ユーザーアイコン
お題:誰かは感覚 制限時間:15分 読者:35 人 文字数:622字

この世は常に正しいのだから

 道端に、
 植木鉢が転がっている。そのまま通り過ぎる。誰かが立て直すだろうから。
 コンビニ弁当が引っくり返っている。そのまま通り過ぎる。誰かが片付けるだろうから。
 酔っ払いが倒れている。そのまま通り過ぎる。冬ならちょっと様子を見たかもしれないが、いまは夏だし、車道ではなかったし、そのうち誰かが起こすだろう。あるいは自分で起き上がるだろうから。

 会社で、
 新卒の女の子がトイレから出てこない。そのまま通り過ぎる。自分よりも慰めることが上手な誰かが上手くやってくれるだろうから。
 どうやら不正らしきものが行われている。そのまま通り過ぎる。部署全員が気づいているし、正義感の強い誰かがきっと止めてくれるだろうから。
 あきらかに給与の計算がおかしい。そのまま通り過ぎる。よくあることだし、言っても無駄だし、労働組合の誰かがどうにかしてくれるだろうから。

 世界に、
 どうやら要らないと言われたらしいことに彼が気づいたのは中年にさしかかってからのことだった。不正が明らかになったことで会社は倒産し、職を失い、次に行ける場所はどこにもなかった。借家に住めなくなり、都会のターミナル駅のあたりをさまよい、寒い夜には教会にこもり、神様の像をぼんやり眺めている。
 それでも彼はまったく絶望していない。世界を信じ、他者を信じ、かならず誰かは自分を見ていてくれていると、かならず善良な誰かは自分のそばにいると、心の底から信じきっている。

作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
傷の貯金 ※未完
作者:匿名さん お題:傷だらけの貯金 制限時間:15分 読者:20 人 文字数:692字
彼と初めて会ったのはいつ頃だったでしょうか。たまたま授業で隣の席になり、お話する機会があったのです。彼は本当に優しいお方でした。頭も良く、性格も優しく、非の打ち 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:yaichiyo お題:戦艦のデマ 制限時間:15分 読者:14 人 文字数:664字
(#13) 目の前に広がる光景に息を飲んだ。 見渡す限りの炎。それらから立ち上る黒煙。そこかしこに転がっている死体。 操縦桿を握りしめる手のひらからは止めどなく 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
限界点 ※未完
作者:真弓ヽ(=ε=)ノ お題:空前絶後の嘔吐 制限時間:15分 読者:28 人 文字数:367字
「おえっ!」吐いてしまうのはこれで何度目だろうか。数えるだけでまた吐き気を催してくるので彼はそのことについて考えないようにした。「やはり食中毒か…」排水溝の前 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:shojin お題:かゆくなる光 制限時間:15分 読者:8 人 文字数:249字
私の遠い先祖は吸血鬼だったらしい。かつては夜の支配者だった吸血鬼は夜が明るくなるにつれ姿を消した。その血は人と混ざり今も生きている。しかし吸血鬼の特性はもうほと 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:自分の中のところてん 制限時間:15分 読者:12 人 文字数:597字
俺は○○。普通の社会人だ。もう一度いう、普通の社会人だ。ただ一点を除いては。その一点というのは、信じてもらえないかもしれないが、俺の手の甲のアザに「ところてん」 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
作者:日ノ宮理李@ハナねね町長 お題:自分の中のところてん 制限時間:15分 読者:18 人 文字数:863字
緩衝材というのはなんにでも必要であり、「えっと遅れた理由は?」 あたりまえのように人間の中にも存在する。「寝坊のようなものかな?」「寝坊じゃないの?」「うーん 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:勇敢な、と彼は言った 制限時間:15分 読者:9 人 文字数:1010字
そう、確かにテリーは勇敢だった。ただそれは残念なことに、あふれる勇気からくるようなものじゃなかった。奴には足りないものが一つあって、それが無いゆえの行動が勇敢に 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:たった一つの命日 制限時間:15分 読者:10 人 文字数:1151字
「『ケンタくんの命日』という童話を書いたのだけれど、聞いてくれるかしら?」「タイトルの時点で嫌な予感しかしないけど、いいわ、聞くわ」 大鷺高校文芸部の部室で、七 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:東京笑顔 制限時間:15分 読者:3 人 文字数:373字
私は、田舎から出てきたばかりのオタク女子こんな私に友達ができるだろうかと、不安を抱えながら心配させまいと秘めたままそんな尽きない私の悩みは解決しないまま、これか 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:過去の殺し屋 制限時間:15分 読者:4 人 文字数:421字
過去に一度だけ、殺し屋に狙われたことがある。なぜ狙われたのか、それは依頼者が俺に対して些細な恨みを覚えていて、「自分が手を下すのではないからいいだろう」とか安 〈続きを読む〉

の即興 小説


ユーザーアイコン
作者: お題:刹那のコウモリ 制限時間:15分 読者:28 人 文字数:606字
一秒間の変身能力を手に入れた。 たった一秒。一日の内、たった一秒だけ、私はコウモリに変身できる。 数十冊の魔道書を読破し、怪しげな薬にいくつも手を出し、それこ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: お題:女の海辺 制限時間:15分 読者:30 人 文字数:798字
人魚の子を身篭った。 孤独な身の上、それも自営業だったので、誰にも説明を求められはしなかったが、切実な問題として、産むのに良い場所がなかった。人間の病院には掛 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: お題:暗い心 制限時間:15分 読者:54 人 文字数:758字
火傷だらけの鬼がひとり、森を歩いてゆく。 その晩は新月で、鬼にとって幸いなことに、今にも雨を降らしそうな厚い雲が夜空をみっしりと埋めていた。風も重く、優しく、 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: お題:孤独な黒板 制限時間:15分 読者:66 人 文字数:690字
その日、登校すると、黒板には暴言が描き殴ってあった。私の名前と一緒に。およそ板書にはそぐわない、たった数文字で黒板の端から端までを埋めてしまうほどの、大きくて 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: お題:3月の動揺 制限時間:15分 読者:67 人 文字数:743字
最近ちょっと困っていることがあって、と、二百年ぶりに再会した旧友は挨拶もそこそこに口火を切った。 最近と言ったって、私たちの尺度のことだ、どうせ三百年以内の出 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: お題:セクシーな善人 制限時間:15分 読者:63 人 文字数:377字
新宿何とか丁目の細い裏路地、丑三つ時の間だけ、とある地縛霊が人生相談所をやっているらしい。しかも、実に盛況であるらしい。先週の土曜は十人以上の大人たちが寒空の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: お題:当たり前の木 制限時間:15分 読者:63 人 文字数:456字
裏山に佇む一本の白樺が、私の神様だった。 いつから信仰心を抱くようになったのかは覚えていない。物心ついた頃にはもう、裏山で遊びまわった帰り道に、白樺に手を合わ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: お題:戦争と絶望 制限時間:15分 読者:75 人 文字数:861字
どうも私は気が狂っているらしく、ふたつの時間を交互に生きている。 現在と100年後の世界、と言うべきか、100年前と現在の世界、と呼ぶべきか、いまいち判断が付 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: お題:静かな傘 制限時間:15分 読者:68 人 文字数:782字
不思議ではあるけれど、何の役にも立たない代物、というのが世の中にはそこそこ存在する。 祖父から譲り受けたこの傘も、そんな代物のひとつだった。祖父もまた知り合い 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: お題:傷だらけの笑い声 制限時間:15分 読者:55 人 文字数:855字
祖父はレコードが好きだった。 若い頃は歌うことも好きで、ほんのひととき、歌手として活躍したこともあったらしい。祖父の家には、その頃の古いレコードが何十枚も眠っ 〈続きを読む〉