お題:茶色い囚人 制限時間:15分 読者:205 人 文字数:695字

Die for Ben.
 夜が明けていく。東の空が白んでいく。どこからか聞こえるテレビの音、癇に障る笑い声。くだらない。クダラナイ。僕はそっと目を閉じる。
 僕たちは夜に生まれる。夜の帳の中で、冷たい水の中に産み落とされる。息ができず、もがくこともできず、仄暗い水に抱かれて僕たちは揺蕩う。この、創造者の箱庭に囚われて。
 けれど、同情は必要ない。誰しもがそういう世界に生きている。そこに違いはないのだから。狭い囲いの中を自らの世界と認識して、大して意味もない時間を過ごし、そして朽ちていく。それは平等なのだから。
 神は慈悲深い。哀しいほどに。どんな過程を歩もうと、結局は同じ結果にたどり着くよう世界を創られた。この世のどこに産まれ落ちようと、落ちていく先は同じ、真っ暗な穴の中だ。ある者は地獄と呼び、ある者は天国と呼ぶ、穴の底だ。であれば過程に意味なんてあるのだろうか。であればこそ、過程に意味があるのだろうか。わからない。ただ、行き先が決まっているというのは存外に心安いものではある。
 夜が明けた。光りが射し込んでくる。僕の世界に。創造者の箱庭に。黒かった世界が、光りに白く染められていく。清潔で、綺麗な世界がその姿を現して、僕は己の醜さにようやく気づく。そうして、産み落とされた意味に辿り着き、自らの運命を悟った。
 夜に産み落とされた僕たちは、朝が来れば死ぬしかないのだ。
 突如として、風鳴のような轟音が僕を取り囲み、身体が大きな流れに囚われていく。あれほど明るかった世界は、突如としてまた闇に閉ざされていく。僕は、地獄へ行くのだ。天国へ行くのだ。暗い暗い世界へ、流れに身を任せて。僕は流されていく。
作者にコメント

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