにキスをした。
 これで、この地面を操ることができる。連中の足場を崩してやるのだ。
 そういうところしか、いやがら
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