お題:ちっちゃな借金 制限時間:15分 読者:61 人 文字数:965字

声はいまでも聞こえてますか
「いいかい。よくお聞き。」

おもむろに、話し始めたおばあちゃんの声は、厳かで、でもゆっくりとした優しい声だった。

「かならず、まわりの声を大事にすること。かならず、自分の気持ちを大切にすること。かならず、感謝の気持ちを忘れないこと。」

この言葉がすんなりと私の体に入ってくるのは、やっぱり私がおばあちゃんのことが大好きだったからなのかもしれない。
物心つくかつかないくらいの頃から、おばあちゃんのいる田舎へちょくちょく遊びに行っていた。そして、都会へ帰るときは、いつもこの言葉がお守りとして、見送りの際に添えられた。
もちろん、小さいころの私には理解できなくて、私は半分おまじないの呪文のように楽しげに唱えていた。

まわりのこえをだいじにすることー。じぶんのきもちをたいせつにすることー。かんしゃのきもちをわすれないことー。

大人になって、社会人として世を渡っていく自分を振り返ると、ふと脳裏にこの言葉が浮かんでくる。
忘れていないかい?とおばあちゃんの優しい顔と一緒に。
その度に、大丈夫、忘れてないよ、と浮かんでくるおばあちゃんに私は微笑み返すことにしている。

大丈夫。私は忘れてはいない。大丈夫。
心の中で呪文を唱えながら、私の一日は今日もはじまるのだ。

しかし、今日は休日。仕事が珍しく忙しくなく、何かしないといけないようなこともない。
そういう日は大抵外にふらーっとでかけて、ショッピングしたり、本屋に寄ったりするのだが。

そういえば、と私は思う。最近行っていない公園がある。小さいころよく行っていたけれど、中学に上がると同時に行かなくなった公園。そして、一人暮らしの私の家からは、距離があるものの、電車で行けばすぐに着く。

久しぶりに遊びに行こうかしら。
思い立ったが吉日。さっそく玄関を飛び出す。おめかしは最低限で。子供のようにはしゃぐことを思い出しながら。

軽い気持ちで出かけた。


しかし、到着したときの私の感動は言葉にできなかった。
セミの声。公園で遊ぶ子供の声。ベンチの奏でる曲や、ブランコのいびき。
大好きな大きな木。古びた柵。

懐かしい声がたくさん溢れていた。ずっと忘れていたなつかしさがそこにはあった。

忘れてないかい?おばあちゃんが現れる。
うん。思い出したよ。私は答えた。
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