お題:走る何でも屋 制限時間:15分 読者:24 人 文字数:847字

職業、運び屋。
 自転車で走る都内は、コンクリートで出来たジャングルだ。
 人や自動車の間をぶつからない様に、細心の注意を払って縫うように進んでいく。樹齢千年を超える大樹のようなビルとビルの間をショートカットして、野良猫に驚き、ゴキブリを踏みつけ、細いタイヤで空気を切り裂くように走る。
 背負った荷物は届け物。俺は自営のバイク便を営んでいた。

 きっかけは大企業に入った友人と酒を飲み交わした時の愚痴だった。
「書類を相手方に出すたびに出張届を出さなきゃいけないのだけれどこれが手間でさ。会社って基本的に正規の者だろうとちょっとしたものだろうと、手続きを全て統一するんだよね。そういうシステムが余計に時間や労力を食っているところがあるんだけど、上の人たちはそういう『面倒なことを面倒な状態』で生きてきた人たちなんだよ。未だにファックスとか使ってるの見て愕然としたよね」
 何か良い案はないかということで、俺が企業と企業を繋ぐパイプを買って出ることにしたのだ。
 その会社で、半径五キロメートル以内の企業に宛てて送られる書類に関しては俺が一任されてその日のうちに配る。会社には属しておらず、日雇いの仕事みたいなものなので、企業側は俺に対して社会保障などを気にする必要はない。しかし、自分で会社を立ち上げて法人化したので、個人で様々な義務が発生する。この辺りは友人と相談した時に決めたことだ。
 俺は自転車で走るのが好きだった。
 一時、ロードバイクの選手になろうと思ったこともあったが、レースの世界で精神を擦り減らすことに慣れることは無かった。単純に自転車に乗るのが好き、それ以上でもそれ以下でもない。
 大学を卒業してもその思いはあったが、たまたま入社した会社がブラックな会社で、個人の自由時間というものが作れなくなった。
 自転車に触れなくなって、俺は気を病んだ。
 それで会社を辞めて、毎日をただひたすら、何も考えずにペダルを回し続けた。
 それが今、こうやって金になっている。ありがたいことだと思う。
作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:走る何でも屋 制限時間:15分 読者:11 人 文字数:886字
高校の頃、英語の授業に20代前半の結構イケメンなアメリカ人教師(前職:何でも屋)が来た。授業は一人一人アメリカ人先生に名前を呼ばれ、前に出てマンツーマンで話をす 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:走る何でも屋 制限時間:15分 読者:18 人 文字数:1063字
「わたしは何でも屋です。どんな道でも走るって意味ですけど」 そう言って現れたのは、セミロングの髪をした小柄な女性だった。「これを見てください。わたしはこの国のど 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:なつめ お題:走る何でも屋 制限時間:15分 読者:90 人 文字数:425字
最近は、何でも商売にしてしまうのね。まだ、来ない友人をぼんやりと待ちながら、目の前の男を訝しげに眺める。待ち合わせ場所を変えれば良かった。男は、ナンパとも勧誘と 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
病室の花 ※未完
作者:匿名さん お題:走る何でも屋 制限時間:15分 読者:180 人 文字数:220字
私は走った。走って走って走りつづけた。妹のために私は走りつづけた。私の妹は大学3年生。文学部で、ロシア文学を学んでいる。そんな彼女はある日うけた健康診断で、レン 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:tomogata お題:楽観的な栄光 制限時間:15分 読者:10 人 文字数:490字
隣国との停戦条約が交わされた。初夏より5ヶ月もの間戦場にいた兵たちが故郷へと戻ってきた。兵らは英雄として讃えられ、生還者も死者も勲章を与えられた。戻ってきた兵は 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:あんこ お題:苦しみのダンス 制限時間:15分 読者:3 人 文字数:484字
生きるためなら、なんだってやってきた。泥水を啜り、ゴミ箱を漁り、道を行き交う人間共に媚びを売って施しを受けたりもした。飯にありつけない日だって何日もあったし、 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:空前絶後のプロポーズ 制限時間:15分 読者:15 人 文字数:1230字
「インパクトのある方がいいと思うんですよ」 はあ、と村木くんの言い分にわたしはうなずいた。 村木くんは向こう二週間以内にプロポーズするつもりらしい。彼女もその心 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:美亜@夢百合草 お題:ロシア式の娘 制限時間:15分 読者:17 人 文字数:541字
木枯らしが顔を刺す夜だった。ロングコートのポケットに手を突っ込んで、マフラーを巻いて、僕は大学からの帰路についていた。丘の上の道からは、色とりどりのイルミネーシ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:tomogata お題:煙草と天才 制限時間:15分 読者:7 人 文字数:486字
煙草と天才に因果関係はあるのか?僕が今手にしている新聞によると、「煙草の成分が脳を萎縮させる」と書かれていた。こちらの言説が信頼性の高いものか僕はよく知らないが 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:表田 圭 お題:計算ずくめのわずらい 制限時間:15分 読者:15 人 文字数:622字
人気のない公園で、学校帰りの私と彼女は並んでベンチに座った。公園と呼ばれてはいるけれど、遊具なんて滑り台が一台しかない。唯一あるそれも、手入れが行き届いておら 〈続きを読む〉

雷藤和太郎の即興 小説


ユーザーアイコン
作者:雷藤和太郎 お題:暑い投資 制限時間:15分 読者:7 人 文字数:881字
「気温と消費には強い相関関係があります」 ノースリーブの同僚は熱く語った。 小学生のような見た目に達観した人生観。人間を侮るような視線に薄い胸板と服装。男からの 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雷藤和太郎 お題:ロシア式のドロドロ 制限時間:15分 読者:12 人 文字数:782字
「蒸留されたアルコールは水よりも融点が低いので、キンキンに冷やしたアルコール度数の高い酒を飲むのが今ロシアで流行っているんですよ」 ロシア出身の女の子に言われた 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雷藤和太郎 お題:殺された世界 制限時間:15分 読者:21 人 文字数:835字
凄惨な光景を前に、人は沈黙するらしい。 息を飲むだとか、思考を放棄するだとか、目の前が真っ暗になるだとか、ちゃちな言葉を信じてもいなかった俺が、現状を眼前にし 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雷藤和太郎 お題:春の任務 制限時間:15分 読者:16 人 文字数:913字
僕は風。 ただの風じゃあない。春を運んでくる風だ。 僕の体は春の陽気をふんだんに孕み、厳冬を土の中で過ごしてきた植物を芽吹かせ、残雪を淡く溶かし、人々の額に、 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雷藤和太郎 お題:走る何でも屋 制限時間:15分 読者:24 人 文字数:847字
自転車で走る都内は、コンクリートで出来たジャングルだ。 人や自動車の間をぶつからない様に、細心の注意を払って縫うように進んでいく。樹齢千年を超える大樹のような 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雷藤和太郎 お題:素人の経験 制限時間:15分 読者:20 人 文字数:920字
屋台は異様に繁盛し、僕は鉄板の前に釘付けにされた。 それは偶然の重なりが引き起こしたハプニングであった。「ちょいと兄ちゃん」 夏祭りを一緒に回ろうと約束してい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雷藤和太郎 お題:とびだせ武器 制限時間:15分 読者:17 人 文字数:906字
「あっ!」 カシャン。と無慈悲な音とともに、黒ひげをモチーフにしたプラスチックの人形が宙を舞った。景子はナイフを樽に差した状態で固まってしまい、黒ひげ人形はあっ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雷藤和太郎 お題:潔白な太陽 制限時間:15分 読者:21 人 文字数:972字
太陽に罪はない。罪があるのだとすれば、それはいつだって利用する人間の側にあるのだ。 地球を覆う増え過ぎたスペースデブリの処理のために、一機の無人衛星が打ち上げ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雷藤和太郎 お題:苦い演技 制限時間:15分 読者:16 人 文字数:937字
「この中に一つだけ、すっごい苦いお饅頭があるの。で、三人が食べるから、誰がその苦いお饅頭を食べたかを当ててね。当てられたら、三人が何でも言うこと聞くよ」 エミは 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雷藤和太郎 お題:最後のダイエット 制限時間:15分 読者:29 人 文字数:963字
健康とはそこに「ある」ものだ。 自分がその状態を健康だと思えばそれは健康である。不健康であると気づきながらそれを無視するからこそ、人はダイエットを行うのだ。「 〈続きを読む〉