お題:どす黒いテロリスト 制限時間:15分 読者:184 人 文字数:791字

初夏の記憶 ※未完
 あの日のことで思い出すのは、いつも父さんの後ろ姿だ。
「待って! お父さん、待ってよ!」
 どんなに叫んだって父さんが待ってはくれないことを、僕は知っていた。それでも、叫ぶしかなかった。叫ぶことしかできなかった、幼くて弱かった僕。父さんの背中はみるみる遠ざかっていって、そして、二度と帰ってくることはなかった。
 あれから長い時間が経って、僕も大人になった。家庭を持ち、子どももできた。贅沢ができるわけではなかったけれど、それでも家族で慎ましく、誠実に生きてきたつもりだった。小さな僕たちの身体に見合う程度の幸せだけを享受してきたつもりだった。それでも、神様は僕たちを許してはくれないらしい。
 黄昏時の、アパートの一室だった。僕たちは物陰に息を殺して潜んでいた。子どもたちの泣き出しそうな視線を頬に感じながら、僕は部屋の様子を窺っていた。そこには仇が、凶器を持ってうろついている。
 仇。そう、父さんの仇。
 奇しくもあの日と同じ状況だった。違うのは、立場だけ。今は僕が父親で、後ろには守るべき家族がいた。今なら、あの日の父さんの気持ちが分かる気がした。
「お父さん……」
 長男が頼りない声を出す。僕はそっと振り向いて、笑ってみせた。
「大丈夫、心配するな」
「でも……」
「父さんに任せておけ。な?」
「あなた……」
 妻が何かを察して表情を歪ませる。それにも僕は頷いて、再び前を見た。仇は、ところ構わず凶器で攻撃し始めている。もう、時間がなかった。
「父さんが囮になる。お前たちは、その間に逃げろ!」
「え!」
 長男がそういう頃には、僕は駆け出していた。物陰から仇に向けて真っ直ぐに。
「待ってよ! お父さん!」
 そんな声をかき消すほどの怒号が鳴り響いた。
「ゴキブリ野郎おおおおおお!! そこにいたかあああああああああああ!!」
 仇が僕に向けてスプレーを噴射しおて
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