お題:理想的な宇宙 制限時間:15分 読者:14 人 文字数:957字

誘発宇宙と、なれのはて
 ねぇ、空を飛びたいって、思う?

「空?」

 君は不思議そうに呟き返し、屋上から高く澄み渡った青を見上げた。
 そうして、ふふ。と笑みを含ませる。

「空なんて、すぐそばにあるじゃない。私はもっと高くに行きたい」

 それは───宇宙?

「月と星がデートをしてる、光年で巡る時はどんな風?
 太陽の熱で、何を溶かしてしまうかしら?
 ああ、とてもとても、魅惑的ですてきね!」



 そんなことを彼女が熱弁した夜に、一人夜道を歩いていた。
 宇宙、宇宙か。

 見上げれば確かに今は、空色は見えなくて。
 ぼんやりと浮かぶ三日月が、鋭利な刃物のようでもある。

 星はさ、散らばった鋲に見えてさ。
 太陽は熔鉱炉そのまんまだよ。
 近づいたらどろりと溶けて、死んでしまう。



 宇宙なんて酷な空間でしかないよ。
 行くべきじゃあないよ。
 憧れたりなんかしちゃだめだよ。

    ───もしその言葉を、もっと早くに彼女に伝えられていたならば。



 夜の高層ビルの天辺で、彼女は翼を広げた。
 純白の天使にも、漆黒の悪魔にもなれなかった君は
 真っ逆さまに地面に落ちて、弾け飛ぶ躯体は、もう。



 破損がひどい遺体に、対面することもできないけれど
 君の魂がここにないことはわかるんだよ。
 ねえ、君は空に、───いいや、宇宙に、本当に行きたかったのかな?
 もしかしたらその願いは叶っているのかもしれないな。


『魅惑的ですてきね』


 甘いその言葉が脳裏から離れない。
 死んだら何処に行くかなんて知らないけれど、
 もし、君の魂が高く高く、空をこえ、大気圏を突き抜けて
 無重力の空間に至っているのならば。

 月の色は美しい?太陽は眩しくない?
 星とデートすることは、叶うのかな?



 本当は知っている。
 月はぼこぼこのクレーター。
 太陽は間近で見れば目を灼いて死にも至るだろう。

 デートに出かけてご覧。
 その先にあるのはブラックホールだから。

 なにもかも飲み込む闇に、君は堕ちていくの?



 ああ、ごめんね。
 脅すつもりじゃあ、ないんだよ。

 ただ伝えに行かなきゃな。
 そこは恐ろしい場所だから。

 私もいこうねと。
 今、高層ビルのてっぺんにいる。
作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:キュオン お題:輝く魚 制限時間:15分 読者:9 人 文字数:523字
きらりきらりと魚たちが水中にその鱗をきらめかせている。太陽の光を反射した一瞬のその輝きは彼らの短い生そのもののよう。この広い深い海をきらりきらり必死に生きる彼 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:がしゃ お題:永遠の部屋 制限時間:15分 読者:9 人 文字数:1108字
目をあける。目を閉じる。さぁ、起床の時間だ。僕は朝起きるときのこの動作をいつも欠かさない。そうした後の、窓の外の景色は朝日を燦燦と讃えていて神々しく見えてくる。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:にい お題:哀れな夕飯 制限時間:15分 読者:10 人 文字数:754字
裏手の林で捕まえた子羊をローストしておいしくいただいた。小洒落た言い方をしてみたが、ようは直火で焼いただけだ。じっさい、その肉が羊であったかもよくわからない。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
※未完
作者:紡木 詠士*小説家になろう お題:純粋な戦争 制限時間:15分 読者:9 人 文字数:373字
「いただきます」開始の号令により3年2組の昼食が始まる。今日の給食は豪華であった。ご飯、牛乳、ピーマンの肉詰め、ごぼうサラダ、わかめスープ、デザートにクレープ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:九夜月 お題:儚い体 制限時間:15分 読者:3 人 文字数:521字
駅のホームでふと何気なく目をひくものがあった。なんの、特別なものではない女の子の笑顔。隣の彼氏に向けられた笑顔は、私には輝いて見えて特別に眩しかった。将来私も結 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
作者:こあら お題:暗黒の音楽 制限時間:15分 読者:11 人 文字数:790字
僕は作曲者だ。ピアノに手を置き、頭の中で音楽を作りながら指で実際に奏でていく。その音たちを紙に書き込んでいき、僕の音は作られる。僕は楽しい音楽が好きだ。跳ねるよ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:暗黒の音楽 制限時間:15分 読者:3 人 文字数:423字
暗闇の中でピアノの音が響いている.音は目の前の音楽室から聞こえてきているようだ.今はもう真夜中だ,こんな時間にピアノがなっているのはおかしい.おかしいといえばな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:夜のピアニスト 制限時間:15分 読者:12 人 文字数:898字
ただ彼女はピアノを奏でているだけなのだ。そのことが、何だか急に愛しく思えてきた。 深夜二時に音楽室に行くと、ピアノを弾いている女生徒の幽霊がいる。 たったそれ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:鬼龍院asanuma お題:夜のピアニスト 制限時間:15分 読者:14 人 文字数:709字
金曜日の夜は、華やかである。 ここ、スターダストラウンジは都会の夜景が一望できるバーで、夜のデートスポットとしてカップルによく利用されている。今日は金曜日の夜 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: お題:淡い世界 制限時間:15分 読者:10 人 文字数:920字
ゆらぐ光、ほどける輪郭、網膜に滲む世界、水彩絵の具を使えば優しい人だと思ってもらえるんじゃないかと、そんな妄執に囚われたのはいったいいつのことだったのか。おそ 〈続きを読む〉

saradabaaの即興 小説


ユーザーアイコン
作者:saradabaa お題:頭の中のダンス 制限時間:15分 読者:8 人 文字数:1047字
目が痛くてさ。 そこから話は始まるんだけど。 視覚からは光も色も文字も言葉も 色んな情報が入ってくるだろう。 ぐるぐる、ぐるぐる。 頭ん中、回り続けてさ。 目 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:saradabaa お題:贖罪の雲 制限時間:15分 読者:11 人 文字数:1022字
───落ちていく。 ───どこまでも深くに。 ここが地獄と呼ばれる場所ならば 私はそれを素直に受け入れるしかない。 生前に嫉妬に狂って多くのうら若い命を奪った 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:saradabaa お題:僕の好きな母性 制限時間:15分 読者:19 人 文字数:1146字
1/25 猫を飼うことにしました。 名前は、チビ助です。 3/14 チビ助次第に育っています。 一年も経てば、立派になるのでしょうか。 8/01 もうチビ助の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:saradabaa お題:理想的な宇宙 制限時間:15分 読者:14 人 文字数:957字
ねぇ、空を飛びたいって、思う?「空?」 君は不思議そうに呟き返し、屋上から高く澄み渡った青を見上げた。 そうして、ふふ。と笑みを含ませる。「空なんて、すぐそば 〈続きを読む〉