お題:愛すべき螺旋 必須要素:夏目漱石 制限時間:15分 読者:299 人 文字数:1029字

愛すべき螺旋
俺がその螺旋に足を踏み入れたのは、何百年前のことだっただろうか。
あるときは武家の娘、あるときは遊女、あるときは名家のご令嬢、あるときは、あるときは。
俺はそうやってこの何百年も肉体を「乗り換える」ことで生きてきたのだった。
人によっちゃ、その能力を「憑依能力」なんて言うのかもしれねえな。

俺が生を受けたのは最初は男だったと記憶しているが、その後はずっと女として暮らしている。
なにせ、男に生まれちゃ戦に巻き込まれるかもしれねえ。徴兵されるかもしれねえ。
そういったとっさの時に、それでも肉体を乗り換えることができるかどうか、イマイチ自信がなかったのもあって、俺はその時々で、俺に惚れた男に守ってもらえる「女の身体」を選んできた。
まあ、俺なりの処世術、ってやつだな。

それでも男としての性欲はまったく耐えることがなかった。三つ子の魂百までというが、性欲もそうだなんてな。
おかげさんで、憑依する肉体ごとに俺は男として自分の女の身体ってやつを堪能することができた。

面白い体験もしてきた。
あれは明治時代だったか、遊女として過ごしていたときなど、例の文豪、夏目漱石がやってきて一晩寝たこともあった。
俺のテクニックでひいひい言ってたアイツがその後、千円札の顔になるなんて、当時は思いもしなかったもんだ。

そして、今。俺は新たな身体への乗り換えを計画中だ。
「兄貴、今度はどんな身体に乗り換えるんです?」
「ああ、そうさなあ。今度は母娘なんてどうかね。なるべく若そうなのを見繕ってさ」
「すると、俺が娘ですかね?」
「どっちでもいいさ。なんならジャンケンで決めるか?」

そんなことを話している、俺の横に座っているクラスメイトの雪乃は、何を隠そう俺と同じ憑依能力者らしい。偶然、前は女教師だった俺が、教え子のこの肉体に乗り移ったところを見られていたのだが、「あんたもですかい」なんていうんで、話をきいたら戦前あたりから憑依能力で俺と同じように肉体を渡り歩いているらしい。
俺は雪乃の豊満な胸をじっと見ながらため息をついた。

「何ため息付いて俺の胸、見てるんです?」
「いや、今度乗り換えるときは、俺も巨乳にしようなんてな」
「なぁに言ってるんです。亜希センパイ。巨乳じゃなくても私、亜希センパイのこと好きです……んっ……」
人気のないことをいいことに、濃密なキスをしてくる。
やれやれ。こいつとの腐れ縁、愛すべき螺旋はこれからも続いていきそうだ。
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