お題:興奮した嫉妬 制限時間:15分 読者:22 人 文字数:719字

湯気女
 風呂場に湯気が充満していた。家族が先に入ったわけでもなく、今から浴槽の掃除でもしようと窓を開け放して換気していたくらいなのに、一体どこからこの湯気は生まれたのか。霧の濃い夜のような有様で、すっかり白くて前も見えないほど。
 換気扇をつけてしばらく待つと、案の定、湯気は人の形をとりはじめた。勝手に発生したそれは勝手に収束し、かわりに全裸の女が現れ、俺に非難の視線を浴びせる。
「うらめし……」
 怨念でも口にしようとしかけたそいつを無視してシャワーを浴びせようとすると、さすがに慌てて天井近くへと浮遊して避けた。
 手の届かないところへいってはどうしようもない。シャワーなら届かなくもないだろうが、頭上に向ければ自分が濡れる。女と違って俺は全裸というわけではなかった。
「よくも私を振って、あんなガリチビに乗り換えたわね……」
 気を取り直して恨み言を再開する元恋人をしげしげと見つめ、最初に抱いた感想は、ずいぶん変わったなということだった。
「お前、太ったな」
「なんですって!」
 生霊らしからぬ金切り声をあげて、頭上から飛来して爪を立ててくる。実態はなく湯気と同じなので、俺に触れた端から水滴へと変わっていく。
 顔を目当てに付き合っていたわけではないが、ここまでの変わりようだと若干の罪悪感を覚える。ストレスで痩せるタイプと太るタイプといるが、彼女の場合には残念ながら後者だったらしい。最初は怒っていた元恋人も、だんだんと自分の見かけが気になりだしたのか、風呂場の鏡を覗き込みはじめた。
 近づくとすぐに曇ってしまうので、シャワーで曇りをとってやると彼女は自分のフェイスラインを確認し、
「太ったかしら……」
 落ち込みつつ
 
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