お題:近い理由 必須要素:ペロペロ 制限時間:1時間 読者:122 人 文字数:2576字 評価:1人

呪文はベイブのやつ
「わんわん」
飼い犬のペロを散歩させていると、普段驚くほど吠えないペロが突然吠えだした。そうしてリードをぐんぐんと引っ張って走り出そうとしてきた。
「どうしたペロ」
僕はペロが狂犬病にでもなってしまったのかと思って驚いてしまった。平素のペロという犬はお前は介護犬なのかというくらい吠えないのだ。介護犬でゴールデンレトリーバーなのか?いいところの犬なのか?毎週美容院言ってんのか?と思うほどに吠えない。人が来ても吠えないし、車が来ても吠えないし、ほかの犬とあっても吠えないし、猫とあっても吠えない。本当に全く吠えない犬っころで、予防接種の時とかも吠えないので、本当に犬なんだろうか?と思ってしまう犬だった。でも犬なのだ。見た目がどう見ても犬なのだ。もちろんそれは犬の形をした人ではない。人の両手両足を特殊な拘束器具で拘束してお尻の穴に尻尾みたいなのをぶっこんでエロい感じのピクシブでR-18のタグが付く感じにしているわけでもない。犬なのだ。完全に犬。実際犬くさい。ボルゾイと何だったか覚えていないんだけど、何かのミックス犬で雑種だ。あまりにも吠えないので舌でも引っこ抜かれたのか?と調べてみたことがあるけど、舌もちゃんとあった。その際ちょっとうううって言われた。ドキッてした。

そんな吠えない星からやってきたみたいな犬のペロが散歩の最中突然に、
「わんわん」
と吠えだした。僕は世界が終わるような大地震を予期してもこの犬っころは吠えないだろうと勝手にタカをくくっていた為、かなり動揺したわけ。
「世界の終りのような地震、それこそローランドエメリッヒ監督が作る映画みたいな感じになったら、自分で何とかしなくてはいけないな」
と考えており、ペロにはそのような際の予期、動物には人間には感じない危険を察知するみたいな能力があるとは聞いているものの、そのような事は一切期待せずに、その存在に対してありがたみを感じよう、日々の癒しを受けよう。つまりアニマルセラピーとしてのペロという割り切った考えを持っていた。その為、そのペロがいきなり、
「わんわん」
などと、あまりにもありきたりな吠え方をしたものだから、それだけでもこう、衝撃だった。
「狂犬病か!」
って思ってしまった。
それだったらむしろある日突然人語をしゃべりだした方が、びっくりしなかったかもしれない。
「ああ、やっぱり犬じゃなかったんだ」
と、納得して、それからはもういい話し相手になってもらっていたかもしれない。
「こないださー」
みたいな話し相手ですよ。そんでペロに、
「わかるわかる、そういう事もあるわなあ」
なんて返し方をしてもらいたかった。

そんなペロが、何でもない、何もない天気のいい土曜の昼間にいきなり、
「わんわん」
などと、吠えだし、挙句の果てには僕のリードを引っ張り出して、走ろうとまでしたものだから、これはいったい何なんだ?僕は今ここにいると、何かとんでもない目に合うんではないかと不安になってしまったのもうなずける話だと思う。
「こいつは今、何か、とんでもない危険を察知したんだ」
と、
「ごめんねペロ、勝手に危機察知能力なんてないと思ってごめんねペロ。ペロのその分野に対しては正直もう完全にあきらめていて、目もかけなくて、ただただアニマルセラピーのみとして扱っていてごめんねペロホントごめん」
と、思ってしまった。

僕は自宅でお酒を飲んでそれがいい酒で、いい気分になってきて、そんな最中にペロが近寄ってくると、
「ペロペロ~」
と言って、ペロの頬の肉とか皮とかを両手で揉みしだいて愛でる、他人には聞かれたくない見せたくないちょっとした癖があるのだけど、

その時、その散歩時、いきなりペロが、
「わんわん」
と吠えだして、リードを引っ張って逆にリードする勢いで走り出そうとしたものだから、そしてそれがとてつもない危機を察知したんだろうという僕の勝手な解釈によって、ペロに対して謝罪やら感謝やらがぐちゃぐちゃになって言葉にできない感情へと昇華し、酔ってもいない素面の状態なのに、思わず感極まって、
「ペロペロ~」
と言ってしまった。
屋外でいうのはもちろん初めてだった。それくらいもうなんというか感極まっていた。感涙していた。
ペロが吠えるというのは、
「わんわん」
と、あまりにも犬みたいな吠え方でも、吠えるというその行為自体に僕は感涙していた。普段のペロは犬のにおいがするルンバみたいなものだった。もちろん掃除はしない。でもあまりにも吠えないため、「もしかして近未来のルンバか?」
と、錯覚してしまうくらい吠えなかったのに、
「こういうUSBとかで充電するマシーンなのかも?」
と思ってしまうくらい吠えなかったのに、
「もうむしろルンバと改名するか?」
と思うようなわんこだったのに、
「今日のわんことかに出したら、なんて紹介されるんだろう?」
と、勝手な不安を抱いていたのに、

「ペロ吠えれんじゃん!」

「わんわん」
しかし、ペロはそんな事は今どうでもいいといわんばかりに、走ろうとしていた。地面に足がかっかっかって何度もなっている。

「ペロが獣の遺伝子を覚醒させただ!」
僕は、そう感じ、ここはもうペロに任せるしかないと走った。

ペロも走った。走るペロすら滅多に見れない。吠えない走らない風呂嫌がらない。小学校の避難訓練の標語みたいな存在だったペロ。

そんなペロも真の獣であったのだ。犬くさいルンバではなかったのだ。もちろんアイボでもない。僕はペロが牧羊犬をしているイメージを膨らませて、クララが立ったところを想像して、それでまた泣けた。更にバーラムユーって唱えて羊を行儀よく連れているところも想像して、その想像もまた泣けた。

感動した。

「わんわん」
ペロはスタンダードに吠えながら走り出して、すぐ次の角を曲がり、僕もそれに合わせて曲がると、そこに僕が好意を寄せているものの、一度もそんな話はしていない同じ職場の田口さんがおり、僕は田口さんの胸にダイレクトダイブしてしまい、

「・・・」
一瞬にして時が止まった。

その後、田口さんは犬が好きで、わーかわいいーとか言っていて、セーフだったけど、それからまたペロは吠えなくなったし走らなくなった。
作者にコメント

対戦作品一覧


ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:近い理由 必須要素:ペロペロ 制限時間:1時間 読者:122 人 文字数:2576字 評価:1人
「わんわん」飼い犬のペロを散歩させていると、普段驚くほど吠えないペロが突然吠えだした。そうしてリードをぐんぐんと引っ張って走り出そうとしてきた。「どうしたペロ」 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:inout お題:近い理由 必須要素:ペロペロ 制限時間:1時間 読者:136 人 文字数:2932字 評価:1人
雨がガラスを打っていた、楕円に広がり落ちる水は尽きることなく後から後から流れ落ちる。バス停の中の、ベンチから俺はそれを聞いた。意味のない待ち時間が苦痛だった、相 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:にい お題:近い理由 必須要素:ペロペロ 制限時間:1時間 読者:100 人 文字数:1938字 評価:0人
アルファとベータ。 ふたつの建物の行き来は禁じられていた。 完全に隔てられていればそんな規則がそもそも生まれるはずもなく、抜け道がいくつもあるからこそ問題は問 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:白風水雪 お題:近い理由 必須要素:ペロペロ 制限時間:1時間 読者:85 人 文字数:3474字 評価:0人
あいつと俺は、なんとなくだが似ている気がする。† ぼんやり見つめてしまい、やがて俺は当初の目的を思い出して歩き出していた。あいつは今日も自主トレだ。神社の木に 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:近い理由 必須要素:ペロペロ 制限時間:1時間 読者:141 人 文字数:3534字 評価:0人
ナホミが大学に来なくなったのは、ペットロスが理由らしい。 ペットなんて下宿で飼ってたのか、と思ったが、実家の犬だそうだ。 一週間ぐらいで、何とかまた出てくるよ 〈続きを読む〉

和委志千雅の即興 小説


ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:重い海辺 必須要素:にゃんまげ 制限時間:1時間 読者:19 人 文字数:2406字 評価:1人
暑くて暑くて死ぬと思ったので休みを取って海に行くと、なんだか若干空気感が重たかった。「なんだ?なんか修羅場でもあったのかしら?」重たい。塩のにおいが充満している 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:熱いマンション 必須要素:ゴキブリ 制限時間:15分 読者:13 人 文字数:1180字
平成最後の夏、さっきの話で書いたように夏が夏じゃない。もうこれは夏ではない。夏とは別のものだ。なんて思っていると、携帯が鳴ってiチャネルが何かをお知らせしてきた 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:弱い修道女 必須要素:直腸 制限時間:15分 読者:23 人 文字数:938字
平成最後の夏平成最後の夏って今年の夏はよく聞くが、その前に夏が夏っていう感じじゃない。だもんで平成最後の夏とか言われても、そんな場合じゃない死ぬんだぞ!っていう 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:計算ずくめの帝王 必須要素:主人公が誰かを愛す 制限時間:15分 読者:19 人 文字数:867字
「それでねえ、こないだ駅でばったりと、昔の知り合いとあってねえ・・・」「ああ、そうなの、うん」僕は、佐々木さんの話に相槌に順当な相槌をした。したつもりだった。「 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:彼女と同情 必須要素:バツ印 制限時間:15分 読者:21 人 文字数:751字
彼女の手の甲にはバツ印があった。「ん、なんですかそれ?」令呪、FGOですか?「ああ、これですか?これはですねえ・・・」そういうと彼女は、若干中腰になって手を両サ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:小説家たちの始まり 必須要素:新約聖書 制限時間:15分 読者:33 人 文字数:811字
ファミマで、育てるサラダみたいなのが売ってて、その隣に育てる小説家っていうのが売ってた。「育てる小説家?なんだべ、これ」商品を手に取り説明書きを読んでみると、種 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:犬の狙撃手 必須要素:パチ○コ玉 制限時間:1時間 読者:31 人 文字数:2032字 評価:1人
急なんだけども命を狙われる機会があった。というのも、なんでか他人が車のトランクに押し込められるところを目撃してしまい、そのことを警察に通報して、たまたまナンバー 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:白い悲しみ 必須要素:首相 制限時間:15分 読者:22 人 文字数:952字
夏の山に行く際は、ハチに注意して白っぽい格好で行きましょうって言われた。夏の山に興味はなかったが、フィトンチッドがしたかったので、結果的に山に行くことになった。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:でかい裏切り 必須要素: 制限時間:15分 読者:28 人 文字数:921字
友人がドライブに行こうと言い出した。興味がないのでとお断りの連絡をラインに入れたが、しかしすでに家の前の道から意味ありげなクラクションの音がしていた。パーパー言 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:うわ・・・私の年収、罰 必須要素:800字以内 制限時間:15分 読者:24 人 文字数:808字
800字以内という必須要素が出た。これにはとても好感が持てた。私のいつもの感じで行けば、800字はちょうどよいためである。これが100字以内とかだったら、逆にど 〈続きを読む〉