お題:部屋とYシャツと悪意 制限時間:15分 読者:91 人 文字数:802字

道理に合わない
 失踪した兄の部屋を片付けるのはかなり手間だった。
 恐ろしいくらいに物が多かったし、また、とっておけばいいのか、捨てていいかどうか微妙なラインのものがいくつもあった。
 冷蔵庫の足の速いものはいくつも勝手に処分したが、冷蔵庫で奇妙なものを見つけた。なぜか、それらは冷蔵庫にあった。
 ひとつには、何人もの筆跡を真似した紙。真似した、と分かったのは、机の上に置いてあった深い青色のインクがそれだったからだ。老いも若きも、男も女も、兄はくるくる筆跡を変えて試し書きをしていた。文面はさして面白いことはない、新聞の記事だった。
 奇妙な領収書。同じ時刻のものが3枚。駅前の喫茶店と、近所の本屋。遠くのスーパー。一見して何の問題もないが、日付と時刻を見ると、だいたい同じだった。これらの店に同時にゆくことはできない――。
 戸棚を漁ってみると、青色ばかり、無数に絵の具があった。
 ギターがあった。ただし、弦はなかった。小説の本の、下が3つ。兄はいったい、理屈に合わないこんなものばかり集めて何をしていたというのだろう?
 一つだけ、なんとか私の理屈で理解できるものはあった。
 対刃のワイシャツが目を引いた。兄は武闘派ではないし、間違っても他人とけんかするような性格ではない。ただ、過剰に人間不審なところが合って、このような小物は、不安を解消するのにかすかには役に立ったのかもしれない。これだけは、心の動きが理解できたので、なんとかほっとすることができた。おかしな話だが。

 死んだ、というのはないだろうな、と思っていた。失踪といっても、家族の前から姿を消したということに過ぎない。兄はとても頭が良いし、どこへいっても水準くらいにはうまくやるだろう。ただ、妙に理屈に合わないところがあって、薄着で雪国に行くだとか、そういった、テレビの刑事ドラマではなんのヒントにもならない、妙な妨害工作を施していっている。
作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:夢路 お題:可愛いお天気雨 制限時間:15分 読者:4 人 文字数:513字
雨は嫌いだ。特にこうやって晴れている日に、いきなり降り付けてくる天気雨は。 まるで人をあざ笑うような雨だ。こんなに晴れているのに。 学校の帰り道、神社に受験の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:まどろみ#ゆ お題:おいでよ投資 制限時間:15分 読者:4 人 文字数:407字
「投資大歓迎!」「きっと儲かる!」「未来の貴方は大富豪様!」という中々の謳い文句を見た。誰がこんな会社の株買うんだ・・・と思っていたが、以外と集まっているらしい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:捨てられた略奪 制限時間:15分 読者:2 人 文字数:529字
人は人の物を奪って生き残る。それがこの世界の摂理であり倫理であった。だがある時、とある国の王がある提案した。 「このまま人が奪い合いを続ければいずれ人は滅びる 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:RA907 お題:近い小説合宿 制限時間:15分 読者:8 人 文字数:432字
筆が進まないのは自宅のあるアパートが合宿の拠点なせいだ。「ここ俺の住んでるアパートなんだけど」何人かの前でそう言ってしまったのが不味かった。当然の権利のように 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:混沌の略奪 制限時間:15分 読者:3 人 文字数:498字
ズバァン! そんな音が響いた直後、俺の前に立っていた男が赤い液体を撒き散らしながら行かに倒れた。 「嘘だろ・・・・・・そんな・・・・・・」 今まで一緒に戦って 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
作者:雨待ちとかげ お題:蓋然性のあるババァ 制限時間:15分 読者:6 人 文字数:634字
「そうなるべきなんだよ」 老婆はしたり顔でそう言った。 身にまとうのは黒い地味なローブ。 まがった腰、しょぼくれた目、膨れた鼻、意地悪げな表情。 魔法使いと呼ば 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:そらとぶししゃも お題:穏やかな母性 制限時間:15分 読者:2 人 文字数:671字
そもそも、母性とはいったいなんなのか。「そういや最近、バブみやら何やらよく聞くようになった気がするんだけど、あれってなんなん?母性の対義語?」「え。しらねーけ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:裏切りの借金 制限時間:15分 読者:10 人 文字数:1348字
「あなたはわたしに対して、5000万円の借金を負っていることは忘れていないよね?」 突然の彼女の言葉に、俺は吹き出しそうになった。「5000万円!?」 バカな、 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:そらとぶししゃも お題:裏切りの借金 制限時間:15分 読者:3 人 文字数:556字
思えば、逃げてばかりの人生でした。 ある時は夢を語ったこの口で、またある時は挫折を嘯き。 苦しいことを前にしては、勝手に自分を追いつめて、勝手に体を痛めつけま 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
迎え ※未完
作者:美亜@夢百合草庵 お題:彼のババァ 制限時間:15分 読者:22 人 文字数:363字
運転席で徹がぼやいた。「そいや、こんくらいの時だったな。バァさんが、初めて出てったのは」入道雲が峠の向こうで輝いていた。彼は眩しそうに目を細めていた。冷房を効か 〈続きを読む〉

ぽつタイプライターの即興 小説


ユーザーアイコン
作者:ぽつタイプライター お題:大人の計画 制限時間:15分 読者:23 人 文字数:868字
「14歳で不老不死になる」、と決意して、気が付けば42歳になっていた。 若いといえばまだ若い。これからの人生の中では、今が一番若い。 目の前の石の入ったフラスコ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ぽつタイプライター お題:有名な眠り 制限時間:15分 読者:31 人 文字数:1095字
「まるで死んでいるみたいだな」 ホルツの声は震えていた。語尾に、「死んでいるように見えるが、生きている」というニュアンスがにじんでいた。目の前のジョアンは、たし 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ぽつタイプライター お題:犬の友人 制限時間:15分 読者:37 人 文字数:1246字
俺が前足で、アイツが後ろ足。そういう役割分担だった。 墓を荒らして、俺が死体にロープを引っかける。そしてそのままずるずるひっぱる。それで、アイツが後ろ足を持つ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ぽつタイプライター お題:愛と憎しみの情事 制限時間:15分 読者:41 人 文字数:1049字
焼けるように背中が痛んだかと思うと、私の背中に突起が生えていました。何事かと思って数センチ引き抜くと、ようやくナイフだということが分かりました。ぽたぽたと血液 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
既読スキップ ※未完
作者:ぽつタイプライター お題:うへへ、表情 制限時間:15分 読者:41 人 文字数:620字
同じ話を二度と聞くことができない。 同じ内容の話を聞くと、早回しの動画みたいに、びゅんびゅんと耳元を過ぎ去ってゆくのだ。何を行ったのか理解はできるけれども、す 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ぽつタイプライター お題:絵描きの家 制限時間:15分 読者:34 人 文字数:524字
絵描きの家の窓は、絵の具でできていた。繊細な筆遣いがいもしない太陽を照らしている。絵描きはざらざらした布で表面の絵具をこそぎとり、ハイライトをくわえた。 絵描 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ぽつタイプライター お題:愛の秘部 制限時間:15分 読者:34 人 文字数:1049字
兄の遺言書にはセロテープで家の鍵が同封されていた。本文は特になかった。タイトルもなかった。それは本当にただの白い事務用の封筒だった。 たぶん、死ぬ気なんてなか 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ぽつタイプライター お題:楽しかった芸術 制限時間:15分 読者:33 人 文字数:847字
行き先の道には、白く点々と石が続いていた。道標はすでになく、森は黒々としていた。そういえば昔、おかげで家に帰れず、道に迷ったことがある。 お使いの途中で、まだ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ぽつタイプライター お題:いわゆる税理士 制限時間:15分 読者:49 人 文字数:1160字
「それではもらっていきますね……」 悪魔の声は、ぼそぼそとした声だった。顔をあげもしない。ひょいとなにかつまむようにひねると、体がすこし軽くなった。これぞ魂の重 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
※未完
作者:ぽつタイプライター お題:光の手 制限時間:15分 読者:43 人 文字数:391字
ぐい、と何かに引っ張られるような感触がして、私は後ろ向きにこけた。目の前をギロチンが横切っていった。運が良い、というには作為があった。誰かが自分をその場にとど 〈続きを読む〉