お題:8月のクリスマス 必須要素:グミ 制限時間:1時間 読者:22 人 文字数:1974字 評価:1人

真夏のアドベントカレンダー
彼女はクリスマスを楽しみにしていた。
クリスマスツリーを眺めながら言った。
もし、次のクリスマスも会うことができたなら。その時はーー


その手紙が届いたのは夏のひどく暑い日だった。
国際郵便で届いた封筒はひどく汚れていて、宛名がほとんど判別できなかった。いくつか押された消印は日付も国名もまばらで、この手紙があちこちを転々としてきたことがわかる。

開封すると、中に入っていたのは日付の書かれた厚紙と、1枚の便箋だった。

***

寒い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか?
こちらはとても暖かく、12月とは思えないほどです。

まずは、あなたに謝らなくてはいけません。
今年のクリスマスをともに過ごそうと去年伝えました。
でも今は情勢が思わしくなく、今年中に帰国することはどうやら難しいようです。
今もアパートの外では軍が哨戒をしており、私たちを探しています。帰国する以前に、まず外に出ることができるのか、生きて今年を越せるのか、それすらもわからない状況です。
この避難所には、私含めて何人かの女性や子ども達がいます。物資も潤沢とはいえず、厳しい状況ですが皆親切な人ばかりで、異国の私にも優しくしてくださいます。

この国にもクリスマスはあります。国民の多くは敬虔なキリスト教徒で、例年はクリスマスを皆でお祝いしていました。今年は盛大にお祝いできる雰囲気ではありませんが、それでもみなさん季節行事には意欲的です。

先日、避難所の子供たちとアドベントカレンダーを作りました。
アドベントカレンダーを知っていますか?クリスマスまでの日数を待ち遠しくも楽しみに待つためのカレンダーです。様々な形、様式のものがありますが、共通しているのは12月1日から12月25日までの25日間の日付を表す窓がついており、カレンダーの日付が来たら、その日付の窓をめくっていくのです。そして全ての窓が開かれた時、クリスマスになるのです。
避難所にいた神父様は子ども達にこう言いました。
「クリスマスまでよいこにしていれば、サンタさんがあなた達を必ず見ていて幸福を運んでくれることでしょう。今は辛いかもしれませんが助けは訪れます。このカレンダーをめくりながら待ちましょう」

人の移動はまだできませんが、手紙を外へ運んでくれるのだと言われました。
私が作ったアドベントカレンダーをこの手紙に同封します。私が帰れる日がいつになるかわかりません。この手紙もあなたの元へいつ届くのかわかりません。でも、もしこの手紙が届いたらカレンダーをめくって見てくれませんか。

それから……

***

手紙は1枚の便箋にびっしりと綴られていた。もっとたくさんの書きたいことが、伝えたいことがあっただろう。でも、彼女はそんなことはおくびにもださず楽しかったこと、親切にしてもらったこと、面白かったこと、不思議に思ったこと、明るく楽しい話題ばかりを書いていた。

僕は便箋の内容を最後まで読んだ後、もう一度最初から読み直した。
そしてまた読み終えるとそれを大切に折りたたみ、今度はアドベントカレンダーを手に持ってみた。
2枚の厚紙を貼り合わせて作られたそれは、表側の厚紙に日付が書かれていた。表側の厚紙にはビンゴカードのような切り取り線があり、これをめくると裏側に描かれた何かが表示されるという仕組みのようだ。
12月1日の日付をめくってみる。裏には「私はチョコが好きです。帰国したらODAIBAのチョコをおごってください」と書いてあった。
12月2日。「クッキーはサテラおばさんのクッキーが大好きです。チョコチップクッキーが食べたいです」
12月3日……。「大粒のザラメの飴玉が舐めたい。甘いものしばらく食べてないから、もうなんでもいい。糖分が欲しい。甘いもの食べたい」

どんどんめくっていき、最後に12月25日の日付をめくった。「はじめてデートした日、あなたがおごってくれたポイプルがまた食べたい。色鮮やかで、甘いグミ菓子。似たようなものならこの国にもあるけど、やっぱり味がちょっと違う」

全部お菓子のことしか書いてなかった。彼女は甘いものに目がないから、本当に辛かったんだろうな。僕はクスッと笑った。

「あー!その手紙、もしかして今頃届いたの?」
「アドベントカレンダー見たよ。日付とっくにすぎてるから、今日全部見ちゃったけどいいよね。それにしても頑張ったよね。何よりも食べること大好きな君が、よく頑張った」
「あー、そうだった。アドベントカレンダー……。なんか変なこと書いたような気がする。ごめん忘れて」
「忘れないよ。これからお菓子買いに行こうか。ポイプルぐらいならいくらでODAIBAのチョコは流石に高くてたくさんは買えないけどね」
「言ったな!なら買いに行こう」
作者にコメント

対戦作品一覧


ユーザーアイコン
作者:ホノミ お題:8月のクリスマス 必須要素:グミ 制限時間:1時間 読者:47 人 文字数:2791字 評価:2人
「メリークリスマス!」昨年はこうして貴方とクリスマス会なるものをしましたね。私は良く覚えていますよ。貴方もそうだったら嬉しいのだけれど。さて、こうして私が手紙を 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:8月のクリスマス 必須要素:グミ 制限時間:1時間 読者:60 人 文字数:2769字 評価:2人
わたしが小学生の時に住んでいた家には、大きなグミの木があった。春には白い花をつけて、六月ぐらいになると2センチくらいの赤い実がなる。 そう、だからあれは小学校 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:tomogata お題:8月のクリスマス 必須要素:グミ 制限時間:1時間 読者:22 人 文字数:1974字 評価:1人
彼女はクリスマスを楽しみにしていた。クリスマスツリーを眺めながら言った。もし、次のクリスマスも会うことができたなら。その時はーーその手紙が届いたのは夏のひどく暑 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:松竹輪子 お題:8月のクリスマス 必須要素:グミ 制限時間:1時間 読者:32 人 文字数:2118字 評価:1人
「クリスマスプレゼントちょうだい」「は? いったいどう言う意味だ?」「やだなあ、アキラ頭があまり良くないと思っていたけれど、とうとうこんな簡単な日本語が分からな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:8月のクリスマス 必須要素:グミ 制限時間:1時間 読者:29 人 文字数:3375字 評価:0人
数年に一度、普段はひきもしない風邪をこじらせることがある。それもどこでもらったのかも思い出せないような凶悪な風邪をもらう。「パブロンは一回三錠だよ」いつもそのよ 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
作者:inout お題:8月のクリスマス 必須要素:グミ 制限時間:1時間 読者:25 人 文字数:1917字 評価:0人
一年中クリスマスのところがあるんだ、と連れて来られたのはやけに薄暗い店で、入った瞬間にしまったと後悔したが、実際のところはただの店だった。クリスマス専門店、と言 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:にい お題:8月のクリスマス 必須要素:グミ 制限時間:1時間 読者:30 人 文字数:2543字 評価:0人
晴れ渡った空、すがすがしく青い海。 強い太陽光の下でサーフボードを抱えた彼は、オフシーズンを存分に満喫していた。暑苦しい白ひげも、三つ編みにしてリボンを結んで 〈続きを読む〉

tomogataの即興 小説


ユーザーアイコン
作者:tomogata お題:すごい伝説 制限時間:15分 読者:11 人 文字数:834字
ものすごく昔、まだ世界がなんか暗かった頃のはなし。とても強い神様となんか恐ろしい大魔王が戦って相打ちになって死んだ。そしてうまく説明できないけどなんかがどーにか 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:tomogata お題:遅すぎたにおい 制限時間:15分 読者:12 人 文字数:1238字
「これは……遅すぎたにおいがするぜ……!!」「ーーあ、ああっ……!!」オーブンを開けるとそこにはーー黒。一面の黒が広がっていた。焦げたにおいが溢れ出し、キッチン 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:tomogata お題:限界を超えた平和 制限時間:15分 読者:11 人 文字数:798字
そしてついに僕は平和を手に入れたのだ。「ああ、平和だなあ」縁側に腰掛け、愛用の湯のみで暖かい煎茶をすすりながら僕は思わずつぶやいた。膝の上では猫のタマが大きくの 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
地獄任務 ※未完
作者:tomogata お題:地獄任務 制限時間:15分 読者:9 人 文字数:635字
「地獄任務の生還者だって!?」「しっ……声が大きいぞ」「す、すいません」先輩に叱責を受ける。僕は慌てて声をおさえて謝罪した。「でも、本当何ですか?そうだとしたら 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:tomogata お題:求めていたのは新卒 制限時間:15分 読者:11 人 文字数:637字
あなたの経歴を教えてください。はっきり言って、我が社は新卒の学生から見てかなり好条件の企業だと思う。初任給はそこそこ。福利厚生は並以上、勤務地は首都圏を中心とし 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:tomogata お題:オチは家 制限時間:15分 読者:17 人 文字数:747字
「ーー番組の途中ですが、緊急のニュースをお伝えいたします。本日午後13:00頃、〇〇市内の住宅街にて刃物を持った男性が強盗に入ったとの通報がありました。〇〇市警 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:tomogata お題:間違った洞窟 制限時間:15分 読者:15 人 文字数:496字
俺が今から向かおうとしているのはこの川向こうの町だ。その街へ向かうには2つのルートがある。川に沿って街道沿いを南下して橋を渡る。ーーこのルートはもっとも安全で確 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:tomogata お題:8月のクリスマス 必須要素:グミ 制限時間:1時間 読者:22 人 文字数:1974字 評価:1人
彼女はクリスマスを楽しみにしていた。クリスマスツリーを眺めながら言った。もし、次のクリスマスも会うことができたなら。その時はーーその手紙が届いたのは夏のひどく暑 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:tomogata お題:光の就職 制限時間:15分 読者:17 人 文字数:817字
光の就職戦士と闇の就職戦士。二者の戦いの歴史を紐解けば、遥か5000年前まで遡る。だが、今起きている事件はかつての血塗られた歴史とはなんら関係はない。「なんとし 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:tomogata お題:小説家の結婚 制限時間:15分 読者:17 人 文字数:729字
そろそろ身を固めるべきかもしれない。俺も今年で30になる。結婚するには決して早くなどない。むしろ遅いくらいだと思う。同年代の友人は何人かすでに結婚していた。親に 〈続きを読む〉