お題:いわゆる電車 制限時間:15分 読者:192 人 文字数:772字

人の形をした疲弊 ※未完
 人間、頑張りにも我慢にも限界がある。それが来てしまったら、もう何かにすがるしかなくなるものだ。
 キーホルダーにただ一つだけついた鍵を挿し、重い鉄製のドアを開いた。分厚いようで薄いその扉は、私を外界から隔てるバリアーだ。ガチャンというよりはドガンに違い大きな音を立ててドアが閉まると、そのまま玄関にへたり込みたくなる。帰ってきた。もう安全。もう大丈夫。そんな言葉たちが身体の重さを思い出させてくれるから。
 けれどそうしないのは、翌日のことを考える頭がまだあるからだ。寝るにしても、きちんとベッドで寝ないと。都会のワンルームマンション。その狭い廊下を進んで寝室兼居間の部屋に入ると、今度は「スーツはシワにならないようかけておかなきゃ」とか「寝る前にせめて化粧は落とさなきゃ」とか、煩わしい現実が思い起こされて、でも、そのおかげで私はまだちゃんとしている。
 だから、その思いつきは本当に偶然、たまたまの産物だった。風呂上がり、火照った身体を冷ましに近所のコンビニまで歩いて、缶ビールを一本買って、自動ドアをくぐったその瞬間の、思いつき。
 駅まで行ってみようか。そう思った。
 肌を撫でた夜風が気持ちよかったから? 寝て明日が来るのが怖かったから? わからない。けれどとにかく、コンビニを出た私はそう思って、缶ビールをちびちび舐めながら駅まで歩いた。ほぼほぼ家着の格好で、でも何故かポケットに定期は入っていて。ああ、もしかしたら最初からそのつもりだったのかもしれない。
 近くを通り過ぎていくスーツの人たちは、誰も私を見ていなかった。むしろ、格好として浮いているはずの私の方が、そんな人たちをジロジロと見ていた。皆一様に疲れた顔をしていると思った。ホームのベンチに座って、箱から吐き出されてくる重苦しさを見ていると、本当にそう感じた。何だか、
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