お題:理想的な宇宙 制限時間:15分 読者:55 人 文字数:957字

誘発宇宙と、なれのはて
 ねぇ、空を飛びたいって、思う?

「空?」

 君は不思議そうに呟き返し、屋上から高く澄み渡った青を見上げた。
 そうして、ふふ。と笑みを含ませる。

「空なんて、すぐそばにあるじゃない。私はもっと高くに行きたい」

 それは───宇宙?

「月と星がデートをしてる、光年で巡る時はどんな風?
 太陽の熱で、何を溶かしてしまうかしら?
 ああ、とてもとても、魅惑的ですてきね!」



 そんなことを彼女が熱弁した夜に、一人夜道を歩いていた。
 宇宙、宇宙か。

 見上げれば確かに今は、空色は見えなくて。
 ぼんやりと浮かぶ三日月が、鋭利な刃物のようでもある。

 星はさ、散らばった鋲に見えてさ。
 太陽は熔鉱炉そのまんまだよ。
 近づいたらどろりと溶けて、死んでしまう。



 宇宙なんて酷な空間でしかないよ。
 行くべきじゃあないよ。
 憧れたりなんかしちゃだめだよ。

    ───もしその言葉を、もっと早くに彼女に伝えられていたならば。



 夜の高層ビルの天辺で、彼女は翼を広げた。
 純白の天使にも、漆黒の悪魔にもなれなかった君は
 真っ逆さまに地面に落ちて、弾け飛ぶ躯体は、もう。



 破損がひどい遺体に、対面することもできないけれど
 君の魂がここにないことはわかるんだよ。
 ねえ、君は空に、───いいや、宇宙に、本当に行きたかったのかな?
 もしかしたらその願いは叶っているのかもしれないな。


『魅惑的ですてきね』


 甘いその言葉が脳裏から離れない。
 死んだら何処に行くかなんて知らないけれど、
 もし、君の魂が高く高く、空をこえ、大気圏を突き抜けて
 無重力の空間に至っているのならば。

 月の色は美しい?太陽は眩しくない?
 星とデートすることは、叶うのかな?



 本当は知っている。
 月はぼこぼこのクレーター。
 太陽は間近で見れば目を灼いて死にも至るだろう。

 デートに出かけてご覧。
 その先にあるのはブラックホールだから。

 なにもかも飲み込む闇に、君は堕ちていくの?



 ああ、ごめんね。
 脅すつもりじゃあ、ないんだよ。

 ただ伝えに行かなきゃな。
 そこは恐ろしい場所だから。

 私もいこうねと。
 今、高層ビルのてっぺんにいる。
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