お題:部屋とYシャツと悪意 制限時間:15分 読者:54 人 文字数:802字

道理に合わない
 失踪した兄の部屋を片付けるのはかなり手間だった。
 恐ろしいくらいに物が多かったし、また、とっておけばいいのか、捨てていいかどうか微妙なラインのものがいくつもあった。
 冷蔵庫の足の速いものはいくつも勝手に処分したが、冷蔵庫で奇妙なものを見つけた。なぜか、それらは冷蔵庫にあった。
 ひとつには、何人もの筆跡を真似した紙。真似した、と分かったのは、机の上に置いてあった深い青色のインクがそれだったからだ。老いも若きも、男も女も、兄はくるくる筆跡を変えて試し書きをしていた。文面はさして面白いことはない、新聞の記事だった。
 奇妙な領収書。同じ時刻のものが3枚。駅前の喫茶店と、近所の本屋。遠くのスーパー。一見して何の問題もないが、日付と時刻を見ると、だいたい同じだった。これらの店に同時にゆくことはできない――。
 戸棚を漁ってみると、青色ばかり、無数に絵の具があった。
 ギターがあった。ただし、弦はなかった。小説の本の、下が3つ。兄はいったい、理屈に合わないこんなものばかり集めて何をしていたというのだろう?
 一つだけ、なんとか私の理屈で理解できるものはあった。
 対刃のワイシャツが目を引いた。兄は武闘派ではないし、間違っても他人とけんかするような性格ではない。ただ、過剰に人間不審なところが合って、このような小物は、不安を解消するのにかすかには役に立ったのかもしれない。これだけは、心の動きが理解できたので、なんとかほっとすることができた。おかしな話だが。

 死んだ、というのはないだろうな、と思っていた。失踪といっても、家族の前から姿を消したということに過ぎない。兄はとても頭が良いし、どこへいっても水準くらいにはうまくやるだろう。ただ、妙に理屈に合わないところがあって、薄着で雪国に行くだとか、そういった、テレビの刑事ドラマではなんのヒントにもならない、妙な妨害工作を施していっている。
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