お題:夏の電話 制限時間:15分 読者:25 人 文字数:868字

近距離
「もしもし」
 受話器を取って応答した瞬間、電話はぷっつりと切れた。ああ、いつもの電話だな、と、私は思う。
 この無言電話はいたずらではない。叔父からの生存確認の電話である。
 きっかり夜の10時。……厄介なことに、これを無視し続けていると、警察沙汰になりかねない。1度うっかり外出している間に、そんなことがあった。
 別に、自由が制限されているわけではなく、携帯電話というものがあるから、別に外出していても構わないのだ。ただ、10時の電話に出ないと厄介なことになる。
 少しでもしゃべったらどうなのか、と思うのはもうあきらめた。多分、叔父の常識は可聴域を超えているのだ。
 叔父はひどく人見知りで、なによりも人間が嫌いである。

 叔父の人間嫌いは常軌を逸している。
 仕事で学校に出かける以外にはほとんど外出などすることはなく、鍵はかかりっぱなしだ。インターフォンはそのままただ錆びておかせるためにあるかのようだ。
 考えてみれば、会話らしき会話が発生したことはない。

 第一、私は叔父の家に下宿しているのである。一言直接ノックでもすれば事足りるのではないか。

「ねえ、おかしくない?」
「おかしい……」
「おかしいね……」
 久しぶりに顔を合わせた父と母は心配そうに顔を見合わせた。叔父なら大丈夫か、と快く送り出してくれたのは、叔父ならプラスマイナス0であるからノーカウント、ということらしい。
 確かに叔父は全くもって私に干渉することはない。しかし、同じ家に住んでいてほとんど顔を合わせることはない、というのは不思議である。
「電話なんてする人じゃないのに」
 そこか、と思った。
「まあ、確かによろしくとは言ったけど……」
「人は変わるもんだねえ」
 父と母はのんびり言った。
 あの無言電話は、よほど特別なはからいらしかった。
「兄さんが電話なんてものさわれるとは思ってなかったな。なんだよ、ただ単に出ないだけなのか。使い方を知らないと思ってたんだけどな」
 10時の電話が鳴ったが、切れた。帰省を思い出したのだろう。
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