お題:8月のクリスマス 必須要素:グミ 制限時間:1時間 読者:538 人 文字数:1974字 評価:1人

真夏のアドベントカレンダー
彼女はクリスマスを楽しみにしていた。
クリスマスツリーを眺めながら言った。
もし、次のクリスマスも会うことができたなら。その時はーー


その手紙が届いたのは夏のひどく暑い日だった。
国際郵便で届いた封筒はひどく汚れていて、宛名がほとんど判別できなかった。いくつか押された消印は日付も国名もまばらで、この手紙があちこちを転々としてきたことがわかる。

開封すると、中に入っていたのは日付の書かれた厚紙と、1枚の便箋だった。

***

寒い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか?
こちらはとても暖かく、12月とは思えないほどです。

まずは、あなたに謝らなくてはいけません。
今年のクリスマスをともに過ごそうと去年伝えました。
でも今は情勢が思わしくなく、今年中に帰国することはどうやら難しいようです。
今もアパートの外では軍が哨戒をしており、私たちを探しています。帰国する以前に、まず外に出ることができるのか、生きて今年を越せるのか、それすらもわからない状況です。
この避難所には、私含めて何人かの女性や子ども達がいます。物資も潤沢とはいえず、厳しい状況ですが皆親切な人ばかりで、異国の私にも優しくしてくださいます。

この国にもクリスマスはあります。国民の多くは敬虔なキリスト教徒で、例年はクリスマスを皆でお祝いしていました。今年は盛大にお祝いできる雰囲気ではありませんが、それでもみなさん季節行事には意欲的です。

先日、避難所の子供たちとアドベントカレンダーを作りました。
アドベントカレンダーを知っていますか?クリスマスまでの日数を待ち遠しくも楽しみに待つためのカレンダーです。様々な形、様式のものがありますが、共通しているのは12月1日から12月25日までの25日間の日付を表す窓がついており、カレンダーの日付が来たら、その日付の窓をめくっていくのです。そして全ての窓が開かれた時、クリスマスになるのです。
避難所にいた神父様は子ども達にこう言いました。
「クリスマスまでよいこにしていれば、サンタさんがあなた達を必ず見ていて幸福を運んでくれることでしょう。今は辛いかもしれませんが助けは訪れます。このカレンダーをめくりながら待ちましょう」

人の移動はまだできませんが、手紙を外へ運んでくれるのだと言われました。
私が作ったアドベントカレンダーをこの手紙に同封します。私が帰れる日がいつになるかわかりません。この手紙もあなたの元へいつ届くのかわかりません。でも、もしこの手紙が届いたらカレンダーをめくって見てくれませんか。

それから……

***

手紙は1枚の便箋にびっしりと綴られていた。もっとたくさんの書きたいことが、伝えたいことがあっただろう。でも、彼女はそんなことはおくびにもださず楽しかったこと、親切にしてもらったこと、面白かったこと、不思議に思ったこと、明るく楽しい話題ばかりを書いていた。

僕は便箋の内容を最後まで読んだ後、もう一度最初から読み直した。
そしてまた読み終えるとそれを大切に折りたたみ、今度はアドベントカレンダーを手に持ってみた。
2枚の厚紙を貼り合わせて作られたそれは、表側の厚紙に日付が書かれていた。表側の厚紙にはビンゴカードのような切り取り線があり、これをめくると裏側に描かれた何かが表示されるという仕組みのようだ。
12月1日の日付をめくってみる。裏には「私はチョコが好きです。帰国したらODAIBAのチョコをおごってください」と書いてあった。
12月2日。「クッキーはサテラおばさんのクッキーが大好きです。チョコチップクッキーが食べたいです」
12月3日……。「大粒のザラメの飴玉が舐めたい。甘いものしばらく食べてないから、もうなんでもいい。糖分が欲しい。甘いもの食べたい」

どんどんめくっていき、最後に12月25日の日付をめくった。「はじめてデートした日、あなたがおごってくれたポイプルがまた食べたい。色鮮やかで、甘いグミ菓子。似たようなものならこの国にもあるけど、やっぱり味がちょっと違う」

全部お菓子のことしか書いてなかった。彼女は甘いものに目がないから、本当に辛かったんだろうな。僕はクスッと笑った。

「あー!その手紙、もしかして今頃届いたの?」
「アドベントカレンダー見たよ。日付とっくにすぎてるから、今日全部見ちゃったけどいいよね。それにしても頑張ったよね。何よりも食べること大好きな君が、よく頑張った」
「あー、そうだった。アドベントカレンダー……。なんか変なこと書いたような気がする。ごめん忘れて」
「忘れないよ。これからお菓子買いに行こうか。ポイプルぐらいならいくらでODAIBAのチョコは流石に高くてたくさんは買えないけどね」
「言ったな!なら買いに行こう」
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