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お題:ラストは誰か 必須要素:首相 制限時間:1時間 読者:15 人 文字数:1930字 評価:0人

いとしのラディー
 この国は東西南北、四方八方、過酷な自然に囲まれている。昔、移住してきた私たちの祖先は、ジェット機も大型フェリーもなく、よくぞ幾多の困難を乗り越えて、ここにやってきたものだわ。今日も空気が住んでいるようで、すぐ背後に迫る山がくっきりと姿を現している。

 私は女兵士として首相に任命されて、この地で戦い、この地を守ってきたの。この国に攻めてきた二人の男性兵士二人を一発の銃弾で同時に撃ち抜いたこともあったわ。

 やっと平和が訪れたのね。私も任務を解かれて、その記念に絵師に頼んで、太ももに素敵な男性の絵を描いてもらうことにしたのよ。戦地で散々戦いに明け暮れて、恋愛をする暇もなかったんだもの。それくらい、いいわよね。

 私はね、この太ももの男性に『ラディー』と名付けたの。だって、名前があった方が絶対に親しみが湧くでしょ。寂しくなると、ラディーに話ししかけて、孤独を癒したわ。不思議なことよね。なんだかラディーが生きているような気がして、私の話に相槌を売ったり、笑ったりしてくれているような気がしたの。

 特殊な絵の具でも使ったのかしら? シャワーを浴びてもラディーの顔は落ちなくて……。それに私が話しかける度に段々、ラディーの顔が生き生きして、それに顔が大きくなってきているような気がしたの。私は一生懸命食べたのだけれども、それがラディーの栄養分になっているのか、あまり食べた気持ちもしなくなってきたわ。

 そのうちラディーが話し出すようになってきたわ。まあ、ラディー可愛さの、私の幻聴幻覚かもしれないけどね。一人でいつも太ももに向かって喋っているから、私の友達も気味悪がっていたわ。一人、一人と友達が去って行ったけれども、私はラディーがいるだけで幸せだったの。

 ラディーはますます精悍な青年に成長して行ったわ。私はね、こんな素敵な男性といつも一緒なのが嬉しくて、嬉しくて……。でも誰かがラディーのことを好きになったら、私の想いも報われないでしょ? だから、誰にもこの太ももは見せなかったの。私はラディーにキスをして、愛を語り合ったわ。とっても幸せだったのよ。

 でもね……。ある日、気がついたら、女性をナンパするような街角にいたの。私は意識を失っていたんだけど、すぐにラディーの仕業だって気づいたわ。全く、男って一人の女だけでは満足できないのかしら?
「ちょっと、ラディー。私って女がいながら、何をしているのよ!!」
私は膨れっ面になって、怒ってみたんだけどね。
「君はちょっと黙っていて……。すぐ終わるからね」
って、私に絆創膏を貼って閉じ込めちゃったの。あらら、いつの間にか立場が逆転しちゃった。ラディーはどんどん成長して、私がラディーの体の一部になっちゃったのね。

 全くもう……。私の体だったのに……。

「ねえ、絵師のところに行って、可愛い女の子を腕に描いてもらわない? あなたも満足でしょ?」
そう提案したのは私。
「いいのかい? 君って人がいるのに」
ラディーは驚いたようだけれども、結局女好きらしい彼は、絵師のところに行って、可愛らしい女の子を描いてもらったわ。ラディーはその子に『シンディー』って名前をつけたの。今、親密に交際しているみたい。だけど、最後はどうなるのかわかっていないところが、シンディーに魅せられてしまった哀れな男よね。

 結局、この肉体のラストは誰か? ……って話よね。もしかしたら、私の前任者がいたかもしれないけれども、今となっては謎よ。絆創膏で閉じ込められたままの私はどんどん小さくなっていくの。シンディーはどんどん成長しているけれども、ラディーはわかっているのかしら?

 絵師が『私が描いた絵はあなたを不幸にします』って言っていたけれども、このことだったのね。でも愛する人のために消えていくのも、なんだかロマンチックで幸せじゃない?

 あ、そうだわ。ラディーもシンディーも眠っている時に、誰かの体に私を描いて……って絵師に頼みに行かなくてはならないわ。こんな小さな体でわかるかしら? でも絵師は『困ったらいつでもおいで』って言ってくれたから、わかってくれるわよね。困るってこういうことだったのかって感じだけどさ……。

 そうだ……。どこかの国では、ハロウィンって行事があって、仮装したりするのよね。昔、なんかの本で読んだことがあるわ。腕に顔の刺青のシールを貼ったりもするのよね。ハロウィンが終わったらすぐに剥がした方がいいわよ。いつか刺青のシールの顔の人になっていたら、笑い事で済まないものね。もし、頬にペイントするんだったら、私の顔を描いてね。私の顔はこんな顔よ。→ ٩(^‿^)۶

 
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