お題:おいでよ正月 必須要素:哲学的な思想 制限時間:30分 読者:14 人 文字数:1002字

たのしいおしょうがつ
 ある日のことだった。突如降ってきた流れ星。一億の光の線が瞬く間に空を埋め尽くした。しかし、幻想的な風景に浸る者たちはただ一人を除いて誰もいなかった。
 ただひとり、光の中にたたずむ少年は流れ星に向かって唱える。
「ずっとたのしくしてください」

 ――世界は歪な"たのしさ"で溢れた――

 それが私の目に飛び込んできたとき、私は自分の頭がおかしくなったのかと思った。
「おいでよ! たのしいよ! たのしい! たのしい! たのしいたのしいたのしい!」
 突如現れたブリキのパレードは、カーキ色の七福神を乗せ街を闊歩する。街灯が倒れる。アスファルトはその上の自動車を文字通り巻き込みながら、まっさらな地べたに真紅のカーペットを広げる。同時に夜は明ける。朝日が世界を下品なRGBに染め上げる。
「あけました! おめでとう! あけまして! おめでとう!」
 カーキ色の七福神が人々を飲み込み巨大化していく。ビルは荘厳な寝殿造りに代わる。”たのしいお正月”が始まる。
 寝殿造りの屋根から粘菌のように湧いてくるのはカーキ色の七福神に飲み込まれたはずの人々。否、姿かたちは同じであるが明らかに違った。焦点の合わぬその眼でブリキのパレードに加わるなり、声をそろえて歌いだす。
「たのしいたのしいお正月、ようこそおいでよお正月、ぼくらはたのしいお正月、ずっとたのしいお正月」
「あけまして! おめでとう! あけまして! おめでとう! あけまして! おめでとう! あけまして! おめでとう!」
 混沌に包まれた阿鼻叫喚と歓声と嬌声。ブリキのパレードはなおも進む。パレードのうしろに大きな熊手が現れる。前方には下卑た黄金の鳥居が輝き始めた。
「はつもうで! おみくじ! だいきち! だいきょう!」
 ブリキのパレードが鳥居をくぐる。空に突如現れる巨大な文字。ただひとこと。
「たのしい」
 そこで私はようやく気付いた。これはたのしいお正月。たのしいたのしいお正月。七福神様のパレードに加わらなければ。カーキ色の粘菌にならなくては。ああ。ああああ。ああああああああああああ。
「しんせき! おうち! おせち! おとしだま!」
 そうだ。われわれのみがえいえんにつづくこのきょうらくにふけるなんてふこうへいである。みんなにこの"たのしさ"をわけあたえねば……。

 ――ぼくはおしょうがつをつれているから"たのしい"です――
作者にコメント

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