お題:理想的な宇宙 制限時間:15分 読者:37 人 文字数:957字

誘発宇宙と、なれのはて
 ねぇ、空を飛びたいって、思う?

「空?」

 君は不思議そうに呟き返し、屋上から高く澄み渡った青を見上げた。
 そうして、ふふ。と笑みを含ませる。

「空なんて、すぐそばにあるじゃない。私はもっと高くに行きたい」

 それは───宇宙?

「月と星がデートをしてる、光年で巡る時はどんな風?
 太陽の熱で、何を溶かしてしまうかしら?
 ああ、とてもとても、魅惑的ですてきね!」



 そんなことを彼女が熱弁した夜に、一人夜道を歩いていた。
 宇宙、宇宙か。

 見上げれば確かに今は、空色は見えなくて。
 ぼんやりと浮かぶ三日月が、鋭利な刃物のようでもある。

 星はさ、散らばった鋲に見えてさ。
 太陽は熔鉱炉そのまんまだよ。
 近づいたらどろりと溶けて、死んでしまう。



 宇宙なんて酷な空間でしかないよ。
 行くべきじゃあないよ。
 憧れたりなんかしちゃだめだよ。

    ───もしその言葉を、もっと早くに彼女に伝えられていたならば。



 夜の高層ビルの天辺で、彼女は翼を広げた。
 純白の天使にも、漆黒の悪魔にもなれなかった君は
 真っ逆さまに地面に落ちて、弾け飛ぶ躯体は、もう。



 破損がひどい遺体に、対面することもできないけれど
 君の魂がここにないことはわかるんだよ。
 ねえ、君は空に、───いいや、宇宙に、本当に行きたかったのかな?
 もしかしたらその願いは叶っているのかもしれないな。


『魅惑的ですてきね』


 甘いその言葉が脳裏から離れない。
 死んだら何処に行くかなんて知らないけれど、
 もし、君の魂が高く高く、空をこえ、大気圏を突き抜けて
 無重力の空間に至っているのならば。

 月の色は美しい?太陽は眩しくない?
 星とデートすることは、叶うのかな?



 本当は知っている。
 月はぼこぼこのクレーター。
 太陽は間近で見れば目を灼いて死にも至るだろう。

 デートに出かけてご覧。
 その先にあるのはブラックホールだから。

 なにもかも飲み込む闇に、君は堕ちていくの?



 ああ、ごめんね。
 脅すつもりじゃあ、ないんだよ。

 ただ伝えに行かなきゃな。
 そこは恐ろしい場所だから。

 私もいこうねと。
 今、高層ビルのてっぺんにいる。
作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:いしゅと お題:未来の税理士 制限時間:15分 読者:8 人 文字数:863字
西暦22××年現在、紙の書籍は全く割にあわない過去の遺物と化している。正規のルートで出版し売れたとすると、その売上利益にかかる所得税が電子書籍の数倍にも及ぶのだ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:むにゃむにゃ@即興 お題:汚い蟻 制限時間:15分 読者:6 人 文字数:811字
夜。仕事で疲れた私は電車に揺られていた。終電なので人は少ない。窓には痩せこけた顔が映る。あまりに老けて見えたので、思わず自分の年齢が飛んでしまった。俺は二十七歳 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:日ノ宮理李@バブみ道団長 お題:汚い蟻 制限時間:15分 読者:15 人 文字数:1062字
蟻が群がる理由は餌を求めたり、巣を作るためである。 鉄壁と呼ばれる鉄蟻の巣が硬いのは、溶接蟻と、運搬蟻の強さといえよう。「……我々にもあの技術があれば戦えると 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
黄色い沈黙 ※未完
作者:匿名さん お題:黄色い沈黙 制限時間:15分 読者:1 人 文字数:648字
ふらっと立ち寄った誰かの個展で、なんとなく気になった絵があった。 名も知らない誰かさんの書いた、何の変哲もない絵。 一面の田舎道の中に、ただ一輪ひまわりのよう 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
SILENCE ※未完
作者:辛ぇなぁ 富士口勇生 お題:黄色い沈黙 制限時間:15分 読者:14 人 文字数:569字
目が覚めて真っ先に目に飛び込んできたのは黄色いペンキらしきもので書かれた「SILENCE」という文字だった。英語には自信がないがおそらく「沈黙」という意味だろう 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
作者:月海の魔導師 お題:秋の天使 制限時間:15分 読者:5 人 文字数:638字
前回のお題も入ってます「ねぇあんたどうすんの?」そんな声が暗い部屋の中で聞こえていた。俺がそっちを見るとパソコンの光でかろうじて顔が確認できた。「んー向こうが出 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
天賦の才 ※未完
作者:形成れい お題:情熱的な男の子 制限時間:15分 読者:13 人 文字数:879字
冴えている人間と冴えない人間が世の中にはいる。 こういう簡単なことに気付いたのは、小学生の時からだった。その頃の僕は勉強は並、運動はやや苦手、見た目も並、とい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:ぐちゃぐちゃの妻 制限時間:15分 読者:24 人 文字数:1173字
「君を妻に会わせよう」と田川さんはわたしを自宅に呼んだ。 田川さんは大学の先輩だ。同じ学部で同じサークル、彼女が途切れたことのないモテる人だった。 確かにルッ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:楽観的な太陽 制限時間:15分 読者:8 人 文字数:826字
「こんなもの使うなんて正気とは思えない」 地表の雪に冷やされて地下壕内の壁はひんやりと、内部を冷蔵庫のように冷やす。 バンカーの最奥にある指令所も例外ではなく冷 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:黒い冒険 制限時間:15分 読者:3 人 文字数:780字
おれは首を傾げた。いつも通り仕事を終えたおれは終電にギリギリ滑り込んで、適当な席に腰を下ろしたはずだった。疲れて眠ってしまったのだろうか。しかし駅を出た記憶も 〈続きを読む〉

saradabaaの即興 小説


ユーザーアイコン
作者:saradabaa お題:頭の中のダンス 制限時間:15分 読者:20 人 文字数:1047字
目が痛くてさ。 そこから話は始まるんだけど。 視覚からは光も色も文字も言葉も 色んな情報が入ってくるだろう。 ぐるぐる、ぐるぐる。 頭ん中、回り続けてさ。 目 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:saradabaa お題:贖罪の雲 制限時間:15分 読者:25 人 文字数:1022字
───落ちていく。 ───どこまでも深くに。 ここが地獄と呼ばれる場所ならば 私はそれを素直に受け入れるしかない。 生前に嫉妬に狂って多くのうら若い命を奪った 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:saradabaa お題:僕の好きな母性 制限時間:15分 読者:34 人 文字数:1146字
1/25 猫を飼うことにしました。 名前は、チビ助です。 3/14 チビ助次第に育っています。 一年も経てば、立派になるのでしょうか。 8/01 もうチビ助の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:saradabaa お題:理想的な宇宙 制限時間:15分 読者:37 人 文字数:957字
ねぇ、空を飛びたいって、思う?「空?」 君は不思議そうに呟き返し、屋上から高く澄み渡った青を見上げた。 そうして、ふふ。と笑みを含ませる。「空なんて、すぐそば 〈続きを読む〉